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第15話
「陛下。どうか私にも発言をお許しください」
「申してみよ」
「今回の件は誠に残念ではありましたが、清蓮もこのように反省しております。今日は祝いの日でもありますから、まずは事態の収束を最善に、この件については日を改めて審議してはいかがでございましょう?」
清蓮と国王を除くすべての者たちが頷いた。
その通りだ。
誰がこのめでたい日に、辛気臭い話などしたいと思うのか。
天楽 の言葉に多くの者たちが無言の支持を示した。
国王はそばにいる王妃にだけ聞こえるため息をつくと、国王とも父親ともいえぬ微妙な表情で清蓮を見た後、威厳のある声で言った。
「二人の言いたいことはよく分かった。天楽の言う通り、まずは事態の収束を最優先とする。後日、今回の件に関しての審議を行う。良いな? 」
「御意! 」
その場にいたすべて者が国王に一礼した。
国王は深々と一礼する清蓮 を一瞥すると、部屋を後にした。
王妃は心配と安堵の入り混じった視線を清蓮に向けると、その後に続いた。
清蓮は顔を上げると、立ち去ろうとする天楽を呼び止めた。
「叔父上、ご迷惑をおかけして申し訳ございません。まさか、私のせいでこんなことになるなんて……」
楽天的な清蓮も、ことの重大さを感じ、自分の浅慮を恥入った。
「気にすることはない。君が無事でなによりだ。何が起こるかなど、誰にも分かるはずもないのだ。とにかく、後のことはこれから考えよう、良いな? 」
「はい……」
そばにいた天楽の妻・栄林 も清蓮に声をかけた。
「清蓮、そんなに落ち込まないで。舞台でのあなたはとても素晴らしかったわ。それは誰も疑いようのないことなのよ」
栄林は優しい眼差しで清蓮を見つめた。
子供のいない弟夫婦にとって、清蓮や名凛 は自分の子供同然であった。
「そうよ、お兄様。みんな、お兄様の美しさで舞い上がっちゃったのよ。罪よね、美しいって! 」
名凛がおどけた調子で話に加わると、自然と笑いが起こった。
清蓮は三人に励まされ、少し元気を取り戻すと、改めて王弟夫妻に礼を述べた。
天楽は笑顔で清蓮の肩を軽く叩き、栄林は優しく微笑むと、二人は連れだって部屋を後にした。
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