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第24話

友泉(ゆうせん)は不意に自分の名を呼ばれたことに驚いた。 まさかここで名凛(めいりん)と離ればなれになるとは知らず、戸惑いを隠せなかった。 一方の名凛は、事前に国王から聞かされていたのか、いくらも驚く様子はない。 名凛はあらかじめ父である国王から、今回太刀渡家(たちわたりけ)が、治療にあたって幾つかの条件を提示してきたことを聞かされていたのである。 その条件とは、国王に対しては屋敷に留まるのは名凛と梅月(ばいげつ)の二人のみとすること。 治療に過度な期待・成果を求めないこと。 どのような結果となっても罰則を与えるようなことはしないこと。 治療に効果がないと判断した場合、速やかに屋敷を後にすることなどを求めた。 名凛に対しては、屋敷の規則に則って滞在すること。 治療に協力的であること。 屋敷で見聞きしたことは、決して口外しないことなどを求めていたのである。 友泉はそういった事情を知らなかったのだ。 納得できないといった表情で女当主を睨みつけた。 「何かあったらどう責任を取るんだ! ここに着くまでに何日かかると思ってるんだ! 五日だ! 丸五日もかかるんだぞ! 何かあってからじゃ間に合わない、分かって言ってるのか!」 「友泉殿。ここはどこよりも安全でございますよ。友泉殿もお気づきでしょう、ここの結界を。ご心配には及びませんわ。それに——」 倫寧(りんねい)は余裕の表情で言った。 「もし必要とあらば、名凛様を一日とかからず、いえ——即座に宮廷に送り届けて見せましょう」 「——! 」 「——! 」

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