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第25話
二人は倫寧 の発言に驚愕した。
「何をどうすると『即座に』という言葉が出てくるんだ。太刀渡家 に仙術の使い手でもいるというのか? 」
(仙術なんて、とうの昔に廃れて、そんなことできる奴なんて、そうはいない。そもそも仙術でそんなことできるなんて、聞いたこともない! )
友泉 は倫寧に食いさがるが、名凛 はこれ以上、ことを荒立てたくなかった。
「友泉――」
名凛は透き通った声で友泉の名を呼んだ。
友泉ははっとして、名凛を見た。
その声は一国の王女というよりは、女王のような、威厳と風格を秘めていた。
「名凛——」
名凛は柔らかい笑顔で友泉を見つめると、いつもの口調で言った。
「もうやめましょう。私のことは大丈夫だから。治療が終わったら、迎えに来て。私、待ってるから」
「あぁ、分かったよ」
どうやら熱くなりすぎたらしい。
不本意ではあったが、友泉は表情を改めると、姿勢を正した。
倫寧に非礼を詫び、名凛をくれぐれも頼むと頭を下げた。
倫寧は頷いて謝罪の言葉を受け入れた。
友泉は別れ際、名凛に言った。
「必ず、お前を迎えに行くから。あと、この間俺が言ったこと——忘れんなよ! 」
名凛は倫寧の案内で屋敷の客間に案内された。
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