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東の風はいずれ西の風となり 第37話 | 美玲の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
東の風はいずれ西の風となり
第37話
作者:
美玲
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第37話
温蘭
(
おんらん
)
への道中、
清蓮
(
せいれん
)
は絶えずこれからどうすべきか、身の振り方を考えていた。 だが納得する得られるわけでもなく、悶々としていた。 それもそのはず。 両親の暗殺、そして謀反人として逃亡するなど、清蓮にとっては青天の霹靂で、とうてい納得できるはずもなかったのだった。 鬱々とした気持ちで、町の中心部に向かって歩いて行った清蓮だったが、目抜通りにはいると、目の前に広がる光景に、いくらか心が浮き立つのを感じた。 温蘭の大通り沿いには所狭しと店が立ち並び、人々の威勢のいい掛け声が飛び交っている。 あまりの人の多さと賑わいに、清蓮は少し圧倒されたが、それ以上に清蓮の目には、市井の人々の暮らしは新鮮に映った。 「本に書いてあった通りだ。ほんとに温蘭の人たちは背が高いんだ!
女性
(
にょしょう
)
でも、私と大差ない」 温蘭族は、男女ともに背の高い民族として知られていた。 実際、清蓮とすれ違った女性たちは、清蓮と変わらないくらい背が高かった。 清蓮はもう一つ気づいたことがあった。 性差なく同じような服を着ているのだ。 着こなしも自由で、身につけている装飾品が違うだけであった。 「道理で、あの農家ですぐに新しい服が見つかったわけだ。男女の区別がなければ、あとは自分の体型に合うか合わないかだけだ」 清蓮は、相変わらず癖でぶつぶつ呟きながら、一人合点した。 清蓮は念の為、農家で拝借した笠を目深にかぶりながら町を興味深く観察した。 清蓮の視線の先に人だかりできているのが見えた。 清蓮は念の為、笠をさらに目深にかぶると、雑踏の中をかき分け近づいていく。 どうやら、男が大声で騒ぎ立てているようだ。 雑踏の輪の中心に、まるまると肥えた小柄な男が一人。 女の服の袖を強引に引っ張り、どこかに連れて行こうとしていた。 清蓮は目深に被った笠を少し上げ、それとなく女を見ると、「あっ! 」と小さな声をあげた。 清蓮はその女に見覚えがあったのだ。
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美玲
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