39 / 71

第39話

その瞬間、男の体がふわりと浮いて、地面に叩きつけられた。 「いってぇ! てめぇ、なにしやがるんだ! 」 叩きつけられた体を摩りながら、男が自分を投げ飛ばした相手を睨みつけた。 男が見上げた先には、清蓮(せいれん)が立っていた。 清蓮に投げ飛ばされた男は、やっとの思いで立ち上がると、清蓮に食ってかかる。 「おい、なにしゃがんだ! なんだよ、おまえ、しゃしゃり出てくんじゃねえよ! 」 清蓮は乱れた笠を整え、目深にかぶると、声色を変えて言った。 「乱暴は良くない……わ」 「ああ? この女はな、大事な借金のかたなんだよ。もう話はもうついてんだ、あんたの出る幕じゃねぇんだよ! ったく、俺を投げ飛ばすなんざ、なんて女だ。これ以上ごちゃごちゃ言うなら、女でも容赦しねぇからな! 」 男は、女を引っ張って行こうとした。 「君、あっ、いえ、あ、あなた……。その女性を離してあげなさい」 清蓮は再び男を制止しようと胸ぐらを掴んだ。 清蓮にとっては男の一人や二人どうということはない。 力技は得意ではないが、致し方ない。 清蓮はそう思ったが、なぜか男は抵抗せず、清蓮を舐め回すように見た。 「うん、うん」と言うと、思いもよらない言葉を清蓮に投げかけた。 「そうかい、それほどまでに言うならさ、あんたが来なよ。あんたが代わりに来るって言うなら、この女のことはなかったことにしてやるよ」 「——! 」 「へへっ、あんた、いい女だしな! 」 「えっ? えぇっ——! 」

ともだちにシェアしよう!