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第39話
その瞬間、男の体がふわりと浮いて、地面に叩きつけられた。
「いってぇ! てめぇ、なにしやがるんだ! 」
叩きつけられた体を摩りながら、男が自分を投げ飛ばした相手を睨みつけた。
男が見上げた先には、清蓮 が立っていた。
清蓮に投げ飛ばされた男は、やっとの思いで立ち上がると、清蓮に食ってかかる。
「おい、なにしゃがんだ! なんだよ、おまえ、しゃしゃり出てくんじゃねえよ! 」
清蓮は乱れた笠を整え、目深にかぶると、声色を変えて言った。
「乱暴は良くない……わ」
「ああ? この女はな、大事な借金のかたなんだよ。もう話はもうついてんだ、あんたの出る幕じゃねぇんだよ! ったく、俺を投げ飛ばすなんざ、なんて女だ。これ以上ごちゃごちゃ言うなら、女でも容赦しねぇからな! 」
男は、女を引っ張って行こうとした。
「君、あっ、いえ、あ、あなた……。その女性を離してあげなさい」
清蓮は再び男を制止しようと胸ぐらを掴んだ。
清蓮にとっては男の一人や二人どうということはない。
力技は得意ではないが、致し方ない。
清蓮はそう思ったが、なぜか男は抵抗せず、清蓮を舐め回すように見た。
「うん、うん」と言うと、思いもよらない言葉を清蓮に投げかけた。
「そうかい、それほどまでに言うならさ、あんたが来なよ。あんたが代わりに来るって言うなら、この女のことはなかったことにしてやるよ」
「——! 」
「へへっ、あんた、いい女だしな! 」
「えっ? えぇっ——! 」
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