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第40話

男は女の代わりに清蓮(せいれん)を連れていくと言い出した。 清蓮は笠で顔を隠していたが、男は投げ飛ばされる瞬間、笠の隙間から見える清蓮の美しさを見逃さなかったのだ。 男の目には清蓮は、男並の腕力を持つ、温蘭族の美しい「女」に見えたのだ。 性別分け隔てのない服も、男女ともに背の高い人々が多いことも清蓮の不利に働いた。 清蓮は、もう笑うしかない。 その時だ。 ふと女と目が合った。 清蓮を見た女は、「あっ! 」と小さな悲鳴をあげると、後退りした。 幸い、ごった返す雑踏の中、女の声を聞いた者はいない。 清蓮は女の視線に気づいていたが、男の注意を逸らそうと、半ば開き直って、男に言った。 「分かった……、分かったわ。私が、行けば借金は帳消しにしてくれるのよね?」 「あぁ、いいよ。あんたが来るなら、その女のこと、なかったことにしてやるよ」 清蓮は、静かに頷くと、男の後について行った。 清蓮は女の横を通り過ぎる時、咄嗟に女の袖口に何かを入れた。 「? 」 女は、清蓮たちが立ち去るのを最後まで見ていたが、清蓮たちの姿が見えなくなると、女は袖口の中を確認した。 「これは……」 それは、見事な翡翠の玉で、清蓮の短剣に埋め込まれていたものだった。

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