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第41話

男は、清蓮(せいれん)を人気のない裏通りに連れて行った。 清蓮は辺りを見回し、ここなら、ひと暴れしても上手く逃げられるだろうと考えた。 清蓮はその時を待っていると、荷馬車が男の前で止まった。 荷馬車の中には売り飛ばされた女たちが、ところ狭しと身を寄せ、その周りには数人の男たちが用心棒として女たちを見張っていた。 清蓮はここで事を荒立てることをやめ、無言で荷馬車に乗った。 まもなくすると、荷馬車は動き出した。 清蓮はあらためて女たちを見た。 みな血の気が失せ、その眼差しは虚ろであった。 清蓮は自分も同じ顔してるのかなと、重いため息をつくと目を閉じた。 清蓮を乗せた荷馬車は、あっという間に花街のとある楼に到着した。 それもそのはず、清蓮がたどり着いたのは温蘭(おんらん)の一画にあったからである。 かつて友安国友安国(ゆうあんこく)には幾つかの花街があり、艶めく賑わいは、春を求める人々の飽くなき欲望をかき立て、盛りの限りを尽くしていた。 しかしその規模があまりに大きく、かつ複雑となると、維持する方も払う方も金がかかると、次第に廃れてしまった。 ただ人の色欲に終わりはない。 新たにできたのが、清蓮が連れて行かれた花街だったのである。 実のところ、人々が温蘭と聞いて真っ先に思い出すのは、背の高い温蘭人が住む町ではなく、この花街・温蘭なのである。

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