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第51話

「それでだな、おまえさんは、ここで客を気に入ってもらえるよう努力しなきゃならない。わかるか? 」 「努力……? 」 清蓮(せいれん)には、言わんとするところがよく分からなかった。 清蓮は何をするでもなく、長椅子に座っていればいいのだと思っていた。 客は小窓から女の品定めをするだけだと考えていたのだ。 清蓮がらそう思うのも無理からぬことだ。 皇太子がいちいち花街の仕組みなど知るはずもない。 客を惹きつけるために努力する必要もない。 まして、清蓮は友安国の皇太子だ。 大臣や高官たちの娘たちが偶然をよそおって、清蓮に気に入られようとひっきりなしにやって来るのだ。 清蓮は誠意をもって娘たちを送り返すのだが、今度は自分が客の男たちを惹きつけるために、部屋の中から男を誘惑しなくてはならないのだ。 「そんなこと……、私には無理です! 女性、いえ、殿方を惹きつけるだなんて、そんな、そんな、はしたないことしたことありません! 」 清蓮は顔を真っ赤にしながら、男に訴えた。 「はぁ? 男を誘惑したことないだってぇ? 何もったいぶってるんだよ、ったく! 」 男は呆れた様子で首を左右に振ると、自らの体を使って清蓮に指南し始めた。 「いいか、例えばだな、穴に向かって、こう横になるんだ。両足を軽く曲げて、くの字にして、少し前に出す。これで腰のくびれを強調するんだ。頭は肘を曲げた右腕にのせて、左手は腰回りに軽く添える」 男は長椅子に寝そべりながら、熱心に客がそそられる姿とやらを清蓮に教えた。 「いいか、一番大事なのは、目と口だ! 潤んだ目、半開きの唇……。艶っぽく……、物欲しそうに男を見つめるんだ。目と目があったら、捕えて、『あなたを離さない! 』って、好きな男に見せるようにやるんだ。 わかるか? そんでもって最後は身悶えしながら、『あぁ、あなたが欲しい……』って感じで男を見るんだ︎! わかったか?」 自らの体をくねくねさせながら熱弁する男は、あまりにも滑稽で、清蓮は顔をぽりぽりと掻いて苦笑した。 (そんなことできるわけないだろう……。大体、誰が私を買うというんだ? そんな人いるわけないだろうに…… ) 「とにかく、いいか? 俺が言ったようにやるんだぞ! 」 男は言いたいだけ言って満足したのか、清蓮を小部屋に残し出て行った。

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