fujossyは18歳以上の方を対象とした、無料のBL作品投稿サイトです。
私は18歳以上です
東の風はいずれ西の風となり 第64話 | 美玲の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
東の風はいずれ西の風となり
第64話
作者:
美玲
ビューワー設定
64 / 71
第64話
清蓮
(
せいれん
)
は素直に振り返り、
光聖
(
こうせい
)
と向き合った。清蓮の首には水晶の首飾りが、蝋燭の灯りで柔らかく煌めいていた。 清蓮は、水晶を見る光聖の視線に気づき、「これは君がくれたものかな? 」と、あらためて尋ねる。 「うん」 素っ気なく答えるが、男の表情は柔らかい。 「一目見て気に入ったんだ。光にかざすと、とても綺麗なんだ」 清蓮は水晶を目の前に掲げると、二人はその水晶を静かに見つめ、そのかざした水晶を通して、二人の視線は絡み合う。 「ありがとう」 「君が気に入ったのなら、それでいい」 男は心からの言葉を静かに受け止めた。 「手当を続けよう」 清蓮の左胸には大きな傷があった。 垂直に切れた傷は膿が溜まっており、かすかに悪臭も漂っていた。 光聖は眉間に皺を寄せ、表情を曇らせた。 清蓮もこの胸の傷が気になっていて、盗みに入った家で薬を探しては、塗ったりしていたのだ。 ただ逃亡の身とあっては、できることにも限界があった。 「時間がなくて、ちゃんと手当できなかったんだ」 「君のせいじゃない」 光聖の表情は堅かったが、「心配しなくていい、すぐに治る」と落ち着いた声で清蓮に言った。 光聖は傷周辺の皮膚をつまむと、ぐいっと力を込めた。 「いっ! 」 傷口から薄緑色の膿がぬるりと滲み出てくる。 清蓮の体を激痛が走る。 思わず光聖の肩を力いっぱい掴んだ。 「あっ、き、君っ! な、何をして……! 」
前へ
64 / 71
次へ
ともだちにシェアしよう!
ツイート
美玲
ログイン
しおり一覧