清蓮(せいれん)は目を見開いた。 光聖(こうせい)は清蓮の胸に吸いついているのだ。 その傷は清蓮の胸の蕾のすぐそばにあったため、側から見れば、光聖が清蓮の胸の蕾に吸いつき、口に含んで愛撫しているようにも見えた。 光聖は清蓮の戸惑いをよそに、傷口から膿を吸い出そうと、膿を吸い取っては、唾壺に吐き出すのを繰り返していた。　 清蓮の薄紅色の胸の蕾は、当人の意に反して、ツンと澄ましたように立ち上がり、美しく艶めいている。 清蓮は、痛みと恥ずかしさで光聖を押しのけようとした。 清蓮は眼を潤ませ、懇願とも哀願とも言えぬ視線を光聖に向ける。 「光聖、やめてっ、やめてくれ……！」 光聖は清蓮の手を握ると、「痛いのは、最初だけだ」と言った。 光聖の言葉を信じてはみたものの、膿を吸い出すたびに、ひりひりとした痛みが清蓮を襲う。 「ンッ、いたっ……！」 痛むたびに清蓮は身を捩り、光聖に握られた手を強く握り返した。 清蓮は顔を背けた。 これ以上、膿を吸い出す光聖を見ていられなかった。 痛みで心臓の鼓動は速くなり、呼吸もその度苦しくなってきて、もはや自分ではどうにもならない。 清蓮の顔は痛みと恥ずかしさも相まって真っ赤に染まり、赤い牡丹のように優美ですらあった。 光聖は美しい花を愛でるかのように清蓮を見つめると、「もう痛くないから」と慰めるように言った。 その言葉に嘘はなかった。 痛みが極限に達すると、潮が引くように痛みも遠のいく。 代わりに清蓮の全身を駆け巡ったのは、身悶えするほどの恍惚だ。 「あぁ……」 光聖は握っていた清蓮の手を解放すると、清蓮の背中と腰に手を回し、清蓮の胸に顔を埋めるように膿を吸った。 「あっ！ あっ——！ 」 清蓮は身を反らせると、びくん、びくんと二度痙攣し、脱力した。 光聖は、全身の力が抜けて後方に倒れそうになる清蓮を優しく引き寄せた。 清蓮を支えたまま、最後にもう一度、皮膚を摘むと、鮮血が滲み出る。 ぽたぽたと流れ落ちる血は、清蓮の肌衣を赤く染めた。 清蓮は再び意識を失った。 光聖はぐったりとした清蓮をそっと抱き寄せた。 「清蓮、早く、私を思い出して……」