fujossyは18歳以上の方を対象とした、無料のBL作品投稿サイトです。
私は18歳以上です
東の風はいずれ西の風となり 第66話 | 美玲の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
東の風はいずれ西の風となり
第66話
作者:
美玲
ビューワー設定
66 / 71
第66話
清蓮
(
せいれん
)
は夢の中にいた。 ある質素な一室。 一組の男女と幼い子供が一人、長椅子に座っている。 清蓮の両親である国王夫妻と幼い清蓮だ。 清蓮は国王夫妻の間に座り、まだあどけなさの残る顔で、二人の様子を窺っている。 どうやら三人は誰かを待っているようだ。 国王も王妃も清蓮の手を握りしめ、その時を待っている。 どちらも無言だが、顔は強張り、ただならぬ緊張感が漂っている。 常に国王は威厳と自信にあふれ、王妃は穏やかで慈愛に満ちていた。 二人のそんな姿を初めて目にした清蓮は、尋ねずにはいられない。 「父上、母上、ここはどこなんですか? 私たちは誰を待っているのですか? これから何が起こるのですか? 」 清蓮は気になったことがあると、ところ構わず尋ねるのは幼い頃からの癖だ。 「私たちは、これから特別な方、滅多に会うことなどできない、そんなお方にお会いするのだ。行儀よく、ご挨拶するのだよ」 国王はそう言うと、清蓮が答える間もなく、王妃が割って入る。 「あら、大丈夫ですよ、貴方。清蓮はいつもお行儀がよろしいのよ。幼くても立派な皇太子、私たちの可愛い息子よ」 「確かに、我が子は聡明で、自慢の皇太子だ」 二人は話をしているうちに、緊張がほぐれたのか、顔を見合わせ、微笑んだ。 「清蓮。もしかしたら、そのお方が貴方を気に入ってくだされば、貴方の将来は素晴らしいものになるわ」 王妃は優しい眼差しを清蓮に向けた。 「特別ってどういうこと? 私たちよりも特別な人なんているの? その人は父上よりも偉いってこと? それに、友達なら
友泉
(
ゆうせん
)
がいるよ。 他にもお友達はいるし。その人が私のことを気に入らなかったら、どうなるの? 」 国王夫妻は清蓮のごもっともな疑問にどう答えるべきか迷った。 「そうね。貴方の頭の中には、たくさんの「なぜ」がいっぱいあって、どうしたらいいのか分からないわよね」 王妃は清蓮を安心させようとそっと抱きしめた。 「心配しなくても、お会いすれば分かるわ。貴方がその方に相応しいかどうか……」 (自分たちより偉い人って、そんな人、この国にいるの? 誰? 神様? ) 清蓮は頭の中がたくさんの疑問符でいっぱいだ。 子供ながらに答えを導き出そうとするが、到底分かるはずもなく、両親の言う『特別な方』とやらを待つことにした。
前へ
66 / 71
次へ
ともだちにシェアしよう!
ツイート
美玲
ログイン
しおり一覧