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第68話
清蓮は静かに目を開けた。
真っ暗な寝所の天井をぼんやり見つめ、無意識に水晶を握りしめたり、指で転がしたりしながら、昨日の夢のことを思い出していた。
「そういえば、幼い頃、どこかの屋敷に行って、あんなことがあった……。でも、どこだったかな? 思い出せないな。夢に出てきたあの赤子は誰なんだろう? 」
夢とは不思議なもので、目覚める直前まで、鮮明に映し出されていたものが、起きた途端、先ほどまで確かに夢を見ていたという、その感覚しか残らない時がある。
清蓮もそうで、曖昧な記憶し残っていなかった。
「でも、どうして今頃になって、あんな夢を見たんだろう? 」
清蓮はどうにか思い出そうとしたが、一向に思い出せない。
仕方なく諦めると、大きく背伸びした。
「うーん、それにしても、よく眠れた 」
追われる身となり、常に張り詰めた緊張感の中で過ごしてきた清蓮は、逃亡して以来、初めて心から安心して眠ることができた。
清蓮はさらに体に意識を向けた。
充実した英気が体の中を巡っている。
「そうだ……、赤子を抱いた時もこんな感じだった。やっぱり……」
昨日見た夢は、実際にあったことに違いない。清蓮は無意識に触れていた水晶をそっと離すと、体中を駆け巡る波動は少しずつ小さくなった。
「それにしても、この水晶に触れると、どうも不思議な感じになる。懐かしいような……」
水晶に触れると、じんわりと心が温かい気持ちになる。
清蓮は水晶に自らの唇を押し当てると、そっと懐にしまった。
清蓮は身を起こして辺りを見回した。
起きてから光聖の気配がないことは気づいていた。(隣の部屋にいるのか? )
「光聖? 」
返事はない。
すると寝室の隣、扉の閉まった部屋からかすかな気配を感じ、清蓮は部屋の扉の前に来て、扉を隙間一寸開ける。
そこには数え切れないほどの衣装が並べられており、部屋の中央には光聖が背を向けて立っていた。
光聖は清蓮に気づいていないのか、上衣を脱いで上半身裸になった。
「えっ⁉︎ 」
清蓮は目を見開いて驚いた。
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