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第74話
清蓮はふぅと大きく息を吐くと、光聖が戻ってくる前に赤く腫れた瞼はなんとかしたいと、夜風にあたることにした。
居間の小窓を開けると、心地よい風が清蓮の頬をくすぐった。
「気持ちいい……」
清蓮は目を閉じ、風に吹かれるまま佇む。
しばらく風にあたっていると、心地良さよりも肌寒さを感じてきた。
さすがにもういいだろうと、小窓を閉めようとした時、軒下から男たちの声が聞こえてきた。
清蓮のいる部屋は表通りの喧騒からは無縁の静寂さに包まれていたため、「早く乗れ」だの「ぐずぐずするな」など、荒々しい声が漏れなく聞こえてきた。
清蓮が気づかれないように眼下に目をやると、ちょうど店の女たちが荷馬車に乗せられているところだった。
いずれも死人のように青ざめた顔をしており、その女たちの中には清蓮を世話してくれた女も含まれていた。
「こんな夜半に……。そうか、女たちを剣山に連れていくつもりなんだ! 」
女が話していた、使い物にならなくなった女たちは、剣山に捨てられるというあの話。
清蓮はここに来た目的を忘れてはいなかった。
哀れな女たちを一人でも救ってやりたい——!
今まさにその時だ——!
清蓮は荷馬車が出発するのを見届けると短剣を手に、小窓から飛び降りた。
ふわりと地面に降り立つと、清蓮は自分の体が動きが実に軽やかで、これなら男たち数人くらい、あっという間に制圧できると確信した。
荷馬車はというと、一本道をいく。
清蓮は人目を確認しながらも急いで荷馬車が停めてあった厩舎に行き、馬を一頭拝借した。
清蓮はその馬に跨ると、一定の距離を保ちながら荷馬車を追っていった。
四半刻馬を走らせると、前を走る荷馬車はとある山の麓で止まった。
ほどなく店の男たちは女を一人ずつ荷馬車から降ろし始める。
清蓮は男たちから離れたところで馬から降ると、男たちが掲げる松明を頼りに近づいていく。
鬱蒼とした木々の隙間から清蓮は様子を窺った。
泣きじゃくる女。
威勢よく罵声を浴びせる女。
虚な表情ですでに心は死に絶えている女。
その中にただ一人、泰然とした様子で佇む女がいた——。
それは清蓮の世話をした女だった。
彼女はまるで他人事のように受け止めているようだ。
男たちを睨むでもなく、凍てついた眼差しで向けている。
その表情からは女の心の奥底を窺うことはできない。
男たちが女たちに悪態つきながら一列に並ばせると、誰から剣山に捨てようかと話し始めた。
「あの女からにしましょうよ、さっきから泣き叫んでうるさいったらありゃしない」
「あぁ……、お願い……、助けてください……」
うるさいと言われた女は両手を合わせて懇願する。
「助けるねぇ……。なら、おれとここで一発やったら、考えてやってもいいぜ。まだ使いもんになるってわかったら、おれから旦那様に口添えしてやってもいいしな」
「いいね、お前、頭いいな! おれ、それのった! 俺最近やってないからさぁ、抜きたいんだよ。ぼろ雑巾みたいな女でもいいから、ケツの穴にぶち込んで、こうやって突きまくってさ! 」
そう言うと、男は命乞いする女をはがいじめにして、腰を振って男たちの笑いを誘う。
「おいおい、やめとけよ、はしたねぇぞ! 」
男の一人が嗜めるが、目は怪しく光り、淫靡な笑みを浮かべている。
揶揄した男は「ヒヒっ! 」と卑猥な笑い声を上げると、勢いよく女を押し倒した。
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