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第76話
「うわっ!なんだ? 女?なんで女がいるんだよ! どっから出てきたんだよ! 」
仲間の男が持っている提灯の明かりを女に向けた。
明かりに照らされた清蓮の顔が静かに浮かび上がった。
「お、おまえ、なんでここにいるんだよ⁉︎ 」
そう叫んだ男は、清蓮を小さな覗き部屋に案内した男だ。
目の前の「女」が清蓮であることに気づいた。
「なんでおまえがいるんだ? ずっとあの部屋で男と入り浸ってたんじゃないのか? 綺麗な兄ちゃんと一緒によぉ」
男の口ぶりは、清蓮を本物の「女」だと思っているようだが、清蓮はそんなことを気にする素振りもない。
なにより、女たちを助けることが最優先だ。
「女たちを逃してやりなさい。そうすれば、私は君たちには何もしないと約束しよう」
「はぁ? 突然現れてなにを言うのかと思ったら、そんなことかよ。それは無理な話というものさ。そんなことしてばれたら、俺たちが剣山に捨てられちまうじゃないか。
悪いこと言わねぇよ、帰えんな。大人しく帰れば、今夜のことは黙っといてやるよ。楼主もあんたのこと気に入ってるし、綺麗な兄ちゃんからたんまり金もらってるし。
俺もあんたみたいな綺麗な姉ちゃんは大好物だしよ」
男がにべもなく拒絶すると、他の男たちの口からどっと笑い声が起こった。
女たちを逃すなどありえないのだ。
女に馬乗りになっている男は、なぶるようなよ視線を清蓮に送った。
松明の明かりに男の醜悪な笑みが垣間見える。
「兄貴ぃ。俺、この女とやりたいよぉ。さっさと片付けてさぁ、この女の穴に俺の一物ぶち込んでみてぇよ。綺麗な兄ちゃんが独り占めするなんてずるいじゃねぇか。
俺たちもお裾分けさせてもらおうぜ。こんないい女、そうはいないって。突いて突いて突きまくってさぁ、ひぃひぃ言わせてやりてぇよ。きっとたまんねぇよぉ。
あぁ、やべぇ、やべぇよぉ、考えただけで、でかくなってきた、なぁ、いいだろう、兄貴ぃ! 」
男は隣にいた店の男に話しかけるが返事はない。
「兄貴? 」
返事がないのを不思議に思った男は、周囲を見渡した。
「えっ⁉︎ 」
男以外、みな地面に突っ伏すようにして倒れていた。
「えっ、えっ⁉︎ みんなどうしちまったんだよ、おい、しっかりしろよ! 一体どうなってんだよ! 皆みんな死んじまったのか⁉︎ 」
男は気を失って倒れている男たちに駆け寄って、呼びかけ、体をゆすったりするが、誰もびくともしない。
「嘘だろ、おい、嘘だろう……」
男はたちまち震え出した。
「死んではいない。ただ、気を失っているだけだ」
清蓮の声は、剣の如く鋭い。
「ひぃっ! 」
不意に男の首筋に氷のような冷たさが伝わる。
清蓮が短剣を押し当てているのだ。
男が無駄口たたいている間、電光石火、他の男たちを倒したのである。
男は先ほどの威勢はどこへやら、頭から大量の汗が吹き出し、ガタガタと震える男の足元には水たまりができている。
「あ……、た、たすっ……! 」
ばたり——
清蓮は手刀で男を気絶させた。
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