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センセー、生きてていいですか?

「⋯⋯信じ、る」 そう言うと、翔太は直の唇に自分からキスをした。 直は驚き、目を見開いたが、すぐに愛おしそうに目を細め、そのキスに応えるように、翔太の唇を深く吸い上げた。 「んっ♡⋯」 直の舌が、翔太の唇をなぞるように優しく触れる。翔太は戸惑いながらも、その舌を拒むことはできず、無意識に口を開いた。直はそれを待っていたかのように、自分の舌を絡ませ、さらに深くキスをした。 「んっ⋯♡あっ⋯♡ん⋯♡」   「んん⋯⋯はぁ⋯⋯」 二人の舌が絡み合い、互いの唾液と熱が混じり合う。 翔太は戸惑いを見せるが、初めて感じる愛おしさに喜びを感じていた。 「んっ♡⋯⋯ねぇ♡⋯えっと♡」 こてんと首をあざとく傾け、直を見つめる。 「な、なに?」 そのあざとさに、直はどうにかなりそうになるがすんでのところで、耐えようとする。 「あ、あのさ⋯♡う、動いて⋯?」 ブチッと何かが切れた音がした。 「⋯⋯いいよ」 直は満面の笑みを浮かべたまま、翔太の腰を掴み、ゆっくりと身体を反転させた。 「えっ⋯な、なに?」 翔太は戸惑いながらも、直の手に促されるままに背中を向ける形になる。 「膝、立てて」 「う、うん⋯」 直の少し命令的な口調に、翔太は反射的に膝を立てた。 背後から感じる直の熱に、ぶるりと翔太は興奮で震える。 そのまま、直は翔太の腰に腕を回すと自分の身体を押付けた。 「あっ⋯♡ん⋯後ろからするの♡」 「うん⋯こうしたい気持ちなんだ」 直はそう言うと、翔太の腰を掴んでいた手に力を込めた。翔太は直の真剣な欲望に心臓がどきりと高鳴る。 (ぞ、ゾクゾクする⋯♡お、俺ってMだったのかな⋯) 「翔太、行くね 」 宣言通り、直は深く、そして力強く突き上げた。 パチュ♡パァン♡パチュ♡パンッ♡ 「あっ⋯♡んんっ⋯♡あぁん⋯♡」 「はぁー⋯可愛い」 さらに腰の動きを速める。 「あっ⋯♡あんっ♡⋯はぁ♡♡んんん♡♡♡」 「ははっ、可愛いって言われて照れてるの?締まったよ。可愛いね」 直はそう言うと、翔太の頭を優しく撫でる。 「やっ♡⋯はぁ♡⋯あっ♡あっ♡⋯んぅ♡あぁ♡♡♡」 翔太は快感に溺れ、直の言葉に反論する気力すら残っていない。頭の中が真っ白で、この快楽に委ねるという選択肢しか彼にはなかった。 ぬぽっ♡じゅぽっ♡ぬちっ♡じゅぽっ♡ 「はっ♡あっ♡♡んんっ♡あ、あん♡ね、ねぇ⋯な、なお♡♡も、もう⋯あっ♡イ、イキ⋯そう♡」 「んっ⋯イクの?⋯いいよ、俺もイキそう⋯一緒にイこ」 翔太の素直な言葉に、直は喜びの笑みを浮かべ、腰の動きを激しくする。 「あっ♡お、前も?う、嬉しい♡⋯⋯っ♡えっ、そ、そんな♡は、はげ、しい♡だ、だめぇ⋯♡♡♡んぉっ♡♡おッ♡♡やっ♡♡イ、イクぅ⋯♡♡イ、イキましゅ⋯♡♡イク♡イク♡あ、あぁぁぁぁぁぁん♡♡♡♡♡♡」 びゅー♡♡♡びゅるるっ♡♡どびゅぅー♡♡♡ 「っ⋯⋯イ、ク⋯出すよ⋯」 どくっ♡どぷっ♡♡びゅる♡♡びゅるるー♡♡♡ 「んやぁー⋯♡あ、あつい⋯よぉ♡♡♡」 激しい興奮が去り、二人の身体は汗でぐっしょりと濡れていたが、不思議と不快感は感じなかった。 直は翔太の身体を抱きしめたまま、ベッドにゆっくりと横になる。 「あっ⋯♡はぁ⋯♡んっ⋯⋯♡」 翔太は直の腕の中で、安堵と快楽の余韻に浸っていた。 直の熱い体温と、鼓動の音が心地良くて微睡む。 「な、なぁ⋯⋯抱きしめてよ、強く、ぎゅっと⋯」 直を見つめ、懇願する。 (そうすれば、自分は生きている、ここにいていいんだと実感できる⋯) それは、孤独で寂しい少年の心からの叫びだった。 「⋯⋯うん、いいよ」 直には、まだ彼のことがわからない。それでも今、自分を求めていることがわかった。 直は、翔太をぎゅーっと抱きしめる。 「⋯⋯ははっ、あったかい⋯俺、生きてるんだ⋯」 気づけば、ポロッと瞳から涙が零れていた。 「なぁ⋯俺に生きてる価値ってあるのかな?こんな、夢も希望もないやつが、息を吸ってていいのかな?」 「⋯⋯バカだなぁ。さっきまで君を抱いていた人間にそれを聞く?」 「えっ⋯?」 「好きだ⋯愛しているんだよ、君を。死んだら俺が悲しむよ」 そう言うと、直はさらに強く抱きしめ、翔太の唇に触れるだけのキスをする。 「⋯⋯そうなんだ。死んだら、泣く?」 「うん⋯泣く」 翔太はふっと憑き物が落ちたように安堵の表情を浮かべ、直の胸に顔を埋めた。 「そっか⋯俺、生きてていいんだ⋯」 直に応えるようにぎゅうっと抱きしめ返す。 「好き⋯好き⋯愛してる⋯あははっ⋯♡」 胸に顔を埋めているため、表情が見えないが声から嬉しさが滲み出ている。そして、顔を上げる。 「なぁ⋯好きなら、もう一回⋯しよ?」 翔太の予想外の言葉に、直は一瞬驚くが、すぐに愛おしそうに微笑む。 「うん、いいよ」 直は翔太の顎に手を添え、頬を撫でる。 涙で濡れた頬、潤んだ瞳――その全てが直には愛おしくて堪らなかった。 「あのさ、今度は痛くして⋯」 「⋯⋯どうして?」 「俺ってクズだから⋯価値ないし⋯でも、痛くしたら、もっと⋯生きてるって感じられて⋯宙ぶらりんだった俺の人生も⋯許されるような気がするんだ。」 「っ⋯⋯」 ――嗚呼、これは⋯一種の自傷行為だ 直は、直感的にそう思った。 (許されるような気がするからって⋯そんなの、ダメだろ。自分のことをこんなに卑下して⋯この子は、一体どんな人生を送ってきたんだ⋯きっと俺には、一生かけても分からないかもしれない⋯でも――) ――叶えてあげたい 目の前のか弱い少年が、生きる理由を渇望している。 それが好きな人なら尚更叶えてあげたい。 けど―― (全てを叶えることは、きっとできない⋯) 少し考えて、直は決めた。 「⋯うん、いいよ」 優しく微笑み、応える。   「⋯⋯ホント?痛くしてくれる?」 「うん、全部はさすがに無理だけど、ね⋯」 そう言い、直は翔太の腰に回していた腕に力を込め、ゆっくりと自分の上に乗せるように体制を変える。 翔太は戸惑いながらも、直の動きに合わせて素直に身体を預けた。 「んっ⋯♡」 互いの熱い肌が密着し、翔太の太ももが直の腰を挟む形になる。直は、翔太の首筋に顔を埋めると、深く息を吸い込んだ。 「やっ⋯♡汗かいてて、汚い⋯♡」 「すぅ、はぁー⋯⋯いい匂い」 「うぅ⋯⋯♡」 直の熱い吐息が首筋にかかり、翔太の身体がゾクゾクと震える。 「翔太⋯⋯」 囁くように、何かをねだるかのように名前を呼ぶ。 そして、翔太の首筋にそっと唇を押し当て、ゆっくりと歯を立てる。 「はぁ⋯⋯♡もっと⋯♡」 直は、翔太の囁きに応えるように、噛む力を徐々に強めていく。 「っ⋯⋯♡んっ⋯♡あっ⋯♡」 翔太の喉から、痛みに耐えながらも快感に溺れていくような声が漏れる。痛みと快感が同時に全身を駆け巡り、脳が痺れていく。 「あぁっ⋯♡♡んんっ⋯♡好き⋯これぇ⋯♡」 「⋯⋯ねぇ、翔太」 恍惚の笑みを浮かべ、うっとりとする翔太に直は問いかける。 「俺のことも噛んでよ」 「⋯⋯えっ?」 突然の提案で、翔太は戸惑う。 「なんで⋯そんなこと言うんだよ」 「だって、翔太だけずるいじゃないか⋯僕にもちょうだい、痕を」 直の言葉に、翔太は目を丸くして固まる。 「⋯⋯意味、わかんねー」 翔太の正直な言葉に、直はふっと笑った。 そして、翔太の頬を優しく撫でると真剣な眼差しで 彼を見つめる。 「噛むことで⋯痛みで君が生きていると感じているのなら、俺もそれを感じたい。痕をつけて?俺にも」    直の真剣な言葉に、翔太は言葉を失った。 自分のことを、目の前の彼は考えてくれてる。本気で向き合ってくれている―― (俺を、肯定してくれてる⋯?) 嬉しくて、胸が奥が熱くなる。 そして、恐る恐る直の首筋に唇を押し当て、震える唇で歯を立てる。 「んっ⋯⋯」 翔太の噛みつきに、直の喉から甘い声が漏れる。 その声を聞いた瞬間、翔太の心が一瞬で満たされた。 (嗚呼⋯これだ。これが欲しかったんだ⋯)   自分のこの行為で、喜んでくれてる。感じてくれてる⋯ それだけで、大嫌いな自分がここにいてもいいんだと実感する。 視界がにじみ、こらえきれなかった涙が、ポロポロと出てくる。 長年抱え込んできた不安や孤独、自己嫌悪の日々が少しずつ直の手によって溶けていくようだった。 「⋯⋯翔太?」 直は翔太の涙に気づき、頬を伝う涙を手で拭う。 「大丈夫⋯俺はここにいる⋯どこにも行かないよ」 翔太は、直の言葉にさらに涙を流した。そして、顔を上げたかと思うと、バッと力強く直を抱きしめた。 「っ⋯行くなよ、どこにも⋯絶対」 震える声でそう言いながら、直の背中に腕を回す。 直を自分の身体に縫い付けるかのように強く、強く抱きしめる。翔太の身体は震えていた。 直は、そんな翔太の感情を全て受け止めるかのように、彼の頭を優しく抱き寄せ、耳元で囁く。 「行かないよ⋯どこにも。君のそばにいる」 直の言葉を聞いて、翔太は心の底から安堵した。 彼なら、約束を破らない――確信は無いがそう思えた。 涙は止まり、身体の震えが徐々に収まる。 翔太は、直の首筋に顔を埋めるとすぅーっと深く息を吸い込む。 「⋯⋯はぁ♡」 先程までとはうって違い、とろんとした表情に戻る。 「ねぇ♡⋯ヤろ?」 こてんと首を傾け、問いかける。 「いいよ⋯」 直はそう言うと、翔太の額にキスを落とす。 そして、翔太の腰をしっかり抱き寄せると、ゆっくりと腰を揺らし始めた。 「あっ♡⋯んっ♡⋯あぁっ♡」 互いの熱い肌が密着し、翔太の喉から甘い声が漏れる。 「あっ♡あっ♡⋯⋯あン♡⋯んっ♡んンン♡⋯んっ♡」 翔太は喘ぎながら、直の肩口に顔を埋め、彼の肌に歯を立てる。 「っぅ⋯くっ⋯!」 強い力だ。まるで被食者になったような気分だ。 (嗚呼⋯でもきっと、これは⋯) ――彼なりの愛だ 今日初めて会った相手だ。 すべてがわかるわけが無い、でもこれだけは、わかる。 「寂しいんだね⋯翔太」 小さく囁き、頭を撫でる。髪がしっとりと手のひらに吸い付く。 「⋯あっ♡⋯うるさ、い⋯♡動けぇ⋯動けよ⋯♡」 直の肩口を強く噛んだまま、掠れた声で訴える。 「⋯⋯わかったよ」 直はそう言うと、翔太を強く抱きしめると腰を再び動かす。 「あっ⋯♡ふぅ⋯♡あン♡⋯⋯あぁっ♡」 腰の動きに合わせて、翔太の喉から甘い声がどんどん漏れ出てくる。 「あン♡⋯もっ、もっと⋯♡もっと!♡これすき、すきぃ♡あっ♡はぁ⋯♡嫌なこと、全部忘れられる⋯♡酒より、こっちの方が♡ん♡♡めちゃくちゃ、いい!♡」 「っはぁ⋯そう、なの?」 「んっ♡うん⋯♡あっ、あっ♡♡すき、すき♡⋯お前も⋯好きって、言って?♡ン、あっ♡」 「うん、好き⋯好きだよ」 「え、えへへ⋯♡あっ♡あっ、んン♡もっと、言って♡」 「何度でも、言うよ⋯好き、愛してる」 「はぁー⋯♡♡嬉しい⋯嬉しい♡♡」 翔太の幸福に比例するように、きゅうぅぅと、ペニスを締め付ける。 「っ⋯やっ⋯ば」 直は甘くうめくと、翔太を抱きしめる腕にさらに力を込める。 「あっ♡⋯あっ♡⋯やっ♡ま、また♡イク⋯イっちゃう♡♡」 「大丈夫⋯一緒にイこう⋯翔太」 パン♡パン♡♡パン♡♡パァン♡♡パン♡♡ 直は囁くと、腰の動きを速める。 「やっ♡あっ、あっ♡♡あンン♡♡イ、イク、♡♡イク♡♡イクぅぅぅぅ♡♡♡」 「っ⋯イけ」 深く、さらに深く腰を突き上げた。 「あっ、あっ、あっ♡♡あぁぁぁぁぁン♡⋯⋯イっ、イ、クぅぅぅぅ♡♡♡♡⋯⋯⋯⋯っ、っ♡♡♡」 びくっ♡びくっ♡♡ 翔太の身体が激しく震え、その快感に酔いしれる。 どくっ♡どびゅっ♡びゅるるる♡♡♡ 「⋯っ⋯♡また、出された♡あ、つい⋯⋯♡すきぃ♡」 甘い吐息と共にそう呟くと、直の肩を優しく、かぷっと肩を噛んだ。 「んっ⋯」 甘噛みだ。その行為には、翔太の愛を感じた。 愛おしくて仕方がない。今すぐさらってしまいたい衝動に駆られる。 「⋯⋯お返し」 翔太の首筋を優しく、甘噛みした。 「あっ⋯♡」 びくっと身体が震え、喉から甘い声が漏れ出た。 「⋯俺が君の居場所になるよ。だから⋯さっきみたいに自分を否定しないでくれ」   翔太を離したくないと言わんばかりに腕に力を込めて、強く抱きしめる。 その言葉を受け、翔太は直の温かな腕の中で考える。 (――そんなこと言われたって⋯すぐに自分を否定するのをやめれるわけない⋯) 「⋯⋯お前が、頑張れよ」 「え?」 「そんなの、やめれるわけねーよ⋯俺を変えてくれよ」    (生きててよくても⋯やっぱり自分が嫌いだ。消えてなくなってしまいたい⋯自分が存在している意味がわからない⋯そんなやつ⋯変えれるのかよ) 「変えるよ」 真っ直ぐな目で、真剣な眼差しで見つめる。 「俺は君が⋯ありのままの君が好きだ。お酒を飲んで、やさぐれて俺をからかっていじわるする⋯そんな君だから好きになれた。だから、俺は本気だ。君が生きてていい理由に俺がなってやる」 (嗚呼⋯⋯反吐が出るほど、真っ直ぐで眩しい) ――だから、信じてみていいかなって⋯生きてもいいかなって思った。死ぬにはまだ早いかもってなった。だから⋯ 「⋯⋯そんなに言うなら責任取れよ、直」 直は目を見開く。 (そっか⋯俺を、試してるんだ⋯)   しかし、すぐにふっと笑うと、翔太の頭を愛おしそうに撫でた。 「もちろん、一生かけて」 そう言い、翔太の髪をかきあげ、額にキスをした。 月明かりが二人を照らす。まるで祝福をするように――

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