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センセー、お仕置なんて嫌だ!!
(ん⋯?静かだな。やっぱり寝ちゃったのかな?)
洗面所で髪を乾かした後、耳をすます。
リビングからは物音一つ聞こえてこない。
「翔太ー?」
ためしに声をかけてみるが返事は無い。
(⋯聞こえてないだけかも)
少し不安になりながら、直はリビングに足を運ぶ。
「あれ?いないな⋯」
リビングに翔太の姿は無かった。ふと、寝室のドアを見ると、少し開いていた。
(ここかな?)
寝室の扉を開ける。
「翔太?⋯寝ちゃ、った⋯の⋯?」
言葉が詰まる。
そこには――直の服を着てベッドに腰掛ける翔太の姿がいたからだ。
明らかにサイズのあっていないTシャツを着ているせいか、肩が余って落ちてるせいで鎖骨が丸見えだ。
そもそも元はTシャツなのに、翔太が着ることによって大きすぎてワンピースみたいになっている。
本人は何故か真剣な顔をしているが、服とのアンバランスさが逆にエロく見えてしまった。
その姿に言葉を失うが、すぐに正気に返る。
「しょ、翔太?何して⋯」
「だ、抱けよ!!」
「はぁ!?」
「こ、興奮すんだろ!!こういう!!エロ本で見たことあるし、か、母さんの彼氏も言ってたし!!」
「翔太⋯?何言ってるの?」
慌てて近づき、翔太の両肩を押さえる。その声色には驚きと戸惑い、そして哀しみが混ざっていた。
「か、体で返そうと⋯思って」
「何言って⋯」
「だって、俺⋯こんな底辺なのに⋯世話焼かれて⋯
住まわせてもらって⋯金まで払ってもらってるのに、何も返せないから、だから体で払ったら後腐れないかなって」
「っ、馬鹿!そんなこと考えなくていいから!」
「でも、俺!パチで擦ったから、来月まで金ないし⋯だからこれが早いだろ!⋯ほ、ほら?下、パンツ履いてないんだぜ?す、すぐヤれるぞ?」
そう言い、Tシャツをめくろうとする翔太の手を直はガシッと押さえる。
「やめろって!そうやって自分を卑下するなよ!!」
「な、なんでそんなこと、言うんだよ⋯嬉しいはずだろ!だって、母さんたちがそうだったんだ!それが大人のやり方なんだろ!!」
「っ⋯!そんなの当たり前じゃない!!言ってておかしいと思わないのか!俺はそんなことをしてもらうために、君を受け入れたわけじゃない!!」
「う、うるさいうるさい!わけわかんないこと言うなよ!また、あの日みたいにすればいいじゃねーか!抱けよ!こんな''存在価値のない''、''生きててもしょうがない''俺なんだからいいだろ!!」
――――静寂。
「⋯⋯⋯⋯⋯はぁ?今なんて言った?」
空気が張り詰める。
さっきまで優しく微笑んでいた顔が一瞬で消えた。
「俺、言ったよな?自分を否定するなって。何度言っても直らないね⋯やっぱり口約束だけじゃ駄目なんだな。だから、こういうことをする⋯」
「な、直?」
雰囲気が一気に変わった直に戸惑いを隠せない。
「⋯⋯翔太」
驚く程に低い声で、逃がさないと言わんばかりに肩を強く押さえつける。
「自虐のつもりなのかもしれないけど、自虐も過ぎたら暴力だよ。そうやって、自分を傷つける翔太を俺は許さない⋯⋯」
静寂が落ちる。
厳しい目で翔太を見つめる直に、翔太は恐怖を覚え、思わず目を逸らしてしまう。
「あんなに言ったのにするなんて⋯優しくしちゃったからダメだったんだね――だから」
直はふっと口元を緩める。
「お仕置が必要だね」
「えっ?⋯」
なんてことの無いように、軽く笑う。
それが逆に恐ろしくもあり、何故か嬉しくもあった。
(なんで、こんな⋯キュンとするんだよ。おかしいだろ!!)
ドキドキと心臓が動く。それと同時に切なくも、甘い締め付けも翔太を襲っていた。
「ほら、お尻こっちに向けて」
直は静かに命じる。
「い、いやだ⋯」
翔太は泣きそうな顔をして、拒否をする。
声は震え、視線を逸らしていた。
そんな翔太の態度に、直はため息をつく。
「⋯⋯嫌だじゃないの。俺がなんで怒ってるかわかる?わかんないよね?⋯君の態度からは一切誠意を感じられないもん。だから、わからせるためにするんだよ」
直の声は低く、言葉には言い返すことを許さないと言わんばかりの強い力を感じる。
「う、うぅ⋯⋯わ、わかった」
か細い声でそう答えると、膝をベッドにつけて、直の方へお尻を向ける。
恐怖のせいか羞恥のせいか、カタカタと肩が震えている。
「えらいね。すぐ終わるからね」
震えている翔太の背中をゆっくりと撫でる。
「大丈夫。君が嫌いだからやるんじゃない⋯好きだから、愛しているからこそやるんだから」
その言葉に、翔太の肩がびくりと震えた。
安心したのか、それとも怖がっているのか⋯直からは何もうかがえない。
深く、息を吐く――
「⋯⋯じゃあ、行くよ」
翔太の腰に手を添え、尻を叩くよう手を振り上げる。
「っ⋯ま、待って!」
「待たないよ」
バシンッ!!
乾いた音が部屋に響く。
「いっったぁ⋯!!」
尻に走る鋭い痛みに、身体がびくんっと跳ねる。
あまりの痛さに目には涙が溜まっていた。
(痛いよね⋯?俺もこんなことしたくないよ⋯でも俺もそれだけ痛いんだ⋯)
「これがお仕置の痛みだよ。まだあるから我慢してね」
(こ、これまだ、続けるの⋯?)
痛すぎて頭がクラクラする。
痛くて痛くて、今すぐ逃げ出したい。
なのに――
(⋯⋯⋯キモチ、イイ?)
「もう一回ね」
「や、やだやだ!!やっ⋯」
バシンッッ!!!
さっきよりも強い力で叩かれる。
「いっ⋯たぁ!!⋯痛い⋯痛いよ⋯もうやだ⋯⋯やだよ」
涙混じりの声で必死に拒むが、直には一切響いてない。
(⋯⋯泣いてる。可愛いけど苦しいな⋯でも、俺は引かない)
「ごめんね。俺だってこんなことしたくないよ⋯でも、我慢してね?」
「うっ⋯や、やだぁ⋯⋯」
声は震え、弱々しい。さながら泣きながら縋る子どものようである。
(な、なんでだよ⋯痛いのに⋯なんで身体が熱いんだ⋯)
下腹部に熱が溜まる。
痛いのに、怖いのに⋯身体はそんな翔太を裏切り、もっとと反応している。
(こんなの⋯変態じゃねーかよ!!や、やだやだ!!これ以上は⋯)
「⋯もう一回行くよ」
「やっ⋯!」
(逃げないと⋯またキモチイイのが来ちゃう⋯)
必死に逃げ出そうとするが、それを許さないと翔太を、がしりと押さえつける。
「逃げるな」
低く、落ち着いた声に翔太は硬直する。
「あと一回でお終いにするつもりだったけど、逃げ出したからもうあと、十回するよ」
「じゅっ!?⋯な、なんで⋯痛いから⋯せめて優しくしてくれよ⋯」
「⋯⋯⋯ねぇ、翔太?悪いことしてる自覚あるんだったら言わないといけないことあるんじゃない?」
「え?な、何を⋯?」
真っ白な頭で必死に考える。
なにを?どうしたら?言わないことって?
わからない、わからない⋯
「⋯⋯''ごめんなさい''でしょ?」
「っ⋯⋯」
――嗚呼、それだ
「ご、ごめんなさい!!ごめんなさぁぁい!」
「うん、何でごめんなさいなの?」
今度は軽く、ぺちんと叩く。
一回目――
「ひぃっ♡⋯」
それすら感じてしまい、咄嗟に口を抑える。
(⋯?翔太の声⋯なんか⋯いや、気のせいかな?)
「なんで⋯?なんで、なんで⋯」
「わかんない?⋯自分を必要以上に下げて発言してたでしょ?俺と約束したよね?言わないって」
「あっ⋯ご、ごめんなさい!約束破ってごめんなさい!!」
(やっと言えたね⋯俺も怒ってごめん。でも、やらないと変わらない。アメだけだと足りないんだ⋯だから、嫌われたっていいからムチを振るう。
⋯⋯でも、怖いな。嫌われるの⋯けど、君が壊れていくのを見たくない。だから、やる。心を鬼にして、君を叱る。君が自分を否定しないように⋯)
「⋯わかるよ。多分ずっーと自分を否定し続けてきたんだよね?だから、すぐには無理だと思うよ。でも、流石に''これ''は、やりすぎ」
今度は先程よりも、強くパシンッと叩く。
二回目――
「んんっ⋯♡♡」
「確かに俺らの出会いは、ただれてるよ?出会ってすぐセックスして⋯最後は俺が襲ったようなもんだけどさ。でもさ、流石に''これ''は自分を下げすぎだよ?⋯⋯君の価値観が壊れすぎてて悲しいよ」
バシンッ
三回目――
バシンッ!!
四回目――
バシンッッ!!
五回目――
「ひぃぃ⋯♡っ、んんン♡♡」
叩かれる度に翔太は頭が真っ白になっていく。
この瞬間も、己のソレはガチガチに勃起して、天を向いている。
(なんでだよ!なんで、こんな興奮して⋯気持ち良くなってんだよ!⋯ば、バレたらまずいっ。叱られてんのに興奮する変態だって知られたくないっ!)
「わかった?」
「わ、わかった!!ごめんなさい!努力するから!言わないようにするから!だから、叩かないで!!」
「⋯本当にわかってる?その場しのぎにしか聞こえないよ」
バチンッッ!!
「んンンンっ♡♡⋯本当だから!絶対守るから!!」
「本当?俺に誓える?」
目を細めて、見下ろす。
そして、また叩く。
バチンッッ!!!
「や、やぁっ⋯♡♡ち、誓う!!誓うからぁ!!」
「そっか。嬉しいな⋯もう少しで終わりだよ。耐えようね」
「やだっ!⋯怖いよぉ!!」
「⋯大丈夫だよ、すぐ終わるからね」
よしよしと優しく背中を撫でながら、叩く手を再び構える。
バシンッ!!
「ひぃぃっ⋯♡♡」
体がびくんっと震え、どんどんと声の抑えが効かなくなる。
涙が滲み、声を抑えようと手で口を押えるが、それでも甘い声が漏れ出てしまう。
(無理無理無理!!耐えられない!!我慢したらおかしくなる!!でも、我慢しないと⋯もっと怖いことになる!)
痛いのはやだ、でも怒られたくない⋯
それを行ったり来たりしてそれ以上考えることを拒んでしまう。
(っ⋯絶対服の下、我慢汁でドロドロだ⋯気持ち悪い)
「大丈夫?痛かったよね⋯もう少し、もう少しだから」
優しく背中をさすり、厳しくも優しい目で翔太を見下ろす。
「あと二回だよ。頑張ろうね」
(⋯あと、二回?)
軽く絶望する。けれど――
(最後まで耐えたら俺どうなっちゃうんだろ⋯)
ひどく期待している自分もいた。
バシンッッ!!!
「ああぁぁぁっ♡♡」
強烈な衝撃に、腰が浮き上がる。
ベッドから逃げようとするように尻が反り、抑えきれない声が口から弾ける。
(ヤバいヤバい⋯気持ちいい!!次、叩かれたらイク、絶対イっちゃう!!)
震える手で口を押える。だが、もう既に遅い。
それでもバレたくないと言う気持ちがあるため押さえずにはいられなかった。
「よく我慢したね。次で最後だよ。」
直の声が遠くに聞こえる。
(さ、最後⋯?次で?⋯早く、叩いて欲しい⋯イきたい⋯イきたくてしょうがない⋯)
本能が「おかしい」と叫んでいる。
けれど、その先に見える快楽を身体は待ち望んでいる。
「行くよ」
(やだやだやだ!!来る⋯なにか来る!!)
バシンッッッ!!!
十回目――容赦ない衝撃が翔太を襲う。
「あっ♡あぁぁぁぁぁん♡♡ンンンンっっっ♡♡」
腰が跳ね上がり、全身が弓なりに反る。
シーツをぐちゃぐちゃに握り、爪が食い込むほど必死に耐えるが、止められない。
視界が白く弾け、頭が真っ白になる。
(やだっ、止まらない!イク♡イクッ♡♡イッちゃうぅぅぅ♡♡♡)
どぴゅっ♡びゅるるるる♡♡♡♡♡
快感が身体中を駆け巡る。熱い奔流が腹の奥から突き上がり、股間から吹き出す。
「んんんんンンンンッッ♡♡♡♡♡♡」
腰が跳ね上がり、全身が痙攣する。
白濁が服とシーツを汚し、染みがどんどん広がっていく。
「これで終わり。よく頑張ったね⋯あれ、翔太⋯?」
ベッドに広がったシミを見て、眉をひそめる。
「⋯⋯あっ!感じちゃったの?叩かれて?⋯⋯へー」
「っ⋯♡」
(気づかれた!!⋯叩かれてイッたことバレた!変態だってバレた!!)
涙がじわりと出る。そんな顔を見られたくなくて、翔太は顔をシーツに埋めて隠す。
直はくすりと笑う。
「ホントに''悪い子''だね」
「うっ⋯うぅぅぅ⋯⋯笑えよ、変態だって笑えよ!!」
「ええっ!?笑わないよ、めちゃくちゃ可愛いんだから!⋯ほら、顔を上げて」
優しく言うが、翔太は首をぶんぶん振って頑なに顔を上げない。
「笑わないって⋯そんなことで嫌いにもならないよ。」
「⋯⋯⋯⋯うるせぇ」
「大丈夫だって!そんなことで否定しないって!むしろ可愛いよ!ホントに!」
「っっ〜〜〜⋯もっと恥ずかしいわ!!!」
ガバッと顔を上げ、直を睨みつける。
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