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第8話 総のマンション

 夜の街は、静まり返っていた。  終電が過ぎ、人の気配が途絶えた時間。  高崎彩芽は、総のマンションの前に立っていた。  冷たい風が髪を揺らす。  胸の奥では心臓が暴れている。  ポケットの中で、指先が総のマンションの合鍵を握りしめた。  ほんのわずかな金属の感触。  それだけで、全身が熱を持つ。  ——一度、しっかり顔が見たいだけ。  ——ちゃんと眠れてるか、確認したいだけ。  自分に言い訳をしながら、  鍵を差し込む音が響いた。  カチリ。  静かな音が、異様に大きく感じられた。  ゆっくりとドアを押し開けると、  薄暗い部屋の中に、わずかな灯りがあった。  デスクの上にノートパソコン。  その前で、総がうつ伏せに眠っていた。  紺の髪が額にかかり、  まつ毛が微かに震えている。  ——眠ってる。  胸の奥で、何かが音を立てた。  彩芽は息を殺しながら、静かに歩み寄る。  距離が近づくたび、  心臓の鼓動が自分の鼓膜を叩いて痛い。  総の顔のすぐ横に膝をついた。  寝息が微かに頬を撫でる。  それだけで、膝が震えた。  指先が伸びる。  髪に触れる。  柔らかい。  あの頃テレビで見た“天才作家”のままの横顔。  ——こんなに近くで見たのは、初めてだ。  頬に触れようとして、手を止めた。  “怖い‪”‬  けれど、総の唇がかすかに動いた。  夢の中で誰かの名を呼ぶように。  「……彩芽」  その瞬間、彩芽の世界が色ずいた。  胸の奥に閉じ込めていた理性が、音を立てて崩れる。  ——俺の名前、呼んだ。  ——俺のこと、覚えてる。  体が勝手に動いた。  頬を撫で、髪を指で梳き、  呼吸の合間に、そっと額を寄せる。  触れた肌が熱い。  総の体温が、直接胸に流れ込んでくる。  「……総さん」  囁く声は、震えていた。  怖くて、嬉しくて、痛い。  「俺、もう我慢できそうにない」  その言葉が零れ落ちた瞬間、  総のまぶたがゆっくりと開いた。  紫の瞳が、目の前の金髪を映した。  眠気の中で混乱し、  現実を理解した瞬間――息を呑む。  「…彩芽くん、どうして……」  「会いたかったんです」  その声は静かで、  けれど確かな熱を孕んでいた。  総が立ち上がろうとした瞬間、  彩芽の腕が彼を捕まえた。  逃げるように引き離そうとする総の背を、  彩芽は優しく、けれど強く抱きしめた。  「離せ……彩芽、やめろ」  「離したら、もう二度と抱けない気がする」  低く、熱のこもった声。  その響きが、総の心臓を撃った。  「俺、ずっとあなたに触れたかった。   小学生の時、あなたの小説で生きる意味を知った。   だから、今度は俺があなたの生きる理由になりたいんです」  総の指が震え、  呼吸が浅くなる。  「……怖いよ、お前が」  「俺も怖いです。   でも、あなたがいない方がもっと怖い」  抱きしめる力が強くなり。 総の背中が彩芽の胸に押しつけられ、  ふたりの呼吸が一つに混じる。  その熱の中で、  理性という薄い膜が、静かに溶けていった。 抱きしめた腕の中で、総の身体がかすかに震えた。 頬に手を添え、優しく大切な物を扱う様に親指で総の薄い唇を撫でた。 「キス、してもいいですか?」 「ダメだっても、君はするだろ·····」  彩芽は、まるで心の奥を読まれたような言葉に、思わず口角を上げた。  総の笑みは挑発のようでもあり、諦めのようでもある。  そっと唇が触れる。強く、深く、まるで飢えたケモノのような激しい口漬けに。 総の口から、甘い声が漏れる。 「んっ·····っん」 彩芽の手は、総のワイシャツのボタンをゆっくり外し、薄い胸板に、手を這わせた。 「っ·····可愛い」 総をベットに強く押し倒す。 前がはだけた状態の総は頬を赤く染め彩芽から目を逸らした。 「俺をちゃんと見て。総さん」 指が乳首に触れた途端、総の腰が小さく跳ねる。 「·····あ、ん·····っやば·····」 舌を這わせた弄ぶと、総の指先がスーツを強く握った。 「声、もっと聞かせて·····」 彩芽は総の脚を開き、腰を掴むようにして身を重ねる。 その下腹部は既に熱を持ち、彩芽の指先が触れると跳ねるほどに敏感に反応する。 「ぁ·····ッ、ん、やぁ·····あ、やめ、それ·····だめ」 「·····っ、かわいい、そうさん·····もっと声聞かせて」 舌で、総の下腹をなぞりながら、指で秘所をゆっくり押し広げる。 彩芽はそのままほぐれた秘所に熱を持った己を沈めた。 「総·····さん、ちから·····抜いてっ」 ぬるりと潤んだ内壁、ゆっくりと抜き差しすると仰け反る総の身体を優しく支え、彩芽は総の奥を一気についた。 「あぁ·····ンっ·····つ」 総の口から一番の大きな声が漏れた。その反応に、もう一度欲が沸き立つ。 口付けながら。何度も奥を鋭くついた。 「あやめ、はげ、しい·····ンっ·····あぁ、んっ」 繰り返すたび、ぬちゅ、と濡れた音が激しくなり、快感が抜けきらないまま、突き上げる。 総の手が彩芽の背中に回り、爪を立てる。 「あぁ·····あやめ、もう·····だめ、」 「イきそう?·····っ俺もだら一緒に行こ?」 総の頭を優しく撫でると少し穴がしまった。 (優しくさせるの好きなんだ·····) 快楽に飲み込まれながら何度も彩芽は総を突き上げた。 何度も、深く、強く。 汗が滲み、お互いの熱が絡み合う。もう後戻りなんてできない。 所まで落ちていた。 それでも止められなかった 総の体に彩芽という存在を刻み付けたかった。 ーーもう離れられないですね、総さん

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