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                 まず、一旦ここまでの話をまとめると――。    僕とハルヒさんは、母のお腹にやどってからしばらくは一柱の男神だった。  ところが天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)の(ひょっとすると面白いかも〜! というややはた迷惑な)突飛な思いつきによって、僕たちという一柱の男神は母の胎内で二柱の男神――すなわち双子の兄弟神に分けられ、そうして生まれたのが僕、兄・天上春命(アメノウワハルノミコト)と、弟・(アメノ)(シタ)(ハルノ)(ミコト)である。    そして神は、人間の中にある陰陽のエネルギーよりももっと強力なそれを完璧に融合させているからこそ、「神力」という魔法のような力を使うことができる――が、僕・ウワハルは、切り分けられ方からして陽のエネルギーが多い男神として、弟・シタハルは陰のエネルギーが多い男神として生まれたため、陰陽のエネルギーを過不足なく有している、かつそれを完璧に融合させている他の神々に比べれば、「不完全な神」であった(ただし不完全とはいえ、僕たちは個々でも「神力」を使える神として成立する程度の切り分け方をされている)。    しかし天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)の望みは、ただ単に一柱の男神を二柱、つまり双子の兄弟神とするだけではなく――その二柱がのちに各々神として立派に成長を遂げたとき、ウワハルとシタハルが「統合」をすることで、ふたたび一柱の完璧な男神――(アメノ)(オシ)(クモ)(ネノ)(ミコト)」に戻れるように、とのことだったため、その意向を汲んだ(人間や神などの創造にたずさわる)(カミ)(ムス)()()(ミコト)は、ウワハルに男性器と女性器、その両方を取りつけた。    そしてそれの意図とは、男神と女神、ひいては男性器と女性器が「二つに一つ」となるにもっともふさわしい形を成しているため――と、いうが、  ……とすると、別にウワハルは両性具有でなくともよかったのではないか?    それこそ「統合」とやらに最もふさわしい肉体をもっているのが男神と女神である、というのならば、単純に男神と女神として(つく)っても――なんなら「最も」とまでいうのならむしろそのほうがよかった、そのほうが「統合」とやらもスムーズだったのではないか? とも、思えなくはないのである。  ……いや、といってもちろん僕は女性、…女神になりたいというような願望はない。ましてや、自分の肉体の造りに不満や違和があるというのでもない。      ――これは単純な疑問である。したがって、     「ですが…それで言ったら僕、女性…というか、女神として生まれるべきだったんじゃ…――?」    と僕は、目を伏せたまま首を(かし)げたのだった。  ――しかしハルヒさんが「ううん」とすぐさまそれを否定する。   「実はぁ…ウワハルの真字には、春と上、の他にも…春と(おもて)…で、表春(ウワハル)っていうのもあって…――だから俺たちが一柱になると…、俺のちんちんがウエのなかにおさまってぇ……」   「……、…」    ところで、推しの口から初めて聞いた「ちんちん」発言に、内心ちょっと動揺している僕である。 「ウエのちんちんが表にある状態で…、だから、ちんちんのある一柱の男神になるんだよね…――でも…ウエも男神じゃないと、オシクモネは男神でも女神でもなくなっちゃうから……」   「……、…」    まあ…なるほどたしかに、…と思えなくもない話だ。  依然その「統合」とやらの全貌は、残念ながらうまく把握しきれていないままだが、…ハルヒさんのいうそれの理屈としてはきっとこういうことだろう。    まずその「統合」とは、ウワハルの膣をシタハルの陰茎で「埋める」ような形で成される。  そうしてウワハルの膣をシタハルの陰茎で埋める、ひいてはそこにおさめて「一つ」となり、…また二柱の体が重なりあって一つに、…一柱の肉体になる…? と、すると当然シタハルの陰茎は隠れて見えない状態になるが――それが男神と女神の体であれば、陰茎も膣もない体になってしまうところを、ウワハルにも陰茎があることで――そのウワハルの陰茎が「表」に露出するために、二柱が「統合」した一柱の男神・オシクモネにも、男神たらしめる陰茎がある状態になる…、またウワハルの膣も「埋め立てられて」いるため、すると両性具有ともなく、オシクモネはいよいよ「純粋な男神の体」になる…と。    きっとこういうことだろう。   「そそ…さすがぁ…。ふふ…でもさー、そもそも男神を二柱に分けてるのに、片方女神になるわけなくない…?」   「……、…」    まあ…そう言われてみればそうかもしれない。  僕たちが「統合」された際のオシクモネがどのような精神状態なのかは知らないが、女神の人格半分、男神の人格半分ともなると、男神同士のそれより心が二つあ…いや、いささか混乱を極めそうではある。  ……ここでコトノハさんが「ただ…」とこう補足する。   「高皇産霊尊(タカミムスヒノミコト)がウワハルに女陰を付け加えた理由は、何も〝統合〟だけが目的というわけでもないんだ。――〝陰の器に陽の魂、陽の器に陰の魂〟……」   「……、…」    僕はふと目を上げてコトノハさんを見た。  その澄明な青白い瞳は、穏やかなまなざしで僕の顔をながめている。   「つまり、そもそも陽のエネルギーが際立って多いウワハルに陰の器、すなわち女陰を与えることで陰のエネルギーを多少補填し…――反対に、陰のエネルギーが多いシタハルには純粋な陽の器、すなわち陰茎のみを有した純粋な男神の体を与えることで、陽のエネルギーを多少なり補填した……」    コトノハさんはふと、そのまなじりがやさしく垂れた両目で微笑する。   「そうして、陰陽のエネルギーを補填する形で君たちを造られた創造主や神皇産霊尊(カミムスヒノミコト)は、君たちがそれぞれであっても〝神力〟を使える二柱の神となり、そして各々でも神としての勤めを果たせるように……と、お取り計らいくださったんだよ。」   「……、…」  そうなのか…動機こそめちゃくちゃだとは思ったが、やはりそこはきちんと考えられてのことだったらしい。さすが全知全能の神…――僕は目を伏せ、五月汁のたけのこを口にいれる。  これは煮込まれていてやわらかい。驚くほどエグみがまったくないこのたけのこは、旨味の濃いだし汁をよく吸っていて、どうやったらこんなに味が()みるんだ? と不思議になるくらいである。…まあどうやったらとはいえ、僕は料理なんかしないが。   「また…この〝月の瞳〟、そしてシタハルの〝日の瞳〟も、それぞれ陰のエネルギー、陽のエネルギーをもっているので、君たちの陰陽のエネルギー調整に幾分か役立っている。――月は陰に属し、日…つまり太陽は、陽に属しているからね」   「……、…」    僕はたけのこをもぐもぐしながら、コトノハさんのその青白い光沢がある瞳を見てうんうんとうなずく。彼は聡明なまなざしで少し顔をかたむける。   「ちなみに、世では月というと女性、太陽というと男性のイメージがあるようだけれども、それは同じ陰陽のグループに属する仲間…――つまり性質に似たところのある仲間であるから、というのに起因していることで、…これにおいてもやはり、月はすなわち女性ではなく、太陽もすなわち男性ではない。というよりか…月と太陽には、そもそも性別などないんだよ。」   「……、……」    なるほど……ごくん、と口内のものを飲み込む。  ……そういえば太陽神の天照大御神(アマテラスオオミカミ)は女神、月神の(ツク)()(ミノ)(ミコト)は男神とされている。  が、太陽はイコール男性だからアマテラスは本当は男神なんじゃないか、とも考察され、月イコール女性だからツクヨミは女神なんじゃないか、とも考察されている(なお例によって敬称略)。――まあ確かに日本神話の中で、ツクヨミの性別への言及はない。ただアマテラスに関しては一部ある、ものの……。    実は建速須佐之男命(タケハヤスサノヲノミコト)と対峙したアマテラスが、()()するエピソードがある。  ……まず――スサノヲはアマテラスの弟君なのだが、彼はあんまりにも問題児すぎたので、彼の父親である伊弉諾尊(イザナギノミコト)はほとほと困り果てていた。――そら困るだろう。    イザナギパパは生まれたばかりのスサノヲに『お姉ちゃん(アマテラス)は天上、お兄ちゃん(ツクヨミ)は夜の世界、そしてお前は天下(地上)を(おさ)めなさいね』と言いつけたが、スサノヲは顎髭(あごひげ)ゆたかな()()()()()()()()になってもなお天下を治めもせず、ビービービービー毎日泣きわめいていた。  で、スサノヲももちろん神様なので、そのバカデカ泣き声は山を枯らし、海を乾かし、そして人間たちを殺してしまうほどの凄まじい威力があったらしい。    するとイザナギパパは「もう勘弁してくれや…」と内心呆れ返りつつ、スサノヲに『お前はなんでそんなにいつまでも泣いておるんだね…?』と尋ねた。  その父の質問に、スサノヲはこう答えた。   『俺、かーちゃんに会いてぇんす゛…っ! かーーちゃああああん゛!! かーちゃんのいる根の国(黄泉の国)に行きてぇよおおお゛!!!』    ……要するに、亡くなってかつイザナギパパが離婚した元妻・伊弉冉尊(イザナミノミコト)に会いたい、母が恋しいと、おっさんになってもなおスサノヲは毎日泣きわめいて暮らしていたマザコ…いや、――ちなみに、実は三貴(さんき)(しん)(アマテラス・ツクヨミ・スサノヲ)はイザナギの(みそぎ)で生まれた説と、イザナギ・イザナミが計画的に生んだ説があるのだが、…このエピソードはおそらく後者の説が元になっているか。    で…母が恋しくてたまらないから毎日泣いていると、そう言ったスサノヲにイザナギパパは(()()()()()をえぐられたところもあったか)、   『もうそんなこと言うなら勝手にしなさい!!』    と、いよいよブチ切れた。  ……まあとまれかくまれ…そうしてイザナギパパに、かーちゃん(イザナミ)の元へ行く許可をもらったスサノヲはしかし、   『うんわかったとーちゃん…っ、でも俺、根の国に行く前に、天上にいるねーちゃんに挨拶だけしに行っていい?』    とイザナギパパに聞いた。パパは『いいよ、それくらいなら』と投げやりにそれを許可する。  ……そういったわけで、スサノヲは天上を治める姉・アマテラスのもとへ行くことになるのだが――アマテラスはスサノヲの悪評を耳にしていたため、   『…あぁ何、()()()()()()がわざわざ地上から私のもとへ来てるって…? あぁもうなんで…? いや、絶対この天上の支配権を奪うために来たんだろう。もちろん私は女といえど負けるつもりはない。』    と、スサノヲが自分の元に来たという報告だけで警戒し、…わざわざ()()(武装)をする……というエピソードがあるのだ。  で……ということは、やっぱりアマテラスは女神さまなんだろうし――ツクヨミに関しても、『私にお前のゲロ食えってのか!』なんて保食神(ウケモチノカミ)を斬り殺しているから(武装、つまり普段から剣を携えていたということだから)、やっぱり男神さまなんじゃないのか。というのが個人的な考察である。     「とはいえ…」――コトノハさんが対面の母をチラリと見、そしてうっとりと彼女に見惚(みと)れはじめる。   「…月のあの清きなめらかな白い肌に、美女のそれと重ねて見たくなる気持ちはわからないでもないけれど……」   「……、…」    おぉ何かこの人、(息子たちの前で)いきなり惚気(のろけ)はじめてないか…?  しかし母は「あら」と冗談っぽい、少し高飛車な感じでいう。   「わたくしはどちらかというと太陽ですわ。玉照(タマテル)の名にあります通り、みんなをわたくしの美しく明るい光で照らしていますの」   「……はは…そうだね。全くその通りだ。」    とコトノハさんが頬を赤らめて照れくさそうに笑うが――すぐにまた僕を見、そしてその眉目を少しくもらせる。   「ただ…この〝月の瞳〟は、すなわち〝月の性質〟をもった瞳のことだ。――月は夜、太陽の光を受けて輝き、その光の反射で暗闇を照らしながら、冷静な眼差しで全てを見透す…――この瞳はそうした〝月の性質〟…、いわば鏡のような性質をもっている。」   「…鏡…」    僕はそうつぶやくように言う。  コトノハさんは「そう…」と僕を見ながらうなずき、 「まるでよく磨かれた鏡のように…この〝月の瞳〟は、物事を細部まで冷静に見極め、そして正しい判断する聡明さをもつとされ…のみならず、人の心の闇を受け入れて光に変え、その神聖なる光を、その者の心へと(かえ)す……」   「……、…」  コトノハさんが「しかし…」と、ふと目を伏せる。   「この(まなこ)で暗闇ばかりを見つめてしまえば、その暗闇を多く取り込みすぎ、すると光への変換が間に合わず、まるで新月のように己の心まで闇に染めてしまうことがあってね…――そして、そのせいでこの瞳が朧月(おぼろづき)のように曇れば、やがて己の心の正しい姿形さえもよく見えなくなってしまう……」   「……、もしかして僕…今、…()()()……」    僕はわれ知らずそう口に出していた。  ……僕は小学生のころにいじめを受けた。そしてコトノハさんいわく、四年生からのあの過激さが増したいじめは、その人らの「心の醜さ故」だったという。  すると僕は見すぎたのかもしれなかった。人の心の闇というものを。――だから神様は、それも三年生までと決めていたのかもしれなかった。  ひょっとすると神様は……三年以上耐えてしまえば、僕が暗闇を心に取り込みすぎ、そして()()()()()()()()ことを見越していたのか…――。   「そうだろうとは思う…」とコトノハさんは眉尻を下げて僕を見たが、すぐにふとあたたかい微笑をうかべる。   「だが、何も心配することはないよ。――君の側には〝日の瞳〟をもつ母とシタハルが…」   「ちがう。ウエには俺がいるの。」    そうハルヒさんが可愛くむすくれると、コトノハさんは彼を見て「はは…そうだね…」と、…やっぱりこの両親は基本そろって彼を子ども扱いすることでかわすようだ。  そしてコトノハさんはハルヒさんをながめながら、   「君たちの母とシタハルの〝日の瞳〟は、万物にぬくもりと光を与え、物を育み、そして奥底の暗闇までもを光で照らして晴らす性質をもつ瞳…――しかしその一方で、〝日の瞳〟はその光と熱が増しすぎると、いささか攻撃的な側面も出てくる。…ただその力は、あらゆる魔をも退(しりぞ)ける頼もしいものでもあるが…――つまり簡単に言うと、彼女たちは()()()()()()()()()()()()()()、とでもいうべきか……」   「……、…」    うん、あぁ、わかる。  ハルヒさんはどうだか知らないが、少なくとも母はマジで怒らせたら怖いタイプである。――基本的にはとてもおしとやかで優しく、愛情深い人なんだが……一度怒ると、とことんまで相手を追い詰めるような人でもあったりする。   「だから、」とコトノハさんが明るい目つきで僕を見て言う。   「その攻撃的なほど(まばゆ)い光を受け止める瞳…そう、〝日の瞳〟には〝月の瞳〟が…、そして〝月の瞳〟には、己に光を授けてくれる〝日の瞳〟が必要なんだ。――また何より、この〝月の瞳〟と〝日の瞳〟が見つめ合えば、より強力に世の中を照らすことができる。――こと一心同体の君とシタハルとが見つめ合えば、君の心の中の暗闇もやがて晴れ…そうすれば君はきっと、自分のその〝月の瞳〟で、己の心の正しい姿形もまた見えるようになるさ。……」    コトノハさんは「さて、話が逸れてしまったね」と聡明な目色で、こう話をもどす。   「そうして魂の陰陽のバランスが悪い君たちにおいても、創造主と神皇産霊尊(カミムスヒノミコト)は、君たちが各々でも神としての勤めを果たせるようにと、さまざまな創意工夫を凝らしてくださった。…ただ…といって君たちが、それぞれでは不完全な神であることには違いない。――というよりか、」    コトノハさんは冷静な表情でこう断言した。   「君たちは…()()()()()()()()()()()()()、と言ったほうが正しい。」   「……、…」    お互い無くしては不完全な神…――ふしぎとその言葉が、そっと静かに僕の胸のまん中にとどまる。それはまるで座禅(ざぜん)を組んだ神聖な存在のように。   「…君たちにとってはお互いが必要不可欠な存在…。本来一つとして生まれようとしていた魂を二つに分けている以上、君たちにとっては、もはやお互いが自分のようなもの……たとえば自分の右腕や右足、左腕や左足…といったように、要はお互いが自分の半身のようなものなんだ。――すると…それこそ君たちは、たとえ離れたいと望もうとも、離れることなど決して許されない運命(さだめ)にある。」    ここでハルヒさんが「だから…」と、いつもののんびりしたかすれ声で言う。   「結局…君の心の声は、俺にとっての自分の心の声だし…、俺の心の声は、君にとっても自分の心の声…――俺たち、魂が太い糸でつながってんの…。だから離れていても…お互いに今なにを考えてるか、なにを思ってるか…全部わかる…。……」    そして少し悲しそうに、ハルヒさんは「でも…」とこのように続けた。   「しょうがないよね…、今はその〝繋がり〟も、ちょっとだけ薄れちゃってるみたい…――多分…君が〝人間の自我〟で、神の俺との〝繋がり〟も制限しちゃってるんだよ……」   「……、…」    僕は申し訳ないような気持ちでハルヒさんに顔をむけた。すみません、しかし僕がそう口にだす前に、目を伏せていた彼はつと目を上げて僕を見、ふっとやさしい綺麗な微笑をその彫りの深い顔にうかべる。   「だいじょぶ…。別に〝繋がり〟が切れちゃったわけじゃないし…、てか…運命(さだめ)じゃそれ、そもそも完璧に切れちゃうことはないしね…――多分だけど、君がちょっとずつ〝記憶〟を取り戻してゆけば、〝繋がり〟もちょっとずつ濃くなるとおもう…。……ね、だいじょうぶだよ。ゆっくりいこ…?」   「……、はい…」    僕の眉尻は下がっている感じがあるが、かまわず彼に笑い返した。――気を遣われているのをひしひしと感じた。しかし彼のその優しさが余計僕の申し訳なさを増幅させたのだった。   「さて、…話を続けても…?」とコトノハさんが、本題を続けたそうに僕に声をかけてくるので、僕は彼にふり向いて「はい」と答えた。  コトノハさんは「では…」と真面目な顔をして言う。 「もう一度目を瞑ってくれるかな」   「…はい…、……」    僕はそっとまた目を瞑った。  ――するとまぶたの裏に見えてきたのは、またあの陰陽太極図である。   「そもそも私たち神は、こうして陰と陽のエネルギーを完璧な形で融合させている、という話はもうしたね。…そして更に言うと、こう……」   「……、…」    その陰陽太極図がゆっくりと回転しはじめる。  向かって左にあった白い勾玉が左へ傾き…右にあった黒い勾玉はもちろん右へ…――。   「このように…通常陰陽のエネルギーは常に循環されており、またそうして循環されることで、その両極のエネルギーは過不足なく補い合われる…――またこうして両極のエネルギーが循環されることで、私たち神は〝神力〟の源である〝神氣〟を消費してもすぐさま回復させることがかなうため、ひいては〝無限の神氣〟を有していると言える。…しかし…」   「……、…」    そうしてゆっくりと回っている陰陽太極図が、またまん中横一線で切り分けられ――その二つの半円がそれぞれでゆっくりと回っている。   「君たちの場合はこのように分けられているせいで、こうして個々でエネルギーを循環をさせても、アンバランスな各々のエネルギーを循環させることしかできない…――するとウワハルにおいては陰のエネルギーが足りず、シタハルにおいては陽のエネルギーが足りないので、――個々で循環されたところで、君たちの〝神氣〟はさほど回復されることはないんだ。…だから、こうして……」   「…………」    今度は切り離されていた陰陽太極図が、ふたたびぴったりと一つの丸にもどり、ゆっくりとまた回転する。   「〝統合〟して一つ…再び一柱の男神に戻ることで、君たちはお互いに無い陰陽のエネルギーを補い合うことができるようになる…――ひいては、そうしてやっと〝無限の神氣〟をもつことができるようになるのだが……」   「……なるほど…、……」    だんだん話が読めてきた僕は、つぶやくようにそう言った。――コトノハさんはその声を沈ませてこう話を締めくくった。   「しかし、それを逆に言えば…つまり君たち個々では〝統合〟で補い合わない限り、各々の〝神氣〟もまたほとんど有限…――そして、君たちの消滅を避けるためには、そう…――君たちは早急(さっきゅう)に〝統合〟を果たさねばならない、ということにもなるんだ。」    そして彼の「もう目を開けていいよ」という声がけに、僕はそっと目を開けた――しかし、ふと思うところがあって目を伏せる。     「……、…」      ――やっとわかったような気がする。              ◇◇◇    ◇◇◇    ◇◇◇      皆さま、いつも当作をお読みいただき、ほんとうにありがとうございますっ(*´꒳`人)  またお読みいただくだけではなく、ありがたいことに応援のリアクションをいただけていること、ほんとうに感謝してもしきれません…( ;ᵕ; )♡♡♡    なるべく毎日更新できるようにがんばりたい意気込みはめっちゃありつつ、ただ私生活で用事があったりすると、(とんでも無謀なリアタイ推敲&できたらできただけアップの)無計画更新の暴挙に出ているため、…なんなら作品設定もリアタイで練っていたりもするため…(コンテストに間に合わないと思ってこのあたり書き込みサボってました白目)、こうして数日開いてしまうこともありますが、待っていてくださる皆さまの存在が、いつも僕を「やるっきゃねえぜ!」と励ましてくださっております…! ほんとうにありがとうございます…っ!!    で、お礼といってはささやかなものですが、次にウエシタちゃんの「1125(いい双子)の日ss」をご用意しました…っ!    よろしければぜひお読みくだせぇませ♡  いつもほんとうにありがとうございます!  感謝を込めて♡    鹿♡

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