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「……、…、…」
俺は頬が引き攣れるほど嫉妬している――。
……でも、めっちゃ我慢もしてる。
ハヅキははじめから俺だけのものなのに、ハヅキの唇や体ははじめから全部俺だけのものだったのに、…この可愛い唇とキスした奴らが俺以外にいて、ハヅキの綺麗な体を揺さぶった奴らが俺以外にいて――ハヅキの色っぽい声を浴びるように聞いてきた奴らがいて、…ハヅキの艶姿 をいやらしい目で見てきた奴らがいて、…それも多分このやわらかい唇に咥 え ら れ た 奴らもいて、…ハヅキの記念すべきファーストキスや「初めて」を(俺から)奪いとった奴がいて、――しかもどうやら、ハヅキの性感帯をしつこく「開発」した奴らまでいたらしい。
……変態どもめ。きっとそいつらはものすごくいやらしい奴らだったに違いない。きっとものすごく、ものすごーくド変態で、きっとハヅキの綺麗な体をベロベロ舐め回すようなおぞましい奴らだったに違いない。
……ただ…もう過ぎたことは過ぎたことだ。
まさか俺と夫夫になったあとの、つまり今のハヅキが他の誰かと寝たわけでもないし、それこそ俺だけのものではなかった頃の、過去の彼の経験を過 ちと見なすだなんてあんまりにもそれは自分勝手だし、…だから、過去の彼のそれに関しては俺の我慢をもって無罪としなければいけない。
それでも唯一の救いは、ハヅキがあくまでも「漫画を描くためだけに」そういった行為を経験してきた、…つまり少なくともハヅキの初恋相手は俺であり、ひいてはこれまでの奴らとの間には恋愛感情はなかった、ということ。
もちろん俺は今まで、ハヅキも自分と同じ堅固な信念――運命の夫と初体験をすると決めて、どんな誘惑にも断固乗らないという決意――を抱えて今日まで生きてきたと信じて疑わなかったので、そういう意味でも、あっさり他の誰かとキスもえっちもしてきたハヅキのことを恨みたくもなるけれど、…それだっていまだに「神の記憶」を取り戻せていない彼じゃ仕方のないことだ。
……だからもうそれはいいよ、俺、頑張って許すつもり、…ただ…――。
ただ、俺がそれよりも何よりも今まず思うところがあるのが…――俺は一旦ハヅキの唇から口を離し、薄く開けた目を伏せたままにする。
「あのさぁハヅキ…、…別に…今までいっぱいいろんな人といろんな経験してきたとかは、もう俺、…頑張って許すつもり…、――だけど……」
「…? はい」
ハヅキのその返事は随分あっけらかんとしている。
……そういうとこ。
「…ねぇ…ムードってあるじゃん…」
「ムードですか」
「……、…、…」
むうう、っと力んだ俺の唇がぷるぷる震える。
俺は目を上げ、悲しいやらどうして伝わんないの、ともどかしいやらで、思わずハヅキのきょとんとした顔を見ながら眉をひそめた。
「ねぇ、今BLのこと考えんのやめて…? しかもめっちゃいろいろ冷静に分析すんのやめてよ、…集中してよ、俺とのえっちに、――今は俺、君に俺のことだけ考えててほしいのに…っ!」
「……ああ…」
とハヅキはきょとんとしたまま、ただ俺の言うことを受け入れてはくれた。
「それは…すみません…――いやー根っからの腐男子なものでつい…。それもその…こう…つまり男性同士のセックスと思うと、それが我が身のことではありながら、…つい作品にも活かせるのでは…なんて、ついついBL漫画家の悪い習性が出てしまいまして……」
「……、…」
俺はむっとしたまま、…でも、ハヅキのその「習性」に理解を示したい気持ちは山々だった。夫として夫の仕事は応援したいから。…だけど、…やっぱり今はまだちょっと受け入れがたい。
「ねぇそれ…後々 思い出しながら、とかじゃだめなの…?」
俺がじとっとハヅキを見つめると、彼は聡明な表情でコクコクとうなずく。
「あぁ…確かにそれもそうですね…、じゃあここからはそう出来るように努 めますので」
「……、…」
てか…なんで君、今こんなに理性的なの?
俺と愛し合ってるこの色っぽいシチュエーションで、さっきから……。
……俺は自分とハヅキとのこの温度差に不満を感じたけれども、そんなの言ったってしょうがないことだった。――でもディープキスをしたら、…それも長いこと舌を絡めあったら、さすがのハヅキだって気分がぽーっとしてくるに違いない。
俺は気を取り直してハヅキのうなじをやさしく掴み、うっとりと目を伏せながら、彼の半開きの唇に斜めから唇を寄せてゆく。――そして「好きだよハヅキ…」と唇同士が触れる直前にそう愛をささやいたあと、俺は唇同士を合わせながら、彼の半開きの唇に舌をにゅる…とゆっくりとさしこんだ。
「……、…」
ハヅキの震えているやわらかい唇が、くみ合わさった俺の唇の端をか弱い力で咥える。かわい…。
ハヅキの下の歯の裏に怯えて隠れているような、無力な彼の舌を俺の舌先がつつくと、ぴくっとその舌はもう少し奥へ逃げた。――俺の舌はのんびりと彼の舌を追いかけ、そしてちゅるん、ちゅるんとハヅキのたっぷりとうるんだやわらかい舌を、下からすくい上げるように舐めながら、…俺はハヅキの片胸を手のひらの中におさめる。
「……ん…♡」
ハヅキのかすかなその可愛い声、そして、つんと俺の手のひらに刺さる粒だった彼の乳頭の感触に、
「…ッぁ、?♡」
「……、…」
やば、俺、一瞬意識がふっ飛んじゃった、
――キスの最中だったのに、じっくり舌を絡めてハヅキをうっとりさせようと計画していたのに、…俺は気がついたらハヅキの乳首を口に含んでいた。
「……、…あの、ハルヒさん…? ふふ…ちょっと、びっくりしました…」
ハヅキが年上のお兄さん、というような慈しみの受容の態度で俺の後ろ頭を撫でてくる。
「……、…、…」
俺、…もしかして今、カッコ悪…くない…?
ていうか、なんか余裕のない年下っぽかった…?
てか大丈夫かな…ハヅキ、怖くなかったかな…?
今の俺、多分予兆も何もなくかなりものすごい勢いで頭を下げて、食らいつくようにハヅキの乳首に、…えっなんか、思えば俺ちょっと変態っぽかった、かも…?
「……、…、…」
恥ずかしすぎて、俺の顔が、耳がかーっと熱くなる。でも、――ま、まあいっか……もう今さら、だし、このタイミングでキスに戻るのも何か気まずいし、…今から余裕たっぷりに、クールにハヅキを甘くとろけさせてあげればいいだけ、…でしょ。
俺はまずハヅキの硬く粒だった乳頭を舌先でゆっくり、じっくりと円くころがしながら、もう片方は親指の腹で先端をゆっくり、じっくりと撫でてあげる。
「……ん…♡」
するとハヅキが吐息まじりのかすかな声をもらしながら、ぴく、と腰をわずかに跳ねさせる。
彼の心臓がドキドキと脈打っているのが、俺の唇によく伝わってくる。――薔薇 のいい匂い…春の神であるウワハル、つまりハヅキの匂いは薔薇の花の高潔ないい匂いなのだ。
……彼のその甘くさわやかな匂いに興奮した俺は、片方の乳頭をかるくつまんでしごき、口の中にあるほうは軽く前歯で挟んで、先端を舌先でこする。
「…ぁ、♡ …〜〜ッ♡ ……ッふ、♡ ……」
ぴくぴく、と腰をひくつかせながら細いそこをくねらせるハヅキは、俺の後ろ髪をやさしくきゅうと掴む。
するとここでかすかに聞こえてくる、ハヅキの内側に秘められたなまめかしい戸惑いの声――『嘘、どうしよう…、子宮、キュンキュン、して、…ぁ、あそこが、もう、…すごく…ぬるぬるしてる……』
「……っ」
俺はニヤけそうなのを頑張ってこらえる。
めっちゃ可愛い! 俺こそどうしようって感じ、…しかもキスより効果的だったみたい――先ほどとは違って、ハヅキは俺の愛撫に思考を乗っ取られている――。
俺は思いのほかこのほうが上手くいっていることに満足しながら、増してくる興奮のそのみなぎるやる気にまかせ、――ハヅキをもっと気持ちよくしてあげようと、――片方の乳頭をつまんで擦 り合わせながら、もう片方はちゅうーっと吸い上げてみる。
「…あぁ…っ♡ …そ…そんなに、吸わないで…くださ、…」
ハヅキは腰をくねらせながら、俺の後ろ髪と、俺の二の腕の布をきゅうっとつかむ。――『乳首吸われると、子宮がきゅーーってなる、…だめ、どうしよう…どうしよう…おかしくなりそう…、欲しくて……なかに、欲しくて、欲しくて……』
……やば、エロすぎ、――俺はさっと頭を上げてハヅキの唇をめちゃくちゃに食みながら、彼の胸板を荒々しい手つきで揉みしだく。
「ん…っふ、♡ …んん…っ♡」
かすかな甘いうめき声を鼻からもらしたハヅキの、その片手がすがるように俺のワイシャツの胸もとの布をきゅう…と握ってくる。――なんて可愛いの、…早く君を抱きたい、…早くめちゃくちゃに揺さぶっちゃいたい!
でも…押し倒すのは、まだ…我慢、我慢……。
ただハヅキは、今度は積極的に俺の唇をはみ返してくる。彼も興奮しているみたい…――『なかに、…欲しい…。おちんちんほしい…、ハルヒさんのおちんちん…、おちんちん、なかに挿れられたい…、ハルヒさんのおちんちんがなかに欲しい、…子宮いっぱい突かれたい、…そのままいっぱい中出しされたい…、欲しい…欲しい…欲しい……』
……俺はニヤけた唇を離し、至近距離、火照 った切ない薄目で俺のことを見てくるハヅキに、す…と目を細めた。
「ハヅキ、もう俺のおちんちん欲しいの…?」
「……はぁ…、…はぁ……」
ハヅキは恍惚としたその両目で俺の目を見つめながら、でも半開きの唇からはあえかな吐息ばかりで、ただこくこくと浅くうなずく。…だけかと思いきや、
「…ぅあ、…」
俺はビクッと腰を跳ねさせた。
……ハヅキが突然俺の硬く熱く膨らんだ股間を、俺のスラックスと下着越しに撫でまわしてきたせいだ。――そして彼は欲情した赤い顔で、俺の目をじっと切なげに見つめながら、
「僕の…なかに…ハルヒさんのおちんちん、もう挿れてください……」
「……えへ…」
かわいい…すっごくえっち、…でも――。
ちょっと、早すぎる…よね、…たしかに、もう俺のほうは挿れられるくらい勃起してはいるけれども、…でも、もう少しハヅキの体をほぐしてからじゃないと……。
「はは…あのねハヅキ、でもぉ…」
「……あの…」
と切り出した、顔をうす赤くしているハヅキはその艶美 な黒いまつ毛を伏せ、唾液に濡れてそのなまめかしさがより一層増したうす桃色の唇を小さく動かして、そしてはにかんだような小声でこう言った。
「でも、僕はもう…我慢、出来ません……」
「……え、…あのでもさ…今挿れちゃうのはきっとハヅキの体によくないから、…だからまだ、…」
……なんてニヤけるほど嬉しい反面、ハヅキに無理はさせたくないと眉尻を下げている俺が言っているさなか、
「――…っ!」
どさ、…と逆に、俺のほうがハヅキに押し倒されてしまった。
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