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なるほど、と僕は思うのであった。
今僕の眼球の奥、それか僕の脳内で勝手に上映されていたあの鮮明な映像、あの天 上 春 命 と天 下 春 命 の情事の映像、あれこそはおそらく間違いなくウワハルの「記憶」――。
つまりおよそ僕は今、どうも――「神の記憶」を取り戻せたらしいのである。
しかし、思うとそれを「脳裏で上映されていた」というのはいささか正しさに欠ける表現に違いない。――なぜならあれは、あたかも「追体験」であったからだ。
そう…僕は今、ただ単に映画を観るように、その映像を外側から第三者として眺めていたわけではない。
それこそ眠りながら幾度と見てきた「あの夢」のなかでの僕は――いわく、ウワハルの自我とハヅキである僕の自我とが「乖離」してしまっているせいで――ウワハルとシタハルのたわむれ合いを、外側から眺めている一観客に過ぎなかった。
が、…しかし、僕は今想起されたその記憶の中においては、決してそうした「観客」のポジションにはいなかった。
――僕は今完全に天上春命 、その神自身になり代わっていた……というよりか、そもそもウワハルとは僕であるので、なり代わっていたというよりかは記憶の中で「戻って」いたのだ。
……いわくのところ、神は自分の過去の記憶を「追体験するように」そのときの感情や感覚、過去の出来事のその全てを一つのこらず曖昧にしないまま、完璧な再現具合で想起することがかなう、という。
そのためか、僕は今ウワハルの感情ばかりか肉体の感覚、その快感さえもかなり鮮明に体験、…すなわちその過去の出来事を追体験していたのである。
なるほどこれが「神の記憶」を「思い出す」ということなのか、と僕は早速の――まさかの当日からの――大進歩に少し驚いている。
……だが、そんなことがあっていいのだろうか?
いや、もちろん僕がいっている「そんなこと」というのは、僕が天上春命 の記憶やら自我やらを取り戻すこと、ひいては僕がその男神に「戻る」こと、それらを指しているわけではない。――かえって僕は一日でも早くそれらを取り戻し、それこそシタハルであるハルヒさんと同程度の状態へまで持ち返したなり、一刻も早く彼との「統合」を果たさねばならない。
それこそはわりに深刻な話である。
そうでなければ僕たちは死ぬ――やがて消滅の末路をたどってしまう。
また僕たちのその「消滅」が意味することというのは、(我が身のことともなれば軽視したくはないが)一人の人が死ぬ、というのよりももっと深刻な、その後この地上にもたらされる可能性がある百年もの絶え間ない天災、疫病、春のない百年間…――それこそ僕が天 上 春 命 に「戻る」ということは、そうした非常に大規模な最悪の事態を何としてでも阻止するため、となかなか壮大な、かつ絶対的な必要性をもった「使命」ですらある。
するとこのあまりにも順調な、もはや拍子抜けするほど順風満帆とさえいえるこの展開は、僕にとっては非常に喜ばしいことではあった。
……ただ思うに、おそらく僕はまだ完全にはウワハルに「戻れて」いない。
というのも、僕は先ほどきっと「ハヅキの自我」で、『ハルヒさんをシタハルだと認識していた』と驚いたのだ。――それもそこからは、ハルヒさんのこともハルヒさんだとしか思えなくなった。…その瞬間を迎える直前まで「シタハル」だと認識していたその人を、である。
……これはおそらくだが、僕が完全にウワハルの自我を取り戻したなら、その認識というのもほとんど永続的なものになるのではないかと思われる。
しかしまあいずれにしても順調な進みには変わりない。初日にこうも上手くいくとは予想外であった。
が、まさかそんな壮大な、人類の平和にもかかわるほどの、かなりの必要性をともなった世界規模とさえいえる重要な使命の――僕がウワハルの自我やら記憶やらを取り戻すというのの――トリガー、きっかけ、…いうなれば僕がウワハルに「戻る」ための「有用な手立て」が、…
……僕が「感じること」――かもしれない、とは、
いやそんなことあっていいのだろうか、…なかなかシリアス味がないというか、壮大な使命と手立てのシリアス具合がどうも釣り合っていないというか、…正直馬鹿らしいといったら全くそのようである。
まあそれも今のところ仮説には違いないが、とはいえ、何かそれには信ぴょう性に足るものがあるようにも僕には思われるのだ。
たとえば僕は今ハルヒさんにポルチオでイかせてもらった。…当然オーガズムというのは快感ももっとも極まったそれだ。――そして僕はそのオーガズムを迎えたのち、ほんの何秒間かではあったにせよ、ハルヒさんを「(弟の)シタハル」と自然に認識するなど、たしかに僕が「ハヅキ の自我」で奥底に抑圧してしまっていると言われていた「ウワハル の自我」を、無意識にも表層意識へまで浮上させられていたのである。
するといよいよハルヒさんの立てたその仮説どおり、僕が天上春命 に「戻る」ためのその有用な手立てとは、ひょっとすると僕が快感を得る――性的な意味で「感じる」――ということ、なのかもしれなかった。
まあ僕はそもそもが性欲の強い男、それもそれに関する好奇心も人並み以上の男である。そうであったとしても僕にとってそれは決して苦痛ではない。
……だが、これまでにもさんざっぱら(ほぼ毎晩)オナニーにいそしんできた僕が、今の今に「快感で記憶を取り戻す」とは何か疑問も残るが…――。
まあいずれにしても、…まさか取り戻せた「記憶」の(夢を除いた)一発目がこんなどエロイ記憶だとは思わなんだ、…――なるほど、僕はやっぱり早急に「神の記憶」をどんどん取り戻さなければならない。
なぜって、
これは活かせる、絶対に活かせるからだ…――っ!
――漫画に……っ!!
「いやー何という趣 味 と 実 益 を 兼 ね た 一 石 二 鳥 ! これはとんでもラッキーインスピレー…ッ!」
「ね…、感動してるとこごめんねハヅキ…?」
とハルヒさんがちょっと申し訳なさそうに僕の興奮を遮る。
そして彼はもにょもにょと言いにくそうに、赤面した顔に弱々しい困り笑顔を浮かべて、何か恥ずかしそうにこう言うのだ。
「でもさぁ…? ぁ、あのね…実は俺、…今、俺もその…ほら、俺と君とは魂で繋がってる、から…、その、だからお、俺も今、…ぁもちろんシタハル目線で、だけど、…あの、今君とおんなじ記憶を思い出してた、から、…実 は も う 一 回 出 ち ゃ っ た ……んだ、けど、…」
「……んぇ…?」
出 ち ゃ っ た …? ――ああいや。
さすがにハルヒさんが言っていることの意味くらいわかる。…たしかに僕もあの記憶を追体験しているとき、そのときのウワハルの快感、もっといえば、その男神の絶頂をまるで自分の身に起こっていることそれそのもののように(追)体験していた(ただしある意味では目が覚めた今の僕にはその絶頂の余韻はない)。
そして、彼もあの記憶を「シタハル目線で」追体験していたというのなら、たしかにシタハルは最後に射精でフィニッシュしていた以上、…そりゃあハルヒさんだって当然「出る」に決まっている――ただどうやらいつの間にかなかに出されていたらしい僕には、(記憶に気を取られていたせいか)いまいちその実感たるものはないのだが――。
ハルヒさんはへらぁ…と眉尻の下がった、気恥ずかしそうな笑みをうかべる。
「でも、…あれで余計興奮したのもあって、俺今、じつはまだ全然おさまってないの…。…ね、だから――も、もぅ続き、したいんだけど……」
「ああ。あの、…でもすみません、メモだけしていっすか」
こんなに素晴らしいインスピレーションをうっかり忘れてしまってはBL漫画家として一生後悔することに…などと僕は思ったのだが……。
「だめ…、ねぇ俺、もう大分待ってあげたでしょ…、……」
少し泣きそうなほど切羽詰まったようにムッとしたハルヒさんは、僕に覆いかぶさりながら――またキスをしてきた。
「……ん」
ハルヒさんのやわらかい唇がはむはむと僕の唇を斜めから食んでくる――そのさなか、彼はぬちぬちぬち、とテンポよく腰を動かしはじめ、すると当然僕の子宮口あたりの性感帯も、やさしくも彼の亀頭にトントントンと突かれはじめる。
「……んん、♡ ん…っ♡ ん…っ♡ ん…っ♡」
僕はハルヒさんのワイシャツの胸もとをきゅうとつかむ。…たちまち否応なしに僕の意識の「切り替え」が起こる。…BL漫画家『つきよ春霞 』からハルヒさんの夫『天春 春月 』へと……。
自分じゃ触れた試しもない奥のほうをやさしくとんとんされると、体の力が抜けて…――頭…ぼーっとしてくる…――当然なのかもしれないが、やっぱりオナニーとは全然違うな……。
……いくら幾度となく「攻め」に抱かれている体 でのオナニーをしていても――まあそれはアナルでのオナニーだったが――、知らなかった…、実際の好きな人とのえっちとはこうも……。
「…ん…♡ んぁ…♡ ぁ…♡ ぁ…♡ ぁ…♡」
こうも……理性の入り込む隙がない、というか…、頭がぼやーっとする、というか…――もう自分の全部をあげちゃいたい、もう全部彼にまかせてしまいたい、もう煮るなり焼くなり好きにして、貴方の好きなように好きなだけ僕をめちゃくちゃにして…――意識ばかりか体にも力が入らない。というよりか、力を入れようと思えば可能だが(抵抗しようと思えばできるが)、それを入れる気がさらさら起こらない、そんな抵抗の気力がまったく湧いてこない。
身も心もとろかされる幸福な快楽ゆえの無抵抗、こんなに髪の先までとろけているように快 い…――僕はほとんど無意識にハルヒさんのうなじに両腕をかけていた。
彼はやさしいが鋭く細められた両目で、その銀色の長いまつ毛に縁 どられたなかの、僕の目と至近距離にあるその火照った暗い真紅の瞳でじいっと、僕の目を見つめてくる。
「可愛い…綺麗だよ、ハヅキ……」
「…あぁ…は、ハルヒさん…♡ ぁ…♡ ぁ…♡ ハルヒさ…♡ 気もちいい、…です…♡」
僕はそれが嬉しくて笑った。
彼のそのとろけそうなほどやさしいが、欲情した男の鋭さを帯びたなまめかしい両目が、ただじっと僕の目だけを見つめてくれているというのが――好きな人のその欲情の対象はまちがいなく僕だけであり、彼からのそのやさしい愛情を注がれているのもまちがいなく僕だけである、というのが――嬉しくてたまらず、とにかく幸せで幸せで、そして気持ちよくてたまらなかった。
憧れてきたハルヒさんのその両目が、その人の勃起した陰茎が、僕の恋心をたっぷりと蜜で濡らしてゆくのだ。
「ぁ…♡ ぁ…♡ 好き…♡ 好きです、ハルヒさん…♡」
「ほんとかわい…」――そう嬉しそうに言いながらハルヒさんは腕を立て、僕の顔を愛おしそうに眺めおろす。
「ハヅキの顔、とろとろになっちゃってるね…、ほんとにかわいいよ……」
「……、…」
ふと僕の手の甲が無意識に自分の眉に触れる。
……僕はまだ自分の顔に自信がないせいで、習性にも近くつい顔を隠そうとしてしまったのだ。
しかしハルヒさんは「だぁめ…」と妖しく微笑むと、僕のその手首を両方やさしく取り、僕の耳の横に押し付ける。
「…ハヅキは綺麗な顔してるんだから隠すことないでしょ…。隠しちゃだめ。だって俺、君が感じてる顔しっかり見たいもん……」
「……それも、そう…あの、自信がないのもそうなんですが、…その…僕、――正直、は、恥ずかしい、んです…、……」
……そうだった。僕ははたと思い出した。
僕は耐えきれなくなり、顔を斜め下へ伏せながら目も伏せた。
「…す、好きな人に…自分のいやらしい顔を見られてしまうの、…とても、恥ずかしいから……」
僕は今――ともすれば自分でさえ認知していない――本音をしか口にできない「呪い」をかけられているのだった。…ハルヒさんがかけたその「呪い」は余計に僕の羞恥心を増幅させ、僕の耳や顔やを熱くさせる。
だのに、…
「恥ずかしいって…?」
とハルヒさんに聞かれると、僕の口は止まらない。
「だって…初めて、なんです…。誰かと…えっち、するのは…――すると、どっどんな顔をしたらいいのか、…もしかすると、無意識に変な顔をしているかもしれないし…、貴方を、がっかりさせてしまうかもしれないし…、自分の感じている顔なんて、さすがに見たことありませんから…――と、とにかく恥ずかしいんです、…ましてやこの体位、…顔…容易に見えちゃうし…――だから…できたらその、あ、あんまり…僕の顔は、あんまり見ないでください……」
僕の顔も耳もきっと今は真っ赤に染まっている。
もしかすると、興奮した自分の性器を見られるよりも、興奮した自分の顔をハルヒさんに見られるということのほうが、僕は恥ずかしいのかもしれなかった。
――とはいえ、僕もまさかハルヒさんが、僕の最中の顔を「変な顔してるよ」だのと揶揄 するような人であるとは少しも思わないが、…それどころかかえって彼は先ほどからのように、僕のその顔を「綺麗だ」とか「可愛い」だとかと甘く褒めてくれるばかりである、との予測はつくが、…しかし、それとこれとはまた別の話なのである。
……これは好きな人の前ではなるべく少しでも美しくいたい、…いや美しくというか、僕の場合はなるべくハルヒさんの前ではきちんとしていたい、少しでも彼にがっかりされない清潔な状態でいたい――醜いというか、汚い状態の自分を彼にだけは見せたくない――という僕の恋心の、およそ自分の中ではじまり自分の中で終わるような恥じらいなのである。
しかしハルヒさんは、僕の両手首をベッドに押し付けたまま、
「…可愛い。めっちゃ可愛い…、やばい。可愛すぎる……」
ぼそぼそとそう言って、にわかに、興奮気味に力強く速く動きはじめる。
「…ぁ、?♡ ぁん…っ♡ ……っ」
あん、…僕はいよいよそれらしい自分の嬌声におどろいた。…これは我ながら、オナニーしていたときのそれよりも深く上ずっていて甘い――あたかも惚れ込んだ好きな人に抱かれている者の、自分の身も心もをその人にならと許し、自分のすべてをその人になされるがまま委 ねて、そうして完全なる無抵抗を――抱かれる、ということを――自ずから選んだ者のか弱い嬌声だ、…と、僕は直感、あるいは本能で理解した。
……だのに、その声をハルヒさんにどう思われているのかが気がかりで、
「……ッ♡ ……ん、♡ ……ッ♡」
声を我慢してしまうのだ。
……いよいよ僕はBLの受 け ら し い メンタルを自分の中に感じている。しかし今はそれにどう思うか、なんて考える余裕もない――奥を激しくぐちゅぐちゅと突かれているのだ――僕はぎゅっと目をつむり、眉をひそめ、顔を反対へころんっと向けた。
「……んん、♡ …ッ♡」
「声も我慢しちゃだめー…、……」
そう言いながらハルヒさんは僕の両手首を持ったまま後ろへ引き、そうして僕の腕をぐうっと引っぱりながら、ばちゅばちゅとより猛烈に腰を振る。
すると余計、奥も深いところまで強くズンズンと突かれるようだった。
「んっんぁ…っ!♡ …っ!♡ ンっ…!♡」
声を押し殺すなか、しかし激しく次々と迫ってくる彼が与えるその猛烈な快感は、僕を息ぐるしくさせる。――僕はなかばあきらめた。
「ふ、ンぁ…っあぁ…!♡♡ だめ、っ声、♡ 声もはっ恥ずかしい、♡♡ ぁッ♡ んんっ…♡ 恥ずかしいんです、♡ ハルヒさんに、っ聞かれたくな、♡」
「へへ、かわい…、すごくかわいい声だけど、…でも、そういうハヅキのえっちな恥ずかしい声を夫の俺だけに聞かせるって約束が結婚、…で、それが夫夫のえっちってものでしょ…?」
「んっ♡ ぇ、…ふ、♡ ……」
まあ、…確かにそうか、…
だが、ふたたび差し迫る絶頂に強ばった僕の腰の裏が浮く。それも、もはや肩甲骨のあたりしかベッドに着いていないほど腰が上がっている僕の上体は、しかしなおもハルヒさんに激しく縦に揺さぶられている。
「あぁ…っ♡ あ、♡ あ、♡ あ、♡」
「君のそのえっちな声も…君の気持ちよさそうなそのえっちな顔も…もうぜーんぶ夫の俺だけのものなんだから、出し惜しみしちゃやだ…――ハヅキのその色っぽい姿と声は、夫の俺だけが聞きたいときに聞いて、夫の俺だけが見たいときに見ていいもんなの…」
「……〜〜〜ッ♡♡♡」
どうしてか、…そう「俺だけのもの」と、やたら「俺だけのもの」と彼にくり返されると、僕の子宮や膣内やにきゅんきゅんと切ない快感が生じる。
するとよりわかる、愛する人のこれはなんて硬いんだろう、なんて太いんだろう、なんて大きいんだろう、…ハルヒさんが僕の片手を、――その手のひらを、僕のへその下、その下腹部に宛てがわせる。
僕の手の甲には自分の熱くなった陰茎が乗ってもいるが、なにより、その下腹部の皮膚と筋肉の下には、今もなお彼のものにズンズンと突かれている自分の子宮がある。
「ほら…ハヅキの奥の奥まで俺のが届いてんのわかる…? 俺今、ハヅキのなかのこんな奥まで入ってるんだよ…――ふふ…ね。君のここも、もう全部俺だけのものだからね…、わかった……?」
「……ぁ…♡ ぁ、あ…♡ ぁうぅ…〜〜っ♡」
――こんな、ところまで、…ハルヒさんが……。
僕のこんな奥底まで、もう全部ハルヒさんだけのもの、…すると、きっと先ほど僕が飲み込んだ彼の熱い血が、また僕の子宮に絡みついて甘く束縛してくる。
「ッはぁ、♡ ィ、…ンっ…――っ♡♡♡」
僕の下腹部がぐっと上がり、ビクッ…ビクンッと痙攣する。
ビクンッと奥まり、正されてもまたビクンッと奥まり、…その子宮まわりのツーンとした絶頂の快感は、またじゅわー…と僕の細胞に熱く染みわたりながら範囲をひろげてゆく。――ハルヒさんは「綺麗だね…」と微笑したささやき声で言うなり、僕の前を完全にあけたワイシャツの布を取りはらい、僕のひらたい両胸を、僕のつんっと勃起しっぱなしの乳首を、さわさわと撫でまわしてくる。
「……ぁ…♡ ぁ、♡」
……僕はぎゅっと目をつむりながら、あちこちをピクンッピクンッと弱々しく跳ねさせるほか、もうどうしようもない。
「イッてる姿もすごーく綺麗…。それに…ハヅキは体もほんとうに綺麗だね…、はぁやば、…こんな最高の美人が俺の旦那さんかぁ…――」
……彼はそうちょっと上ずったかすれ声で言いながら、ふと僕の胸元から手を引く。
「ハヅキの〝初めての人〟は俺だし、これからも俺だけが君とキスできて、もちろんえっちも…、俺だけがこんなに綺麗な肌に何度でも触れてよくて……、これから俺は何度も何度もハヅキのえっちな姿を見て、聞いて…俺だけはそういうの全部許されるのに、他の奴らは絶対そんなの許されないわけでしょ…? あはは、それめっちゃ最高ー…。…こんなに美しい君の全部が、もう俺だけのもんだなんて…――へへ、ほんと興奮しちゃう、…」
「……、…」
僕は自分の火照っている頬を感じながら、薄目を開けてハルヒさんを見た。…彼は上に着ているワイシャツのボタンを、もう自分の下腹部あたりまで開けおわっていた。――僕はドキドキしながら、そのワイシャツのすき間から覗く彼のあめ色の肌を盗み見ている。
ハルヒさんも白い勾玉とロイヤルブルームーンストーンのペンダントをつけている。それがまた何ともセクシー、…うわ…てか胸筋こんなにふくらんでる……腹筋も、あからさまに割れて……。
目をそらしたい気持ちなかば、…
「……、…、…」
見てしまいたいきもち、…なかば……。
ちなみにハルヒさんは、ファンの前で上裸になるほどオープンなタイプの歌手ではない。――まあわりかし配信やライブ映像なんかでは、その鍛えられた厚い筋肉を想像させるタンクトップなど、うすい生地の衣装を着ていることも多いが(腕の筋肉くらいならさらしていることもままあるが)、…といって今の時代のコンプラ上なのか何なのか、いずれにしても彼はファンの前で上裸になったことなど一度もなかった。
つまり僕は初めて推しの、…好きな人の、あらわな肌を見ているわけだ。
ガバリと大胆な動きで白いワイシャツを脱いだハルヒさんの、…あぁ乳首、…あめ色の肌によく似合う焦げ茶の小さい乳首、――僕はあまりの衝撃に目を見開き、緊張から膣内をきゅーーっと締めてしまいながら、ドクドクと波打っている自分の胸の中央に片手の指先をあてた。
「――…っ!」
――なんて完璧な筋骨隆々の肉体…!
決して太いわけではないのだが、この骨というより筋、この筋肉、このなめらかな艶のあるあめ色の肌、このくっきりとした鎖骨、この筋肉の丸みのある肩、この筋肉の浮きでた二の腕、このふっくらとした胸筋、この焦げ茶の小さい乳首、このゴツゴツと六つに割れた腹筋、この腰骨まわりの鍛えられた筋、
この美しい彫刻のような男の完璧な肉体を「格好良い」と思わずして、もはや何をそう思ったらよいのやら…――。
「……、…、…」
思わず呼吸もわすれた僕が顔を熱くさせながら、自分の体に見入っていることに気がついたハルヒさんは、「ん?」とその銀色のまつ毛を鋭く細めて僕にほほ笑みかける。
「…めっちゃ格好良いって思ってくれてるー。えへへ、ありがと…、俺鍛えててよかったぁ…――でも…俺のこの体ももう、夫のハヅキだけのものなんだよ…? 嬉しいでしょ…」
「……、…、…」
そりゃあ…嬉しくない、なんてそれは嘘になるが、とコクコク何も言えずにうなずく僕である。
ゴクンと僕の喉が鳴った。――僕はハルヒさんのたくましい肉体を目の前に、今さらかなり強く彼の「男」を認識した。
ハルヒさんはやっぱり男なのだと、普段はふわふわと可愛い彼もまちがいなく男性なのだと、…いや我ながら変な話である。そんなのはあくまでも当然のことなのだが、…しかし何というか、僕は今彼のその男性としての「性的な魅力」を、――その男のフェロモンのようなものを、――いよいよ今にかなり色濃く浴びせられているような感じなのである。
すると僕は、やたら今(今さら)ハルヒさんを男性として強く意識している状態、というか…――改めて惚れ直した、というか…――とにかくドキドキと緊張してしまう。
ひょっとして、メ ロ い 、とはこういうのをいうのか……?
「かわい…、もっと気持ちよくしてあげるね……?」
と妖しくほほ笑んだハルヒさんは、僕の腰を掴んで持ち上げ――僕の上体をガクガク揺さぶるようにして、
「あっ…?!♡ …あっ、♡ …あっ、♡ …あっ、♡」
……身も心もハルヒさんに惚れ込んでしまっている、僕の奥を男らしい力強さで突き上げてくるのだ。
しかし僕は余計(推しの爆イケが眩 しすぎるせいで)ハルヒさんが見られず、いよいよ顔に両腕を重ねた。
「…あぁ、♡ …あんっ…!♡ んん、♡ …んぅぅ、〜〜っ♡♡」
も、だめ、――ど、どうにかなりそうだ、…
「…ねー顔隠しちゃだめって言ってんじゃん…、もう、…これはお 仕 置 き だね……」
「は、♡ …ッ♡ ぇ、…え…っ?」
お、…お仕置、き…――?
どうしてかその単語に子宮をキュン♡ とさせてしまった僕である。
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