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「……はぁ…、…はぁ……」  斜め下へ伏せられたウワハルのうつろな顔、その長い黒のまつげが、枕上に置かれた行灯のぼやけた灯火にあわく照らされて、よりその艶のある火照りが際だっている。――『恐ろしい熱波が押し寄せてきている…』と兄は心のなかで独りごちるのだった。 「……はぁ、………」  そのとろんとしたツリ目がきゅっと難しそうにつむられる。――『頭の中が…ぼやぁと熱い霧で満たされて、体のどこもかしこもが火照っている…。指先まで震え、体のどこにも力が入らない……、恐ろしい…、恐ろしい…。僕の〝桜の実(乳首)〟が、僕の〝玉茎(陰茎)〟が、僕の〝秘め宮(子宮)〟が、何もされていない今でさえ腰が跳ねてしまいそうなほど、おそろしくうずいている……ああ、媚薬なんて飲むんじゃなかった…、…ああ…、〝桜の実〟や〝玉門(膣口)〟に、媚薬なんて塗るんじゃなかった……』 「……へぇ…?」  ウワハルときたら、催淫(さいいん)効果がある媚薬を服用してしまったばかりか――おそらく感度を高めるような塗り薬系の媚薬まで、乳首や膣口に塗ってしまったらしい。…どうりでさっき、浴衣のうえから胸を撫でただけでビクンッとしたわけだ。  ……ちなみに床入りの今回ばかりは、俺たちは陰茎にあんまり触れてはならない、と言いつけられている。――それはなぜかって、もちろん「統合」や神氣補給を成功させるためだ。  となれば俺はもちろんウワハルのなかで射精をし、彼の体内に自分の神氣を注ぎこまなきゃいけないし――兄は兄で、それを陰茎から放出してしまうのではなく、あくまでも体内に俺の神氣と融合するべき自分の神氣をため込んでおく必要がある。  ましてや俺たちはこの半年間、寸止めの自慰で(各々それなりに苦労して)神氣をため込んでいるというのに、そのせっかくの神氣をうっかり「無駄打ち」してしまってはあんまりでしょう。  それで、今度ばかりは極力(愛撫の段階での)陰茎への刺激を控えるよう、俺たちは大お父様と大お母様に言いつけられていたのだった。  ――だからウワハルも、その塗り薬を陰茎には塗らなかったのだろう。 「……ふふ…、ウエ、まぁ楽にしててよ…、俺に全部任せて……?」  俺はそう優しい――けれども勝ち誇った――声で言いながら、ウワハルのその白い浴衣の、青紫の衿をそぉ…とやさしく、ゆっくりとわり開こうとする。が、 「……っ! は、…い…いや、…まだ……」  やっぱりそれを吐息っぽいあえかな声で嫌がるウワハルは、泣きそうな細目で俺を見上げながら、力ない熱い手のひらで俺のその手首を包みこむ、…いや、今の兄なりに「掴んで止めた」つもりなのだ。  ……俺はウワハルの耳のそばに片方の肘を着き、兄のその弱々しいうす赤い顔に顔を寄せた。 「可愛いなぁウエは…、まだ恥ずかしいの……?」 「…ち…ちがう…、はぁ…この、…無礼者……」  そんなはぁはぁしたか細い声で、そんな完全な負けを察したくやしそうな涙目で「無礼者」だなんて言われても…――俺の口角が思いっきり上がってしまうだけ。…ぜーんぜん怖くない。むしろ優越感という快楽が俺の体をぞくぞくと悦ばせたくらいだ。  ……俺の心を聞いた兄が、その潤んだツリ目でキッと、いまや迫力など皆無にも俺を睨みつけてくる。 「……はぁ、…調子に、…乗るなよ…シタ……」 「…ふふふ…っ、…え〜〜…?」  どうしてやろう? この弱りきった高慢ちきをどう(なぶ)ってやろう?  ……なんてね。――あんまり意地悪しすぎると、終わったあと根に持たれそうだし、…ちょっといじめるにしてもほどほどにしてあげるつもり。 「……っ、や…」――するとウワハルが泣きそうに目を細めて、俺の目をじいっと見つめてくる。 「や…優しく、してよ、…意地悪なんて嫌だ、…は、初めてなんだから…、…僕は君に、優しく抱かれたいの……」 「……、…」  ん〜〜〜…――ちょっと可愛すぎるかも。  ……俺は「へへ…」ととろかされて笑い、ウワハルのその浴衣の上からウワハルのわき腹やあばらあたりを、やさーしく撫でまわす。 「……ッぁ、♡」  ビクンッ…――するとウワハルの顔がゆがみ、彼の腰が大きく跳ねながら少し浮いた。 「……、…はは……」  俺は驚いて一拍、目をまんまるにしてきょとんとしてしまったが、すぐ愉快な気分になって笑った。  ――だって俺は今ただ浴衣の上から、兄のわき腹やあばらやをやさしく撫でまわしただけだったのだ。 「……すごい…ウエ、めっちゃ可愛い…、……」  俺は斜めからウワハルの半開きの唇を食む。  はむ…とそのぷるんと潤んだウワハルの唇をあさくついばむように食み、はむ…はむ…とゆっくり…じっくりと食みつづける。――はぁ…と薔薇のかおりの湿った吐息が俺の口の中に入りこみ、でもそのしっとりとした熱い唇は、はむ…はむと俺の唇を力なく食みかえしてくる。  次第に彼の唇を食む範囲をひろげてゆきながら、俺はウワハルの平たい片胸を――さらさらとした浴衣の上から――手のひらで包みこんだ。…ツンと俺の手のひらに浅くやわくつき刺さる兄の乳頭の感触に、俺はぞくぞくと興奮をおぼえる。 「……ん、♡」  兄の喉の奥からかすかな上ずった声がもれる。俺がウワハルの上下の唇を舌でにゅるー…と撫でながら、彼の口内にそれを挿入しただけで。――俺は兄の胸を撫でまわしながら、斜めからあわせている唇を少し強く押しつけた。  ウワハルの口内が熱い。ほのかに甘いさらさらとした唾液の池のなか、くつろぎきって極やわらかい彼の舌の裏の、その奥まった端から端までを舌先でねっとりと往復する。――すると兄の舌が応戦したがり、くねりながら俺の舌におそるおそると(のろ)く、にゅる…にゅく…と絡みついてくる。  ……好機かも。俺はわざとむさぼるように激しく強く兄の唇を食みながら、 「……っんん…!♡ …ん、♡」  ウワハルのその鈍い舌をすさまじい獣の勢いでもって圧倒し、その甘露の池にひたる舌を、裏から根こそぎくちゅくちゅと撹拌(かくはん)、たちまち翻弄する――俺はウワハルをこんなにも欲している、こんなにも強く強く欲している、とその俺のしたたかな衝動とたくましい欲望とを、兄に否が応でも押しつけてわからせるために――。 「……んっ…!♡ んふ…っ♡ ッんん、♡」  ウワハルは俺のこの力押しには滅法敵わない。  ただされるがまま、もはやどう返せばよいのかもわからないまま、なんとなし同じように舌を根からまわし、なんとなし唇をはむはむと開閉してみてはいるが、そのやわい丸腰の唇や舌やのひ弱な動きには冴えがなく、俺の唇と舌とが起こす内乱の嵐の激しさに一方的に打たれ、俺のもたらす豪雨に一方的に濡らされてゆくばかりで、まったく相手になっていない。――今や俺と兄とが鍛練で手合わせをしたってきっとこうだけど。  ……ウワハルは自分の唇や口内や舌やをぐちゅぐちゅと激しくかき乱す、俺の荒くれものな唇や舌やの動きにすっかり気を取られている。――だから俺はそのうちにさりげなく、衿もとから兄の胸に直に触れた。 「ンっ…!♡ っンぅ、♡」  いや、いや、とウワハルが身をよじり、俺の手首をやわらかくつかむ。――でも俺はその熱くなったハリのある胸板、手にしっとりと吸いついてくるそのなめらかな肌の下の筋肉を、手のひらを波うたせるようにして揉む。…ともになんとなし揉まれる兄の乳首は今や極限というほど勃ち、乳輪はざらりとしわが寄って凝縮し、乳頭は小豆(あずき)のようにぷっくりと粒だってほの硬くなっている。  ビクッ…ビクンッ、ビクンッ…とウワハルの体がときどき跳ねる。――俺はどさくさにまぎれて、手の甲でその衿もとを押しやる。つまり開いてやる。  唾液に濡れたウワハルの唇をにゅるんにゅるんと大きな動きで食みながら、俺は彼の乳頭をつまんでくりくりと指の腹のあいだでこすり合わせる。 「む…ッぅ、♡ ッゃ…んっ…!♡」  ただ、…ウワハルはなけなしの力で、自分の衿をぎゅうっと掴んで引きよせた。  ……は、…と唇を離すと、兄は弱々しい真っ赤な顔で俺をキッとにらんだ。 「まっ…まだ…はぁ…、まだ、嫌……」 「…はー…、まだ嫌まだ嫌って、ねぇ、じゃあいつになったらいいの…?」  俺の焦れた――なかば呆れた――この質問には、 「い、いつって、なら…せめて……」  とウワハルがふとその長いまつ毛を恥ずかしそうに、その羞恥に苦しそうに伏せる。 「灯火を…消して……、見られたくないんだ……」 「…何を…? なんで?」  見られたくないって?  (あか)りを消すなんてやだ。俺は見たいんだもん。  だって、いくら小さな頃からウワハルの裸は見てきたとはいえ、この褥の上に寝かされた兄の裸はまたとびきり格別なものにちがいないし――この褥の上でしか見られないだろうウワハルの色っぽい顔もそう。  火を消した暗闇のなかでウワハルを「感じる」ことしかできないなんて、俺にとってそんな残念なことはない。 「……でも、ぃ…いやらしい…顔を、君に見られたくない…。か、体も……欲情した、僕の体を…君に、見られたくないのだ……」 「……、…」  ……なんかさぁ…――この潔癖。  ちょっと可愛い。…でも正直ちょっと面倒くさくもある。  ウワハルは、はぁはぁとしているくせに俺をギロリと睨んだ。 「面倒くさいだと、…はぁ…君、…君のようなけだものにはわからないんだろうが、…」 「……はぁ…、でも、いいの…、ほんとうに…? もう知らないから…、……」  ウワハルの衿もとをつかむ両手首をつかんだ俺は、その二つを布団に押し付けた。そして、白い浴衣の平坦なその胸にわかりやすくうかんだ粒の片方を口に含む。 「んっ…♡ …やめっ…ぁ、♡」  布越しに舌先で舐めまわし、もう片方も布越しに先端をカリカリと爪先で引っかく。「あっ♡ あっ…♡ やだ、やっ…♡」――するとウワハルはビクッ…ビクッと体を跳ねさせ、身をよじるにも快感に反応してしまうせいで小さくしかそうできない。  ……俺はわざとたっぷりの唾液で兄の白い浴衣を濡らす。ぢゅーーっと吸ってやる。 「…ふぁ…っ!♡♡ 〜〜〜ッ♡♡」  するとウワハルの腰の裏がくんっと浮き――自然と胸板は突き出され――ビクビクビクッとその細身が小きざみに弾む。…なんて可愛い反応だろう?  ……ここらへんで口に含む乳首をもう片方に変える。…たっぷり唾液を絡みつかせるように舌先で舐めまわす。ぬるぬるとよく濡れているほうは、やっぱりカリカリと軽く引っかいてやる。 「……ぁ、♡ ぁ、♡ やだっや…やだ、シタ、♡ シタ、♡ だめ、だめ…っ♡ 変になっちゃう、♡」 「……、…」  変になっちゃうって……それで制止してるつもり?  そんなのかえって俺をそそらせるだけなのに。…なんならそう言われると、余計意地悪したくなっちゃうのはなんでなんだろ?  ……俺はおもむろに唇を離した。つーーと糸を引かせながら…――濡れた白い布に透けている真っ赤に熟れた兄の乳首と、自分の唇とのあいだに。  俺は腕を立ててニヤニヤと、しげしげと兄の淫らな胸もとを眺めおろす。…媚薬のせいか、その真っ赤に染まってぴんと乳頭を粒だたせた小さい乳首の周辺ばかり、俺の唾液に濡れてすけている。  ――このほうが脱ぐよりよっぽど淫靡(いんび)な眺めなのに、よかったのかなー…? 「……っ!? っは、――ッ」  ウワハルが乙女のように自分の胸もとを両手で隠し、俺のことを涙目でキッと睨みあげてくる。 「こっ…この、このけだもの、…」 「…はいはい、もういーよけだもので…。で、どうすんの…、ウエが恥ずかしいなら脱がせてあげるけど…?」 「…〜〜〜っ」  ウワハルは今にも泣き出しそうに、くやしそうに真っ赤な顔をしかめた。 「退け、」と言うので、俺ははいはいと後ろに腰を引き、座った。  するとウワハルもよろよろと身を起こし、うつむいて自分の胸もとを確認するなり、羞恥――というより兄にとっては恥辱――からそのツリ目でまた対面の犯人、つまり俺を睨みつけてくる。  ……俺は構わず得意げな笑みを顔にうかべ、ウワハルの耳もとに唇を寄せようとしたが、…ぺち…とあんまりにも威力のない平手に頬をうたれる。 「…っこんな侮辱、…はぁ、…シタ、ぼ、僕は別に、もう、…っもうやめたっていいんだからな、…」 「…はは…、痛くもかゆくもない…、……」  と、でも俺は余裕たっぷりにかわし、あらためてウワハルの耳に唇を寄せた。 「やめるって…ウエ、媚薬飲んじゃったのに…? やめたらきっと…ものすごく辛いよ……?」 「……ん、♡ ……ッ」  ぴく、とウワハルが肩をわずかに揺らす。  俺はウワハルの首筋を手のひらで抱きよせ、彼の熱くなった耳に唇を押し付ける。 「ほんとうにやめちゃっていーの…?」 「ぅ、♡ ……、…ゃ……」  ウワハルはふるふる、と小さく首を横に振る。 「じゃあ〝やめないで〟でしょ…?」 「……、…、…」  むっつりと黙り込んだウワハルの耳をぺろーっと舐めあげる。 「んぁぁ……♡ ぁ…はぁ、」  すると気の抜けた甘い声をあげ、ぞくぞくぞく…と肩を小きざみに震わせたウワハルは、俺が「〝やめないでシタ〟は…?」とささやくと、 「っ…! だ、誰がそんなこと、…」  と顔をそむけ、やっぱり素直にならない。  でも、今優位なのは明らかに俺のほう。 「ふふ…ねぇウエ…、そうやってわざわざ頑張って抵抗しないでさ…、媚薬にとろとろにとろかされるまま大人しく俺に身をまかせてくれたら、う〜んと優しく抱いてあげるって…。…ほんとだよ…?」 「…はっ…!♡ ぅ、…〜〜ッ♡」  すると兄はそれだけでもぞくぞくぞく…と体をわななかせた。「俺に優しくしてほしいんでしょ…?」と俺は低い声でささやきながら、ウワハルの浴衣の衿もとを再度くつろげようと…――いや、…くつろげられた。…そこを掴んでいる彼の手からは抵抗する力がなくなり、する…とその手のなかからは衿が抜けて、やっと…。  ……ふと見下ろす――乱れた青紫の衿もとの谷のあいだ、あわいあわい薄もも色に染まった兄の、それでも輝くように真っ白な胸板、その胸板に映える紅い小さい乳首はツンと粒だっていてなまめかしい。 「…すっごい……」  官能的…――なんか、頭にガツンとくる。なんて、俺は生つばをゴクンと飲み込んだ。 「……、…、…」  ウワハルはうつむいて泣きそうになりながら、カタカタと震えている手でその衿を引き寄せ、胸を隠そうとした。でも俺はその手を押さえる。 「隠しちゃだめ…」と。 「……、やっぱ…めっちゃ綺麗……」  俺、どうして昔はウワハルの裸になんとも思わなかったんだろう?  我ながら信じられない。…俺の運命られた夫の体はほんとうに美しかった。絵に描いたように極めて端麗(たんれい)なのだ。それでいてとても艶めかしい。――こんなにそそられる美しい体、他にあるはずがない、なんて確信は、同時に俺を誇らしくもする。  ……だってこの天上春命(アメノウワハルノミコト)という至高の美神は、この(うるわ)しい体もふくめて全部もう俺だけのものになったのだ。ついさっき。 「……、…、…」  ウワハルは斜へ真っ赤になった顔を伏せ、カタカタと羞恥に震えながら、すっかり威勢を――虚勢さえ――失っている。  ……俺はウワハルのはだけた衿もとを撫でるように、するーとそれを彼の二の腕まで脱がしてゆく。そうしてあらわになった白い肩、引き締まった二の腕を見たとたん、俺はいよいよまたたまらなくなって、ウワハルの首筋にむしゃぶりついていた。 「…んっ…♡ し、シタ、? ぁ…♡ ん、…ねぇ、お願い、…も、もう…――」  そうして驚いたようなウワハルは次に、震えた小さな小さな声で、こう言う。 「…もう、…わかった…、き、君のす…好きにして、いい…から、……だから、や…優しく…――せめて…やさしく、して……」 「……、可愛すぎる……」  泣きそうになってる兄が、可愛すぎる。  ……なんだろこの優越感――絶対。絶対、俺以外にはこうやって泣きそうになりながら「優しくして…」なんて言いやしないウワハルが、あの自惚れ屋で高飛車なウワハルが…――、  こうやって俺に骨っぽい鎖骨をなめしゃぶられ、ハリをもった乳頭をピンピンと指の側面ではじかれて――、 「ぁ…っ♡ ぁう、♡ ぅぅ、♡ シタぁ、こ、怖いの…、初めてだから…、だから、ぉ、襲わないで……お願い、……」  ……弱々しーーく「お願い、怖いの…」なんて甘ったるく言っちゃうわけ。  頑張りはするけどちょっと無理かも。だって可愛すぎるんだもん。  俺はウワハルの紅い乳首に吸いついた。舌先でめちゃめちゃにはじき、もう片方はくりくりと指の腹で揉みしだく。 「あっ…!♡ ぁ、♡ やっ…し、シタ、ぁ、♡ ぁん、♡ ひ、うぅ、っや、優しく、…優しくして、おねが、…」  ビクビクとしながら、聞いたこともないような切羽詰まったなまめかしい声でそうこぼすウワハル――やさしくかー……俺は努めて唇をすべらせ、ちゅっちゅと兄のなめらかな胸板に口づける。  ちゅ、ちゅ…ちろ、ちろと兄の胸板を愛撫する俺の唇と舌はみぞおちあたりへ進みながら、そろそろ浴衣の褄下から手を忍びこませ、やわらかい細っこい内ももを撫でる。…ざわわ…とあちこちの極上の肌を粟立たせる彼の、その唇からは「ぁ…♡ ぁぁ……♡」と上ずったかすれ声がもれでている。 「ん…♡ し、シタ……」  と俺の名を上ずった小声で呼んだウワハルは、もっと声を忍ばせてこう言う。 「…お願い、灯火を…消して……、お願い……」 「……、やだ。…」  それだけはやだ。と俺はウワハルの硬い腹筋の上で短く、確固に主張した。  するとウワハルは消え入りそうな湿り声で、 「お、お願い…、恥ずかしい……」  なんて、…めっちゃ、 「……、…」  めっちゃかわいー!! 俺の(高慢ちきな)兄ってこんなに可愛かったっけ、ってくらいかわいいー!!  でも普段高飛車なウワハルにそう下手(したて)に出られると、やたらいじめたくなる。  ……ぐいっとウワハルの膝を押し開く。 「いやっ…!」――ウワハルは開かれた太もものあいだに張った、せめてものその浴衣の布を押さえて隠そうとしたけれど、 「……え、…うふ、…えへへ……」  変な笑い方をしちゃった。  だってウワハル、下着を穿()いていなかったのだ。  ……ぷるんとあらわになったウワハルの綺麗な陰茎は、完全に勃起してそり返りたっている。――雪にも勝る真っ白な恥骨からにわかにそそり立つそれの幹は白く、先端の濃い桃色につやめく亀頭へむけて徐々に薄ももに色づいている。  長いが細いその勃起した陰茎を見ると、ついつい口に含みたい衝動がわき起こってくるけれども、…今回は我慢――ちなみに、これの根本に紐で引っ掛けられたかのようなこの陰嚢(いんのう)は小ぶりで、白っぽい(まり)巾着のよう。兄はここまで愛らしく綺麗だ。 「なんで穿いてないの…?」  なんて俺は意地悪な質問をしながら、カタカタと震えているウワハルのまっしろな内ももに口づける。…美神な兄のこんなところに口付けられるのも俺だけ、と思うと激しく舐め回してしまう。 「……っ♡ お、おツルさんが、その……」  とウワハルは蚊の鳴くような声でこう打ち明けてくる。 「は…穿かないほうが…、シタが、喜ぶと…――み、淫らだとは思ったんだが、……」 「…ふ…、……」  まあ要するに?  俺に喜んでほしかったから、穿かなかった――というか、媚薬を塗るときに脱いだままはき直さなかった、といったところかな。  淫らだ……そんなの恥ずかしい……でも、シタハルが喜んでくれるなら…――やっぱり可愛いとこあるんだよなぁウエ、 「ほんとかわい…、…」  俺はたまらなくなって、ウワハルのその小ぶりな陰嚢の下――やわらかな真っ白い浅い肉たぶをかき分け、くぱぁ…と、その薄もも色の膣口を開いた。 「ゃ、……――っ!!」  ……もはや羞恥のあまり声も出なくなった兄は、俺の両頬を内ももではさみ、反射的にそこを隠そうとしている。無駄だけど。  …へぇ、思ったより「穴」って感じじゃないんだ。  なんだろう…とろとろ、つやつやに濡れた薄もも色の肉のひだ、それの集合体というか…――というかこんなちいちゃいところに、俺のなんてほんとうに入るの? でも、なんか…本能的に興奮する眺めだ。  ひく…ひく、と奥まってはちょっと突き出されるようにうごめいている兄の膣口は、とろ…とろとそのたび透明な蜜を惜しみなく溢れさせている。 「み…見ないれ…、したぁ…っ」  ウエ、恥ずかしすぎて呂律すら危うくなって、ひ、ひ、と泣きそうになってる。かわいすぎ…――舐めたらどうなる?  ……俺はじゅるじゅるとわざと淫らな音を立ててそこの蜜をすすり、ベロベロ舐め回してやる。もちろんウワハルを恥ずかしがらせるため。 「ん…っ!♡ あぁぁらめ…っ♡♡ やっ♡ やめ、♡ やらっ…!♡ ぁ、♡ ん、♡ き、汚いっそんなとこ、やめろ、舐めるなよぉ、♡」  お尻をもぞもぞさせて逃げよう、逃げようと嫌がるウワハルは、俺の髪をか弱く掴んで「やめろってば…!」と泣きながらやっぱり恥ずかしそうに嫌がってる。  ……でも熱くてぷるぷる、ひくっひくっとこの収縮さえ可愛い。ウワハルの愛液は甘い。しかも薔薇のにおい。汚いなんてちっとも思えない。――それにそのあまーい熱い蜜は、どんどんとろとろ、とろとろと溢れて尽きる気配がまるでない。  ……まるでウエの体がよろこんでこの甘露を俺のためだけに湧かせてくれて、そして俺にそれを惜しみなく飲ませてくれているみたい。 「……ぁ…♡ あぁ…っ♡ はぁ…し、シタぁ……♡ なんか…なんか…、ぼく…♡」  そればかりか、こうしてぺろぺろ、あむあむとしていると……ウワハルのその上ずった声に、俺に甘えているようなとろとろの蜜っぽい色気が帯びはじめる。――いつも高慢ちきな兄のこんな甘ったれた声! 「ぁ…♡ ぁ…あたま、へんになっひゃ…♡ んぅ、♡ そんな、ところ…♡ らめ、き、きたなぃ…♡ したぁ…、したぁ…♡」 「……っ」  俺は何かに突き動かされてむしゃぶりつく。  ……ウワハルの真っ白な内ももを唾液まみれにするくらい。「んん…っ♡」と兄はこらえたようにうめく。――犬になったみたいにその骨っぽい膝を、細いふくらはぎをベロベロなめ回す。…夢中だった。  ウワハルの美しい官能的な肉体に、そのほの甘い肌に、その薔薇の匂いに――「シタ、シタだめ、ぁ…っ♡ ぁぅ、♡」と困ったように甘いかすれ声で俺を呼び、なまめかしい声をもらす兄のその可憐さに……。  俺はウワハルの足の甲をぺろぺろと舐めたばかりか、その白い白い足の指まで口にふくんで舐めまわした。「ぁ、あぁ…〜〜っ♡」と弱々しい声をもらすウワハルは、『まるで獣…』と心のうちでつぶやく。  ――『まるで獣のよう…、僕の体中にむしゃぶりついて……まさかあのシタハルが、こんなに激しい獣性を秘めていただなんて……』  でも兄は『それなのに、』と困惑をふかめる。  ――『どうして……けだもののようになったシタにこうして貪られると、…僕の気持ちは淫らだと、こんなのは最低だと思っているのに、…僕の、体は……体ばかりは、悦んでいる……シタハルの舌や唇が触れたところが、どこだって一様にピリピリと快くしびれる…』 「…ぁ…♡ はぅ…♡ ンん…っ♡」  ――『声…、…嫌…、こんな淫らな自分の声…聞きたくない、みっともない、恥ずかしい……なのに、抑えられない…、媚薬なんか飲むんじゃなかった……。  どうして、どうして…貪られると、奥のほうがたまらない…うずうずと、たとえば爪を立ててかきむしりたくてたまらない場所のように、トクトクと僕の脈に合わせてもどかしく疼く――自分では()けないと我慢を強いられているようなこのもどかしさは、知っているのだ――僕の奥底が求めている刺激を…、荒々しいほどの、掻きむしるほどの、僕が壊れてしまうほどの、…僕が決して自分では与えられない、その強い快感を与えられるのは、…この……けだもの、…この、シタハルだけだと……』  ――『わかっている……僕の、からだは……』 「ねぇシタ、シタハル、…」と兄はしゃくりあげながら何か言いたげだった。  ……ふと見ると、 「は、…は、……」  息を切らしているウワハルは、うるうると潤んだそのツリ目を切なげに――懇願するように――細めて俺を見てくる。…そのうす赤い顔、真っ赤に紅潮した両頬、その弱々しい表情もさることながら、もはや後ろ手をつく肘まではだけた白い浴衣は、紫に銀の唐草(からくさ)もようが描かれた帯にかろうじて腰あたりが留められているばかりで、兄の裸のあわい薄もも色の胸板も、もちろんその紅い勃った両の乳首も、ひらたい白い腹も垣間みえている。  もちろん下半身だって乱れにみだれ、その山なりに、内またぎみに立てられた生白い細長い脚はほとんど見えている状態だ。――なんて色っぽい格好……って、俺がこうしたんだけれど。 「も…もぅい、いいから……」 「……もういいって…?」  俺はわかっていて明言をもとめた。 「だ、だから……」とウワハルは、泣きそうになりながら目を伏せる。 「その…、もう先に進んで…構わない……から…」 「……ふふ…、……」  はああ、なるほど――。  ……俺はニヤリとした。もうちょっといじめちゃお。

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