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ハルヒさんは僕の体を洗ってくれると言う。
……しかしそう言い出したハルヒさんに、僕はきょとんとしてしまったのだった。――体を…洗う?
だが、…――そうしてきょとんとしている僕をよそに、ハルヒさんは後ろから僕を抱きしめたまま、僕が手に持っている泡をふくんだボディタオルを、
「…ふふ…、これちょうだい…?」
と妖しげな含み笑いとともに、僕の手から抜き取ろうとしてくる。しかし僕はボディタオルを握りしめ、ひとまずはそれを拒否しておくのだった。
「…いやハルヒさん、…あの…、…――。」
僕が先ほどきょとんとしていたのはなぜか?
また僕がこうしてハルヒさんのその申し出を拒むのはなぜなのか――。
それは何も、ハルヒさんの言った「体を洗ってあげる」というのの意味がわからなかったのでも、またそれが意外に思えたのでもない。ましてや彼の申し出を何かしらの理由をもって嫌だ、御免だ、と思っているのでもない。――かえってそのようなB L 的 展 開 を密かに望んでいたところのある僕が、彼のその申し出にそうした感情をいだくべき理由などないのである。
ただ僕がきょとんとした理由というのは、ハルヒさんのその申し出の裏に隠れている「思惑」を察しているがゆえのことだった。
つまり、まず「洗うだけ」で留まるはずもないのである。ただだからこそ、別に洗ってもらう、という手間をわざわざかけてもらって至らなくともいいことかと、一瞬そう考えてしまったのだ。
それこそ各々が体を洗い終えたのち、浴槽の中かなんかで事を始めたほうがいく分かやりやすく、また事の運びもスムーズなのではないか? と――。
……といってもまあ、さすがに僕だってそこまで合理主義に傾倒しているわけではない。
そもそも一緒にお風呂に入って相手の体を洗ってあげる、なんていうのは、BLにおいても王道中の王道をゆく、もはや言 を俟 たない「いちゃラブシチュエーション」である。――それもハルヒさんのそのロマンチックな申し出は、僕がひそかに望んでいた展開に近いものでもあった。
となれば当然、僕には愛するひとのその申し出を拒むべき理由などないのだ。
僕はかえってその申し出を快 く諾 するべきでさえあるし、その実、僕としてもそれを彼にお願いしたい気持ちがないでもない。
……ただ、
「……、…、…」
僕はハルヒさんの腕のなかで体を返し、そのあめ色の大きな体と向かい合った。…ただ彼の顔を見上げる勇気はなく、その人の濡れた男らしい首筋と鎖骨のつけ根あたりを眺めている。――緊張と不安から強く動悸する僕の心臓は、そのドクッドクッという力強い緊張した鼓動を、自分の胸板ばかりか喉もとへまで波紋を広げている。
「あの、それなら逆に……ぼ、僕が……」
と震えた小声でいう僕の目の下一帯がじわーっと熱くなってゆき、伏せ気味の僕の目も少し潤む。
僕がなぜハルヒさんのその申し出を拒んだか?
それは……そもそも僕は今、ハルヒさんを喜ばせたくて――彼に幸せになってほしくて――こうして彼が求めてきたまま、一緒にお風呂に入っているからだ。
それを奉仕、というと少々大げさかもしれないが、しかし、少なくとも僕は愛するハルヒさんのためならば何だってできる、彼が僕に何かを望んでくれるのならば、極力望まれるままのことをしてあげたい、何か彼に自分が差し出せるものがあるのならば何だって捧げたい――先ほどのお返ししたい、というよりかは、先ほど彼が僕に与えてくれた癒やしをもって深まったみずみずしい愛情がゆえに――僕はとにかくハルヒさんに喜んでほしい、との奉仕精神を先ほど抱くにいたったために、今は、自分が彼にしてあげられることがあるのならば積極的に、何だってしてあげたい心持ちになっているのだ。
……つまり…――。
「むしろ僕が、ハルヒさんの体を洗いたいです…。」
そうなら今回は、ハルヒさんに僕の体を洗ってもらうのではなく――僕がハルヒさんの体を洗ってあげる、というほうが、適当かと。
……そして僕は勇気をふり絞り、つと目を上げてハルヒさんの顔を見上げた。
「……、…」
が…ついつい見惚れ、言葉を失ってしまう。
今ハルヒさんは憂い顔にちかい真顔で、僕のことを静かに見下ろしている。
そして、ハルヒさんのハンサムなミディアムヘアの濡れた銀髪、その顎と首のつけ根との境い目ほどまで伸ばされた長めの前髪は、今無造作な毛束となって頬や鼻先、目もと近くに垂れ下がり、月下で輝く美しい氷柱 のように先端からひたひたと雫 を落としているのもあれば、彼の頬に月光を映した川のようにきらめきながら波打ち、張り付いているのもある。――さらにはその長い前髪の隙間から覗く、彼の憂いた翳 が落ちる彫りの深い目もとに、その濡れた銀髪の無造作な影が足されると、それがまたドキッとするほどセクシーなのだった。
「……ふ…、ハヅキ……? ……」
とハルヒさんが、自分の妖艶な美貌に見惚れた僕の放心を見すかしてほほ笑み、…ちゅ、と僕の額に口づけてきた。――っう、…それすらメロい……なんて眉が寄り、ついまた目を伏せてしまう。
彼からの額へのキスに、にわかにこそばゆく沸き立った僕の恋心は、たちまち更なる動揺と緊張とを誘った。ために、両頬の内側に熱気をこもらせている僕は、こうまくし立てる。
「…ぁ、そ、その、…あのっだからい、いいですか、触って、体…――ただあの嫌だったら無理に、とは、…でもその、…あの、別にいやらしい目的とかじゃ全然なくて、もちろん、もちろん体洗うだけ、それだけの目的というか疚 しいアレじゃなくてほんと、ただ洗うだけです、ただお背中を流すだけ、…だから、…」
「…えー…?」
するとそう不満げ――ただちょっと僕をからかうような――声をもらしたハルヒさんだったが、とはいえすぐに「えへへ…っ」と無邪気に笑い、甘えん坊なゆるふわぁな調子でこう言う。
「ハヅキに体洗ってもらえるなんて、おれ、めっちゃうれしぃー…ありがとぉハヅキ…大好き…♡」
「……、はは……」
ん゛。かわいい……。
提案してよかった…、…なんて僕がほんわかした矢先――突如としてハルヒさんの声色は暗い妖しいものを帯びる。
「――でもさぁ……?」
「……、…、…」
ハルヒさんのその「でもさぁ」に、僕はドキッとした。…今僕の背をつーーと伝っていったのはシャワーの水なのか、冷や汗なのかは判然としない。
「ただ洗うだけ、なの…? 俺にえっちなこと、してくんないの……?」
「……、…」
僕はうつむき加減、こく、と喉を鳴らしながら、きゅっと唇に力を込める。
……えっちなこと、…そりゃあ僕だって――ハルヒさんが望むのならば――そうしたことを彼にしてあげるのはやぶさかではない。…ただ、職業柄それについての知識こそ豊富ではあるものの、実践ともなるといささか臆病になってしまうのと、…あくまでもBLはファンタジー、生身の男性に実践してみたところで、それがハルヒさんに喜ばれるものなのか否かというのはわからない。
ましてやウワハルとしての記憶もまだ多少しか取り戻していない今の僕は、とどのつまりが「知識しかない」状態なのである。
……そりゃあ…ハルヒさんが喜んでくれるのなら、してあげたい、が…――何だって、してあげたいが。
ハルヒさんは「そもそも俺…」と言う、その妖しい低い声を下方へ向ける。
「大好きなハヅキに触れられたらさぁ…、絶対、もっとえっちな気分になっちゃうと思うんだけど…――そうなったらどうなるのか…――でも…、もちろんハヅキもそれはわかってて、そう言ってるんだよね……?」
「……、…、…」
彼のその低い声は、それだけで、まるで僕の腰骨から腰のラインをつーとなぞりあげてくるようだった。…すると僕の腰は、彼の声がひき起こしたほんのかすかな快感の妖しい漣 にぞくぞくと震える。
「……、…はい…、ゎ、わかって…ます……」
と吐息っぽい声で返事をした僕は顔中を熱くしながらも、ちょっと微笑んでいる。
そりゃあ……僕はハルヒさんの艶のあるあめ色の薄い皮膚がかぶせられた鎖骨、その骨のかたちにくっきりと浮き出ている鎖骨の、その中央のくぼみと首筋につながる筋とをじっと見つめながら…――そりゃあ…、それくらいわかって……むしろ僕が体に触れることで、ハルヒさんがそうした気分に、本当になってくれるとしたら……僕は、正直、嬉しい……。
かえって僕に触れられてもなお彼がムラムラしてくれない、というほうが悲しいくらいだ…――。
……彼が欲情したら、どうなるのか…?
そもそもそれくらいわかってはいるつもりだが、…たとえその展開が僕にとって予想外なものであったとしても、僕は一向かまわない。…どうなったっていい…――ハルヒさんが喜んでくれるのなら……僕はどうなったっていい……。
「…あの、ただ……その…僕、どうしたらいいかは、わからないので…――もし、何かしてほしいことがあったら、何でも言ってください…。……じゃあ、とりあえず…触りますね…、……」
しかし僕は愛撫の手つきで触れる勇気まではなく、まずは少し目を上げて見たハルヒさんの首に、その男らしく筋ばった、喉仏の確かなあめ色の首もとに、そっと泡を含んだ白いボディタオルをすべらせる。
「……、…、…」
ハルヒさんが僕の顔をじっと見下ろしている気配が、僕の伏せ気味のまつ毛に引っかかっているのを感じる。――するとなお僕の中に、今は彼のあめ色の肌が白い泡に覆われてゆくのだけに集中しよう、という決心が芽生え…――僕は彼のうなじにまでタオルをすべらせ、首もとをひと通り泡まみれにしたなら今度は鎖骨を……するすると……太い筋肉の丸みをおびた肩を……それから筋肉の厚い武装をまとった二の腕へ…――。
「……、…」
格好良い腕だ…、やっぱり太い…この見るからに力強い太い腕に抱き締められたなら、そりゃあ逃げられるはずが……――僕はそれだけで、みるみるうちに恍惚とした気分になってくる。
とここでハルヒさんの片手が、今僕たちが体の側面を向けている、そのシャワー横の壁に設けられた台の上の、おしゃれな透明なピンクのボトルへ向かう。――幅の大きいそれは僕には見慣れない。つまり彼用のものらしく、彼が器用に片手だけでワンプッシュしたなりしゅわっと泡が出てきて、そのあめ色の広い手のひらの上に白い泡の小山ができる。その泡からは本物の桃のような甘い香りがする。
ハルヒさんは何プッシュかし、手のひらいっぱいにその泡を盛ると、それを両手で軽くすり合わせる。ついその様子にぼんやりと見入っていた僕は、
「……ッ♡」
と不意に腰をぴくん、と跳ねさせた。
……ハルヒさんの両手がにゅるー…とその泡を塗りつけるように僕の腰の骨を撫でながら、そのまま僕の尻たぶまで――そうしてふんわりと僕のお尻を、大きな手のひらとその泡とで覆ってきたのだ。
「……は……♡」
こうなる予測はついていたが……僕はそれだけで胸の中の恋心がぽうっと浮かぶように熟れながら脱力し、悦びのあまりの無抵抗を自分の肉体へまで行き渡らせようとしてくるのを、なんとか理性で阻止しながらも、
「…は、ハルヒさん、…」
と、できればやめてください、と彼の名前を呼んだ。…しかしハルヒさんは僕の尻たぶから手を離すどころか、そこをやわやわと――くにゅくにゅと泡ごと――揉みしだきながら、いたずらに笑った。
「へへ…やっぱ俺も君のこと洗ってあげるー…」
「……、…」
でも…洗われたら僕、…感じちゃって……ただ僕は正直満更でもなく、それ以上は何を言うでもないまま気を取り直して、…ハルヒさんの二の腕から肘まで――ここで僕は腰をひねり、ボディタオルを彼の上腕…それから僕の尻たぶを包み込むその大きな手の甲を――まるでその手のひらごし、自分のお尻を撫で回すかのように――ボディタオルで撫でる。
「……ん…、……」
いささかやりにくい…という以上に、なんだか…恥ずかしい…――し、ちょっと…気持ちよくなってしまう……。彼の五本の指が、上からの圧でほんの少し僕の尻たぶの肉にくい込むようなのだ。
……ということでもう片手はさらりと、ハルヒさんの手はほどほどに、もう片方の腕もボディタオルで撫でて…――。
「…ハヅキ…」
と不意に名前を呼ばれ、僕はつとハルヒさんの顔を見上げた。
「……、…はい…?」
ハルヒさんは頬を紅潮させて幸せそうに微笑んでいる。
「ありがと、気持ちいいよ……」
「……ふふ、……ぁ…♡」
僕はドキ、としながら、それが嬉しくて微笑んだその油断に、思わず甘い声をもらした。ハルヒさんの両手がにゅるる…と僕のお尻から、腰の裏へまでゆっくりと上ってきたその快感に…――。
「……っ」
ていうか声、…僕はぎゅっと唇を合わせる。
先ほどの嬌声の声量は我ながらほんのかすかなものだったというのに、ここが浴室であるせいで、僕のその声はやたら余韻を生んで拡大されていた。…そうして僕の耳に増えてはね返ってきた甘やかな声を忌々しく思うと、恥ずかしくなってたまらない。
「…はは、かわいい…、……」
……するとハルヒさんはにこっと笑みを深め、軽く傾けた唇で、ちゅ…と僕の唇にキスをしては、にこにこしながら至近距離で僕の目を見つめてくる。
「……はは…、……ん…」
僕もその甘いキスに照れ笑いを返したが、はむ…と唇を食まれ、――そうして一度唇を食むなりまた至近距離で見つめてくるハルヒさんの、その翳った切なげな紅い瞳に引き込まれてしまう。
「…………」
「……、…ハルヒさん……」
僕がぽーっとしながら彼の目を見つめ返しているさなか、ふと目を伏せた彼がまたちゅぷ…とかすかな音を立てながら僕の唇を食む。しかしやはり一度そうしては、また切ない眼差しで見つめてくる。
「…好きだよ、ハヅキ…」
「……、はぁ……は……」
……どうしよう…これだけで子宮、うずうずして…呼吸が、徐々に上がってくる。
ハルヒさんは泡まみれの両手でゆっくり、僕の背中をぬるり…ぬるりと撫でまわしてくる。――その彼の両手が僕に与える愛おしいぞくぞくとするような快感は、また僕の心を快く脱力させ、そして僕の意識をぽーっとハルヒさんだけに集中させるよう、「ふたりきり」までせばめてゆくのだ。
「…ハルヒさ…、ん……」
そのさなかにもうっとりとその長い銀のまつ毛を伏せ、またはむ…と僕の唇を食み――またふと離れて、僕の目を見つめて……、
「…ふふ、ハヅキもえっちな気分になってきた…?」
「……、はい…好きです、ハルヒさ、っん……」
僕は再び僕の唇をぷにりとはさんできた彼の上下の唇に、そっと目をつむった。少しのつま先立ち、はむ、はむ…と今度は僕のほうから彼の唇を食んで甘えてみる。
……ただ手を動かすのも忘れずに――ハルヒさんはキスをしながらも僕のわきの下やわき腹、腰あたりをぬるぬると「洗って」くれているので、僕も――、そっと…たっぷりと筋肉に膨らんでいる彼の胸の上、ボディタオルでくる…くると円をえがく。
「……っ♡ …ぁ、…だめ、…はは、…」
しかし僕は顎を引き、ハルヒさんの胸板を軽く押し返しながら、ちょっとハルヒさんを叱るように彼を甘い気持ちで睨んだ。――彼は僕の背中をぐっと抱き寄せ、僕の口内に舌を差し込もうとしてきたのだった。
いやもちろん嬉しかったし、ときめいた、それに舌を入れてこようとしたのが問題だったわけではない。…ただ体を密着させてしまったら、体を洗ってあげられないから…――。
「…えー…、もう体洗うのなんてどうでもよくない…?」
そう色っぽく微笑みながら、愛おしげな鋭い男の眼差しで僕のことを見下ろしてくるハルヒさんだが、…僕は体を洗う、という大義名分があってこそ、彼の体に触れられているところもあるので――困り笑顔を浮かべながら、ふるふる、と首を小さく横に振った。
「駄目です…、ふふ…、……」
わりにそれは僕にとっては重要なことだった。
恋愛初心者、エロ(実践)初心者の僕は、その大義名分を放棄してなおここまで大胆にはなれないのだ。
……すると拗ねた顔をするハルヒさんは、子どもっぽい調子でこういう。
「もう…ハヅキのそういう笑顔、綺麗すぎて文句言えなくなっちゃう…、ねーずるいよーー…」
「……、…ふふふ…、……」
僕は目を伏せ、ニヤけた唇をうち側に巻き込む。
綺麗、と言われるのはやっぱりまだ慣れないが、嬉しい。…これでもちゃんと「ありがとう」というだけで受け取っているつもりだ。
それで…あまり見ないようにと目を伏せたまま……ただ、鎖骨あたりを見ていれば粗方の状態は多少なり視界に映っているので、洗うには問題ない――のだが…ハリのあるこのぷっくりと膨らんだ胸筋、かすかに触れる彼の凝った乳首が、僕の気まずさに似た熱い羞恥心を耳や頬やにつのらせてゆく。
「…恥ずかしそうな顔してるハヅキ、かわいい…」
「……、…」
どうして…そう言われただけで、僕…――下腹部の奥が、きゅうっとなってしまうんだろ……。
僕は内心自分の体が「言葉」というのだけで快感を覚えていることに困惑しつつも、ただ黙々と彼の胸をボディタオルで撫でさすり――それからみぞおち、わき腹、腰骨…――と泡まみれにしてゆく。
「……っ♡」
ぬるる、と僕のうなじを撫でてくるハルヒさんの手に、僕はぴくん、と肩をすくめる。
……僕の手は彼の腰骨の角で止まる。首の側面、前面、鎖骨…――ハルヒさんのあたたかい手が僕の首もとを撫でてくるだけで、僕の二つの乳首がじわーっと乳頭一点に凝結してゆくのを感じる。
「……ぁ、♡」
僕の両胸をハルヒさんのあめ色の両手が包み込む。
手、あったかい、きもちいい…が、てか声、やっぱり、…にゅるにゅると胸の筋肉をもまれ、こと彼の親指のつけ根のやや硬い骨は、僕の二つの乳頭を押し倒しては立てなおし、押し倒しては立てなおすように円 く撫でて刺激してくる。
「んッぅ、♡ …ぅ゛、…〜〜〜っ♡♡」
声、やっぱり凄く響いて恥ずかしい、…と僕は眉をひそめながら、ぎゅっと目をつむる。――すると「はは…」と笑ったハルヒさんの唇が、僕の片耳に押し付けられる。
「かわいいハヅキ…、…でも、もっとえっちな声出して……? 俺、ハヅキのかわいー声…もっとちゃんと聞きたいなぁ……」
「…っ♡ で、でも…声…ここだと、響いちゃ……」
僕はそのささやき声にさえぴくん、と肩をすくめたが、…彼は低い――少し支配的な笑みを含ませた――声で、更にこう囁いてくる。
「……ごめんね…? 悪いけど、だからこそ…余計にハヅキの声聞きたいの…――だってここで聞く君の色っぽい声、めっちゃ興奮するんだもん……」
「……っ♡ ……、…」
ハルヒさんのその低いささやき声さえ、この浴室では少し反響して聞こえ――すると僕の頭に余計じわー…と響きわたり――、子宮にまで、じーんと……。
「ゎ…、わかり…ました…、……」
僕の目の下がじわりと潤んだ熱を帯びるが、…その羞恥心よりもまさるハルヒさんへの愛に、僕は…、…ハルヒさんが喜んでくれるなら…恥ずかしいが、…声…ちゃんと出そう……と、決心する。
「顔上げて…? キスしよ……」とハルヒさんが柔らかく笑いながら言うので、僕は自然眉尻を下げながら顔を上げ、彼の少し暗い微笑を見上げた。
「…ふふ、なんでそんな可愛い顔するの…? 俺、もっと意地悪したくなっちゃうよ……」
「…い…意地悪って…、どんな……ん、」
と聞いた僕の唇を、ハルヒさんが僕の背中の中腹を抱き寄せながら、斜めから唇で捉えてきた。
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