110 / 113
108 ※
「…〝犬〟なら、リード着けないとね……?」
そうハルヒさんは長いつややかな黒の前髪の暗がりの下、そのまつ毛を妖しくすぅ…と細め――長く先端が少しそり上がっているのは変わらないが、まつ毛の色も銀から黒になっている――、そのまつ毛の下からなかばほど覗く真っ赤な瞳で僕の目をじっと見つめてきながら、カチリ、僕の鈴付きの赤い首輪に、銀のチェーンでできたリードの留具を取り付けた。
「……、…、…」
僕は今ドキドキとしているが、僕のその動悸には嫌悪や屈辱や不愉快やという、不快なものはどうも我ながら含まれていないように思う。――これはきっと背徳的な興奮、羞恥、ときめき、そして禁断的な期待の鼓動なのだ。
……そういえば僕はさっき…――ひとりで自分を慰めていたとき――優しいハルヒさんもそりゃあ大好きだが、今はウワハルの「記憶」のなかのシタハルのように、激しく、無理やりというほど彼に強引に求められたい、責められたい…だなんてマゾヒスティックな禁断の願望を抱いていた。
そりゃあ「本心ではノリノリ」なわけである。
「……っ、…」
ハルヒさんがおもむろに立ち上がりながらリードをぐっと引いてきたために、僕の首に巻かれた首輪が僕のうなじにくい込む。――着いてこい、というのだろう。…僕はドキドキとしながら立ち上がり、ハルヒさんを見上げた。が、
「んひ、?♡」
お尻をパチンッと叩かれた。
痛くはなかった。それは尻たぶを軽く揺らす程度の衝撃であったのだが、…正直にいえば、感じてしまった。その平手でお尻ごと骨盤を揺らされたなり、なかの子宮や膣内や前立腺、会陰など、そういったあらゆる性感帯もともに揺れたのだった。
……ハルヒさんが僕の顎を下からガッと掴み上げ、ぐうっと顔を上げさせる。――僕を見下ろすその伏し目は陰鬱な、凄艶 な鋭い凄みを帯びている。
「犬は二本足で歩かないだろ、ハヅキ…?」
「……、…、…」
う、…うううう〜〜っ!
ドSの推し、良すぎるーーっ!!
「は…、…はぁ…ご、ごめんな、さぃ……♡」
これだけで息が上がってくる……僕は媚びるように謝ったのち、これで合っていますか、とおもねる気持ちでハルヒさんの目を見上げたまま、ゆっくりとその場に膝をつき――おそるおそると四つんばいになる。
冷ややかな伏し目で僕を見下ろしてくるハルヒさんにぐっとリードを――首輪を――引かれる。…僕は顔を伏せ、四つんばいで引かれるまま着いてゆく。
「……、…、…」
僕…動物のように首輪をつけられて、それもリードを引かれて、四つんばいで歩いてる…――まるで犬の散歩…――チリン、チリンと小さく鳴る首輪の鈴の音さえ何かひどく妖しいものと聞こえてくる…――たったそれだけのことといえばそうなのだが(SMでもこの程度ならまだかろうじてソフトの分類ではないだろうか)、これだけで何か自分の尊厳をすっかりハルヒさんに捧げてしまったかのような、そうした甘い禁断の行為をしているように思えてきてしまう。
……ハルヒさんの黒いスラックスを穿 いた細長い脚が止まる。――ふと顔を上げると、僕たちはこのワンルームのキッチンにまで来ていたようだ(僕は四つんばいで顔を伏せて進んでいたため、どこに導かれているのかは見ていなかった)。
そして彼は鎖 のリードを片手に絡めたまま、キッチンに置かれた冷蔵庫を開ける。牛乳パックを取り出す。そしてそれをキッチン台の上に置かれた何かに注ぎ――何も言わずにコトリ、と四つんばいのまま僕の目の前、つまり床直 にそれを置く。
……真っ白な牛乳が満たされたそれは、ペット用の猫耳つきフードボウル――要するに餌 皿――で、内側は銀のステンレスかアルミかでできているが、外側はパステルブルー地にピンクの肉球に挟まれた白字で『MILK』と書かれている……のが本来僕がデザインしたものなのだが、これには『HAZUKI』と僕の名前が書かれている。
「……っ、…、…」
……僕はぐっとこみ上げてくるものがあって泣きそうになった。要するにデザインが可愛らしくともペット用の餌皿に、自分の名前が書いてある、というのに屈辱を覚えたのだった。
まるでハルヒさんに「飼われて」いる、かのよう、な、…
「………ッはぁ、♡ は…♡ は…♡ は…♡」
それなのに僕の肺は泣きそうになってしゃくりあげているのか、はたまた興奮しているゆえのそれなのか判然としない乱れた短い呼吸をしはじめ、…僕はうなだれ、襲いかかってくるめちゃくちゃな感情にかーーっと顔を熱くしながら、自分の両目がじわりとうるみ、とろんとしてゆくのを感じる。
僕の背筋はぞくぞくぞく…と幾度も悪寒のようなものにわななき、のみならず、ぐぱっ…ぐぱっ…と膣内、膣口やアナルが、絶頂しているときのそれと酷似した力強さで、収縮と弛緩 とを繰り返しはじめる。
「……ぅ、♡ っはぁ…――っ♡♡」
ぽと、ぽと、と僕の鼻先からしたたった涙が真っ白なミルクに落ちる、…悔しいのに、屈辱的だと、いうの、に、…僕のぶるぶると震える内ももに伝ってゆく愛液のくすぐったさまで、僕をみじめにするというのに、…このみじめさにイッて、みじめな絶頂にまでまた甘イきしている。
「……ッ♡ …ッ♡ …ッ♡ …ッ♡ …ッ♡」
止まんな…♡ イくの、止まんなぃ、♡♡
僕のなかば勃起した陰茎の先からは、ポタポタと白濁した精液がしたたってしまう。……どうも興奮してしまっているらしいのだ――僕…今さらだが、…ドM…だったらしい。…まあウワハルもあれでドMなのだ、彼と僕とは結局同じ存在なのだから、それは致し方ないことなのかもしれない。が…――。
「こらこらハヅキ、ちんぽからミルクこぼしちゃ駄目でしょ…? 何興奮してイッてんの……」
……そう半笑いでからかうように言ったのち、僕のくらくらとした頭、髪を鷲掴みにしてぐっと顔を上げさせたハルヒさんは、冷酷な伏し目で僕を見、ふ、と鼻で笑ってくる。
「この変態。」
「ふぁ…♡ ぁぁ…♡ ぁ…♡ ご、ごめ…なさ…♡」
妖艶に冷笑したハルヒさんの「この変態」が、…正直にいって、最高すぎる。
「おもらしするだなんて、やっぱりハヅキにはきちんとした躾が必要だね…?」
「……っ、…」
ぐっとハルヒさんに頭を押し下げられる、『HAZUKI』と僕の名前が書かれたペット用のフードボウルに――真っ白な水面が僕の鼻先すれすれにある――僕は目をつむり、おそるおそると舌を出し、ぺちゃ……。
「……♡ ……♡♡」
ぺちゃ…ぺちゃ…と四つんばいのまま、そのフードボウルに満たされた牛乳を舐める。
単なる冷たい牛乳かと思ったが、これは砂糖を加えられているかのように甘く、また色は真っ白だがほんのりとココアの香りがする――要するに味ばかりはミルクココアで、単純に美味しい。
なおここに至るまでの流れは違うが(ミルクはマゾヒスティックな絶頂は迎えないし、攻めもミルクの頭を餌皿に押し下げない)、僕のプロットではミルクもこうして、攻めに出された牛乳を舐めとる――ミルクの場合は牛乳が大好きな猫なので、『わぁミルクだ!』と無邪気に舐めとる――のだが、すると攻めは『お前は今犬なんだから、主人の俺が〝よし〟と言うまで飲んじゃ駄目だろ?』と叱られ、(えっちな)お仕置きをされるのだ。
「……は…♡ ……♡♡」
僕…お仕置きされるのをわかって…――いや、むしろそれを期待して…――床に置かれた餌皿から、牛乳を飲んでる……♡♡
……ところがハルヒさんは、上がっている僕のお尻の後ろまでおもむろに移動すると、ぶかぶかのTシャツの裾を――僕のお尻を隠している裾を――まくり上げ、…
「…………」
「……、…、…」
何も言わずに、僕のアナルや膣口をじっと眺めている、らしい。…それも僕は今黒い網タイツに黒紐でつながる黒いファー付きのガーターベルトと、クロッチレスの黒レースの下着(それもそれは尻たぶを黒レースが覆う程度にしか布がなく、お尻のほうまで中央が裂けているデザインなので、アナルも丸見えなのである)を身に着けているのだ。
僕にしてみれば単純にそこらへんを観察されるよりも、よっぽどそれら装飾があるほうが恥ずかしさが増す。――すると僕のアナルも膣口もひくっ…ひくっと収縮してしまい、僕のお尻は恥じらいからもじもじとくねってしまうくせ、(何となし感覚でわかる)僕の黒い猫の尻尾はピーンと上にそそり立っている。
それでせめても隠せばよいものを、僕はまるで交尾を誘うメス猫のように自分の尻尾をまっすぐに立てて、…これではまるで自分の秘めておくべきところを、ほとんど自らハルヒさんに見せつけているようなものだ。
…と思うと…なぜかまた興奮してくるのだが――。
「……は…♡ …は……♡ ……、…」
口で息継ぎをしながら、ぺちゃ…ぺちゃ…とココア味のミルクを舐めつづける。――ひくっひくっとしながら、恥ずかしく濡れたところにひんやりとまとわりつく、ハルヒさんの視線を感じながら。
「…ふ、何ミルク飲みながらまんこひくつかせてんの。…しかもこんな…お尻の穴まで丸見えの、俺のちんぽに犯されるためだけのいやらしい下着なんか着けて…、ねぇハヅキ……? 恥ずかしいね……」
とあざけるように言ったハルヒさんが、くぱっと僕の膣口のまわりの肉を左右に大きくわり開く。
「……っ!♡ ……は、…、…、…」
ぐちょぐちょ、とろとろになってる、なかまで…見られて、♡♡
「…あーあ、ミルク飲んでるだけなのに、まんこのなかまでとろっとろじゃん…――奥から愛液溢れてきてるし…――このマゾ犬…。俺、まだ何にもしてないんだけど……」
と呆れ返ったような低い声で言ったハルヒさんが、バチンッと叩くように僕の両方の尻たぶを掴み、
「ぁう、♡♡ …は、…は、…ご、ごめんらさ…♡」
そのままぐにぐにとそこの肉を力強く揉みしだいてくる。――すると僕の膣口やアナル、会陰といったわかりやすい性感帯も刺激され、それらは僕の子宮に焦燥の快感を蓄積させてゆく。
「…ふ…っう、♡ …ぁうぅ……♡」
僕はミルクの水面すれすれで喘ぐ。下品なほどみだらな気分になってくる。――おちんちん……おちんぽ…♡ おちんぽ…♡ おちんぽほしい…♡
もっといじめられたい……♡
「そもそも…、何勝手にミルク飲んでんの…?」
「……ぁ、♡ ぁ、♡ ごめ…なさい、♡」
なんという理不尽だ…♡
そもそも「飲めよ」とでもいうように、僕の顔を餌皿すれすれまで押し沈めたのはハルヒさんだというのに、勝手に飲むなよ、というそのサディスティックな理不尽極まる発言はしかし、僕の腰をくねらせる。
「お前は今犬なんだから、ご主人様の俺が〝よし〟って言うまで飲んじゃ駄目だろ…――あーあ。これはお仕置きだな…、……」
「……おしおき…♡ ッぁ、?♡♡」
ぽしゅ、と小さな爆発音の――おそらくハルヒさんが神力でなにかを出現させたのだろう――のち、ひやりと冷たい、やわらかいシリコンの感触がくにくに、ぬりゅぬりゅと僕の濡れた膣口にこすりつけられる。
……僕はこの感触を知っていた。――おそらく僕がさっき枕の下に隠したあのクリアピンクのバイブ、それの先端である。
「はぅ、♡ …――〜〜っ!♡♡♡」
そのままぐぷっ…ぐぷぷぷぷ……とそれがなかに推し入ってくる。――僕の閉じた細道をこじ開けながら入ってくるその標準的な陰茎ほどの太さのバイブは、先ほどほぐしたようなものな僕のなかであっても、やはり切迫するような違和感を僕にみるみるもたらしてゆく。
……僕の奥の奥までそれが差し込まれる。とすぐ、ヴヴヴヴヴ……とそれが僕のなかや子宮口やを震撼させる。
「…んァ、♡♡ う、♡ ぅぁぁ、♡ ぁ、♡」
機能としてはあってもそのバイブは今スイングやピストンやはしていないのだが、単にバイブレーションしているだけでも、僕が自慰をしていたときから快感を欲しがっていた奥が、また膀胱や陰茎の根本あたりも、その小刻みな振動にしびれるような快感を得て腰がくねってしまう。
「ぁー…♡ ぁ、♡ ぁ、♡」
きもちいい…♡ きもちいい…♡ きもちいい…♡
「はは…ちんぽから涎 ダラダラ垂れてるよ……――全く、またおもらしして……」
……そう言いざま、バイブの尻部分にあるスイッチでカチリとモードを切り替えたハルヒさんによって、すぐにそのバイブの先端がくねくねとその頭を回しはじめ、僕の子宮口やその周辺の性感帯をこね回しはじめる。
「んう゛…っ♡ ふ、♡ ぅく、♡ …〜〜っ!♡♡」
それは僕にとって未知の快感だった。
しかし顔が自然とこわばり、しかめられてしまうほどの凄 まじい快感で、僕の首はすくめられ、肩は縮まり、ガクッ…ガクッと腰は跳ね、内ももはぶるぶると震えてしまう。おまけに僕の猫耳もぺたーっと頭の形に添うよう伏せられ、ビクンッ…ビクンッと上向きに立った尻尾は鞭 のようにしなりながらのたうっている。
……しかし僕がその快感に耐えているさなか、いつの間にか僕の前にしゃかんでいたハルヒさんが、ぐっと僕の首輪のリードを上に引く。
「…ほら躾の時間だよ、ハヅキ…? おすわり。」と彼の冷ややかな低い声がそう命じる。
「……っは…!♡ …〜〜〜っ!♡♡♡」
僕はぎゅっと目をつむり、僕が考えていた数倍ドSな責めをしてくるハルヒさんに正直ときめきながら、何かなかば悔しいやら敬服するやら、である。
というのも彼、僕が考えていた流れよりもっと良い「お仕置き」をしてきているのである。
そもそも僕が考えていたプロット上の「お仕置き」では、攻めが(牛乳を勝手に飲んだ)ミルクに――今のハルヒさんのセリフ通りに――おすわりだのちんちんだの何だのと犬の芸を命じ、羞恥責めをしながら少しずつミルクの精神を「犬らしく」屈服させてゆく、というような流れだったのだ。
ところがどうだろう。「この状況で」そのお仕置きの流れに持ちこまれたほうが、よっぽどそれらしい責め苦となることに、僕は今身をもって気が付かされた。――なぜなら、今こうして「おすわり」をしてしまえば、…
「……んァ゛…ッ!♡♡ く、♡ っツ゛…!♡♡」
一番奥に、…スイングしているバイブの先端が、押し付けられ、♡♡
僕がこうして今よたよたと体を起こし、犬や猫がするような「おすわり」の姿勢――足の裏を床に着け、脚をたたんでしゃがみこむように、かつ前に両手を着いている姿勢――を取ると、当然床にはバイブの尻も着き、また僕はそれに体重をかけるようにしてお尻を下ろしているため、必然的にそのバイブはより深く奥に押し込まれ、それでなおなかで大暴れしているのだった。
それもこのバイブがその圧で止まることはない。なぜなら僕はアナル用にとこれを購入しているため、せまいそこの圧力にも負けないパワーのものを選んで買ったからだ。
「…ぁ、♡ …ぁ、♡ ぅうっ♡♡ ふ、くぅう…っ♡」
凄まじい痛いほどの快感の苦悶にうなだれている僕の腰が、ガクッ、ガクッとこらえようもなく痙攣してしまう。熱いねばついた脂汗が全身ににじみ出てくる。
性感帯の――それも焦らされていたようなものである――子宮口付近を、えぐるようにこね回されているためである。
「…〜〜〜――っ♡♡」
イく、♡ イッちゃう、♡ イッちゃう、♡ イッちゃう、♡
……いや、僕の体はむしろ勝手に、本能的にイこうしている、…腰をビクつかせているくせ、その腰をへこへこと前後に動かして、回転するバイブの先端に奥のイイところをぐりぐり、くちゅくちゅとこすりつけているのだ。
「……ハヅキ…? いやらしく腰へこつかせてないで、お手。」
「…っふ、♡ く、♡ …〜〜ッ♡♡」
で…できな、♡ できない、と僕は頭を横に振る。
あまりの強い快感につらくて顔も上げられないというのに、…しかし残酷にもビンッと強くチェーンリードを引かれ、僕のうなじに首輪がくい込んで痛む。
「……っ!♡♡」
僕がまぶたも上手く開けられない潤んだ目で見やった先、ハルヒさんが苛 立った恐ろしい顔をして、僕をじっと見据えている。
「お手。…早くしろよこの駄犬…、ハヅキは俺の従順な犬になるんだろ…?」
「は、…ご…、ごめんらさ…♡ はぅ、♡ は、♡」
僕は――図らずも犬らしく「は、は、は」と口で短い呼吸を繰り返しながら――ガタガタ震えてしまう右手を、差し出されている彼のあめ色の大きな手のひらの上に、そっと乗せた。
……しかしハルヒさんは優しい――それだからなお恐ろしい――暗い微笑みをたたえ、
「お手だけじゃなくて。お返事は…?」
「…ッぁ、?♡」
ぱん、とほんの軽く僕の頬を打った。
「は、♡ は、♡ は、♡」
僕は顔をその衝撃によってやや横向きにしたまま、腰をくねらせる。
まるで痛くはなかったのだ、が、…ただただハルヒさんに、あの優しいハルヒさんにビンタされた、という事実だけが僕を被虐的に悦ばせる。
「…は…――っ♡♡」
眉が寄る。――イ、…っちゃぅ、♡♡♡
「ほら、俺見てハヅキ…?」
しかしぐっと頬を押され、顔をまたハルヒさんのほうに正された僕は、そこでまた恐ろしいやさしげな微笑をうかべたハルヒさんの、その暗い真紅の瞳と目が合う。
「〝わん〟…でしょ。」
「…っ♡ は、ゎ…わん…♡ わん…♡」
イ…イく、♡♡ ハルヒさんにいじめられると僕、その精神的な快感が、バイブの刺激に相乗されて、…イき、♡♡
ハルヒさんは残酷な――しかし熱っぽい、愛おしげな――目をして冷笑し、僕の顎の先を下からぺちぺちと指先で叩きながらこう言う。
「あーあ、イきそうなんだハヅキ…、まあいいや。体勢崩したらお仕置きだよ…?」
そして彼は、すっと改めて僕の顎の前に手のひらを差し出し、にこっと微笑む。
「はい、じゃあ俺の目を見つめながら…、あーご…♡」
「…は、♡ …ッゎ、わん、♡」
僕は眉尻を下げ、泣きそうになりながら、彼の手の先に顎をのせた。――イくときの顔、じっくり見られ、♡ 見つめあいながら、僕、イかなきゃいけな、♡
あ、ぁイk、♡♡♡♡
「ィ、♡♡ ぅ゛うぅ…〜〜――っ!♡♡♡」
僕は顔を歪め、ぶるぶると震えてしまう開いている太ももをカクッ…カクッと内向きに跳ねさせ、閉じかけては開きを繰り返しながら、下から――イッてもなおバイブにこね回される子宮から――せり上がってくる絶頂の快感に、目の前がチカチカとまたたくのを見る。…それでも、そのさなかにあっても僕は、冷たくも満足げな微笑をたたえたハルヒさんのその両目を見つめつづけている。
「…かわいい…♡ ふふ、ハヅキの涙と汗でぐちゃぐちゃの真っ赤なイき顔、エローい…♡ かわいーねぇ…? ほんとかわいー…♡」
そうしてハルヒさんは、満足げに息も絶え絶えな僕の頭をよしよしと撫でてくれるのだ。
「……♡♡♡」
すきぃ…♡ ハルヒさんになら飼われてもいい、いや、むしろ――ハルヒさんに飼われたい…♡♡♡
◇◇◇
「はい、じゃあ改めて……」
とハルヒさんは妖しく微笑しながら、僕の絶頂が落ちついた頃合い、また手のひらを差し出す。
「おかわり。」
「……っわ、…ゎ、♡ わん、♡」
僕は――絶頂直後のなかをバイブの振動と回転に刺激されるその快感に――泣きそうになりながら、今度はカタカタふるえる左手を、ハルヒさんの手のひらにそっと乗せる。…その瞬間、薬指にはまったままの結婚指輪がチラとまたたいて、また何か興奮してくる。…夫に、マゾ犬調教されて、♡
……するとハルヒさんはふ、と鼻で笑い、僕のその手を僕の肩の上あたりに持っていく。
「はい…。じゃあ次は…ちんちん。」
「……っは、♡ は、♡ …ゎ、…わん…っ♡」
僕はガタガタと震えてしまう太ももに鞭打って、従順に「ちんちん」の姿勢――両肩をやや越えるくらいまで二つのゆるい拳をもちあげ、しゃがみこんだままがに股開きをする姿勢――を取る。…自分のものだからわかるのだが、…興奮のあまり上向きに勃起した僕の陰茎が、根本からぷるんっぷるんっと頷いてしまった。
……ただ「おすわり」のときに比べると、この体勢のほうがお尻が上がっているため、奥への刺激が弱まった――それがまたホッとするような、焦らされているようなであるが、いや、それさえハルヒさんの意図的なもののような気がする。僕をこうして焦らすことで、またじっくりと絶頂へ高めようとしているのではないか、と。
いや、もうなんだっていいのだ…――。
「…っは、♡ は、♡ は、♡」
僕は縋 るような思いで、じっとハルヒさんの鋭い紅い両目を見つめた。――不思議なことに、今や僕はなぜか彼に喜んでほしい、褒めてほしい、いっぱい可愛がってほしい、という犬のような服従の心持ちになっているばかりか、次の彼の命令を心待ちにさえしている。
「……ふふ…上手にちんちんできたねぇハヅキ…――いい子いい子…♡」
とハルヒさんが、その黒い前髪に妖しく翳った目元でやさしげに微笑しながら、僕の頭をよしよしと撫でてくれる。
「…くぅん…♡」
……つい「くぅん」なんて媚びた声を出してしまった。今の僕はご主人様 に優しく頭を撫でられ、褒められたのがもう嬉しくってたまらないのだ。
「じゃあご褒美あげるからね…? はい、ちんちんしたまま――上向きながら、お口開けて……?」
「……は、♡ ……?」
僕はなぜ、とは思ったが、命令どおり口を開けながら顔を仰向かせた。――「こぼさないでちゃんと全部飲むんだよ…?」そううつろな低い声で僕に言いつけたハルヒさんは、例のフードボウルに入ったココア味のミルクを、
「ほーら、ハヅキのだーいすきなミルクだよー。美味しいねえ…?」
「が、♡ ……ッかふ゛、♡ …くッ…!♡」
上から、僕の口に注いでくる。
僕はなかば溺れながら必死に嚥下 してゆくが、遠慮なしに口内に流しこまれる速度にかなわず、…せめて飲み込もうと口を閉ざすと、
「ねぇ、口閉ざしたら飲めないでしょぉ…?」
「……っ♡ は、…が、♡」
……怒られるので、…口を開け、すると閉じていた僕の唇にも絶えず流されていた上、さらに口内から充溢 したそれが僕の首やのど元を濡らしながら胸へ、腹へと伝ってゆく。
――しかしそうはいっても、容器がペット用のフードボウルでは、そこに入っていたミルクの量はさほど多くはない。わりにすぐぽた、ぽたと、その器から僕の口内に白い雫がしたたる程度まで注ぎ終えられた。
「…っは…、…んくっ…く、ふ、…は、は、…」
僕は上を向いたまま口を閉じ――たほうがやはり飲み込みやすいので――、口内の甘いココア味のミルクを飲み込んだ。
……カラン、…餌皿が投げ捨てられる。
「ねえハヅキ…? 俺、こぼしちゃ駄目って言ったよね…――ハヅキがこぼすから汚れちゃったじゃん…。ほら…お前は今俺の犬なんだから、ちゃんと綺麗に舐め取れよ……」
「……っはぅ゛、♡」
ハルヒさんは僕の後ろ頭をつかんで押し下げ、自分のあめ色の筋ばった足の甲へ――あの勢いで注いでおいて理不尽にも、こぼれ、そこに水滴となったミルクを舐めとれという。
「は…、は…♡ ご、ごめんらさ…♡ ん…♡ よごして、ごめん、なさい…♡ …――ッ♡♡」
しかしくらくらと被虐のよろこびに陶酔している僕は、ぺろぺろと彼の足の甲を夢中で舐めながら、ピクピクと軽くイっている。
期待以上、…なんというドS…――っ!
……こんなシーンはプロットになかったが、必ず入れようと決めた僕である。
ともだちにシェアしよう!

