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112 ※微

 ――今ベッドの上には僕しかいない。  そのシングルベッドの黒いかけ布団の上、軽く膝を曲げた両脚を斜めに倒すようにして座っている僕は今、このとおり例の拘束の一切をハルヒさんに解いてもらったあとである。  ただその拘束を解いてもらったとはいえ、僕は今もあの黒いランジェリー――黒レースのオープンブラジャーに黒いファー付きのガーターベルトと、黒レースのクロッチレスショーツ、ついでに太ももの(なか)ほどまで長さがある網目の細かい黒い網タイツ――を身に着けたままであるし、また当然黒猫の耳と尻尾も生やしたまま、さらにはチェーンリードがつながれた、鈴付きの赤い首輪も首に巻いたままではあるのだが、…くわえて今はその上から、ボタンが一つも留められていない白いワイシャツを身につけている。  ちなみにその白いワイシャツは、これまでハルヒさんが着ていたものだった。  僕は先ほど(後半においては完全に自爆なのだが)ああして死さえ(かぐわ)しく(かお)るような凄まじい快感責めにあい、するとあのまま幾度とない絶頂、というよりかはまた「ずっとイッている」状態にまで()ちてしまったわけだ――なおハルヒさんはなかなか鬼畜なことに、ああしてビクンビクンと痙攣しながら泣き叫んでいる僕を面白がって、しばらくはただ眺めていたのだ――が、しかしその前の「イきっぱなし」よりも絶頂の程度がはなはだしく、やがて疲弊した僕の意識が遠のいてゆく……つまり僕が失神しかけたなり、さすがのハルヒさんも慌てて僕のことを助けてくれた。…あのときはマジで死ぬかと思った……。  しかしそうしてやっと助けられても――拘束を解かれ、バイブや電マ、オナホなどを体から取り外されても――、直後の僕は冬のかけ布団のごとく心地よく全身にのしかかってくる安堵(あんど)感も相まってはなお、実に指一本さえ動かす気にもなれない疲労困憊の状態とまで体力を消耗していた。  それは当然である。失神寸前まで追いつめられていた男がそれほどぐったりしていなかったらそのほうがおかしい。  だが、といってもそれはいわゆる「神氣不足」ゆえの疲労ではなく、単純に肉体の酷使ゆえの疲労であったらしい。――すると僕のその疲憊(ひはい)は、ハルヒさんがふーー…と僕の全身に吹きかけてきたあたたかく心地よいそよ風(回復魔法)によって、それこそ吹き飛ばされるようにたちまち癒やされ、…そうして僕は今やすっかり体力を回復するにいたった。  ……ところがハルヒさんは、そのあともさらに僕を心配してくれたのだった。  僕が『ありがとうございます』とお礼を言いながらむくりと上半身を起こしたときにはもう、彼は自分のワイシャツを脱いでいた。――そして僕が目のやり場に困っているあいだに、甲斐甲斐しく僕の腕にそれの袖を通させながら、彼は『だいじょうぶ…?』と僕の顔を心配そうな顔でのぞき込み、 『ごめんね、俺やりすぎちゃった…。ハヅキがほんと可愛くてえっちで、つい調子のっちゃって……』  とかなり反省した様子でしょんぼりとしていた。のだが…――。 『…え、…いや、そんな…――大丈夫です、僕、全然そうは思ってませんよ…?』  そう答えた僕は、嘘でもなく(まこと)の心から彼が「さすがにやりすぎだ」などとはちっとも感じていなかった。  たしかに(イきっぱなしで)あわや死ぬかというような思いはしたものの、といってそれも含めた彼の責めには素晴らしいインスピレーションを得られたし、何より僕自身としても最中は実に興奮し、楽しく、心から陶酔しきるほど彼とのプレイを堪能していた。  ……ましてや「このままじゃイき死ぬ…♡」なんてエロ漫画によくあるあの状態を、まさか実際に経験できるとは良い意味で思いもよらず――なんならそのシチュエーションとはそうしたエロ漫画好きの間では一種の「夢」でもあり、すると僕は、実は最愛の夫が(良い塩梅(あんばい)の)ドSであったというある種の幸いに恵まれたばかりか、ために思いがけずもその夢をも叶えられた幸せ者のひとりとなった、ともいえよう。  つまり「やりすぎ」どころか、かえって僕はハルヒさんにあんなことまでしてもらえるだなんて…♡ と大満足していたわけである。なんなら体力を回復してもらった僕はそのとき、密かに「つづき」を期待してさえいたのだ。  しかしハルヒさんは――僕の火照った両頬をする…すると何度か撫でたあと、その大きな手のひらで包みこみ、僕の唇にちゅっとキスをした。  それからこう屈託なく、やさしく僕に微笑みかけてきた。 『ふふ…どう、満足してくれた…? でもほんと疲れたでしょう…――そうだ俺、…ちょっと待ってて。お水持ってきてあげるね…?』 『……、…』  ……それはまるで、僕が満足できたのなら自分はこれで終わりにしてもいい、というような口ぶりであった。だが僕はハルヒさんのその優しい忍耐を見過ごせず、後ろに腰を引いた彼の腕を掴んで引きとめ、 『ハルヒさんは…?』となかば心配しながら尋ねた。  ……たしかに先ほどはあのまま眠りたいとさえ思えたほどの疲労困憊状態であった僕だが、しかしその疲労は他でもない彼自身が癒やしてくれたのだから、当然今の僕には彼の相手をするだけの元気があった。――ましてやハルヒさんは今朝から我慢に我慢を重ねている状態で、こうなったのだって彼にしてみたら「やっと」のことだったのだろうに、…それでなおどうも僕に気を遣って「終わり」にしようとしている気がしてならない。  そんな必要はないというのに…だ。 『ん…? 俺…?』  とハルヒさんは純然とした優美な微笑を少し傾け、それからにこっとそのタレ目を細めて笑った。 『俺はだいじょうぶ。…ハヅキが満足してくれたなら俺も大大大満足。だから、これで終わりでいいの。――何より俺、やりすぎちゃったしね…、回復させたとはいえ、それは明日に響かないようにって。……ふふ…ほんと無理させちゃってごめんね…――じゃあ俺、とりあえずお水持ってくる。ちょっと待ってて…? ……』  ――そうしてハルヒさんは今、このワンルームのキッチンに立っている。  ……だが、… 「……、…」  ちなみに僕が今着ているこのハルヒさんの白いワイシャツは、僕にはどうもぶかぶかだった。…それこそ第二関節ほどまで袖で覆われてしまうのだが、僕はその長い袖口を四本の指先でおさえ、自分の手のひらのつけ根あたりに鼻先を寄せる。――やっぱり…これから香っている。  ……ハルヒさんの匂いがするのだ。ずっと、これを着せられてから…ずっと…ほんのり…――彼の体臭であるらしい、白檀(びゃくだん)の匂いがしているのだ。  僕は最初は匂いの出どころを確かめたかっただけだというのに、…ついくんくんとその甘い匂いを()いで堪能してしまう。 「………♡♡」  いいにおい…、なんか、えっちなにおいだ…、今はそう思える…、子宮がキュンキュンとときめいてたまらなくなり、奥のほうからじわぁ…っと濡れてくる…、むらむら…してくる…――。  ……僕はついつい、その匂いをすんすんと嗅ぎながら、くちゅ…――と、我慢できずに自分のなかに指を二本挿れる。 「……は…♡ ……ん…♡」  ここ、きもち…よかったな……♡  そして僕は、くちゅくちゅとハルヒさんに愛された浅いところをばかりこすり、…気持ちいい…♡ 気持ちいい、♡ 気持ちいい、♡ ハルヒさん、♡ ハルヒさん、♡ もっと、♡ もっと、して……♡ 「……ッ、…、…、…は……」  でも…違う、…これじゃ、嫌……。  それにしても…あれだけイッたというのに、やっぱり僕って性欲強いんだな…――なんてふと我に返っては、おもむろにベッドの上を見やる。  そしてベッドの上に散らばっているアダルトグッズのなかから、ピンク色のリモコンバイブ――底のあるL字型のショートバイブ、すなわち底以外がなかにすっかり収まってしまう形状のもの――を手に取り、固い意志をもって――膝を立てて座り、そのバイブを膣内ににゅぷぷ……とおさめてゆく。 「……、く…っふ、♡」  眉は寄る、が、  僕のなかはまだ乾いておらず、それはスムーズに根本まで入ってきたものの――当然そのバイブは冷たく、シリコン自体はそこそこ柔らかいが、陰茎のその肉感とはまた違う、これはどうしても無機質な味気のないやわ肌である。 「……、…」  だが、…どうしてこれで終われようか?  と僕はさっき考えたのだった。――正直にいって僕はハルヒさんのあの遠慮的な、いや、ともすれば自己犠牲的、奉仕的、利他的なあの慈愛の優しさに、胸のなかが熱い恋の蜜でいっぱいに潤んだのを感じた。  ……恐ろしいくらい彼に尊重され、大切にされているのがよくわかった。彼ときたらなんてやさしいんだろう。しかもハルヒさんはただやさしいだけではない。――気が狂いそうになるほど僕を興奮させ、耽溺(たんでき)にいたりそうなほど陶酔させる危険な魅惑性を持ち合わせていながらに、根底の部分にはあんなけなげな優しさを持ち合わせている。  いや、その根底の途方もない愛と優しさがあればこそ、彼は僕をよろこばせてくれるために、ああしたプレイをも(たえ)なる塩梅でやってくれたのだろう。――そもそも考えてみれば、彼は先ほどもずっと我慢していたはずだ。あわや失神しかけたほど責めという形で僕の肉体にはたっぷりと快感を与えてくれてはいたが、しかしそれは一方的なものであり、あれでは彼自身の肉体には快感やそれによる満足など生じようはずもなかった。  すなわち彼のあのドSな責めの根底にも、愛による「忍耐」と「献身」があったのである。  だからこそ、なのであった。  お返しがしたい? それが「終われない」理由に全く関与がないかといわれれば、完全に否定することはできない。  だが、何よりも僕が「足りない」のである。今改めて惚れなおしたハルヒさんが「欲しい」のである。  どうして満足できよう? 満足にいたるに必要なのは絶頂の回数ではない。それの種類でもない。僕はあらゆる場所で幾度となく絶頂させてもらったが、だからなんだという話である。  欲求不満の僕が求めていたものとは、はじめから一つであった。  ――愛するハルヒさんである。  今度は間違いなく僕の番だ。  今度は僕がハルヒさんをよろこばせたい。  ……ハルヒさんは先ほど、『ハヅキからも俺を求めてほしかった』と言っていた。――ならば勇気を出して、今度は僕から積極的にアプローチをしてみようじゃないか。  なんなら僕は、よっぽど今のこのシチュエーションのほうが大胆になれるような気がする。  僕は今自分の仕事のためにそれとなく「ミルク」を演じている、という建前、事後におけるところの逃げ口上、僕の気重を幾分か楽にするそうした免罪符を手にしているためである。  それも都合よく、ミルクは恋をしたご主人様(攻め)に積極的にアプローチを仕掛けるような、「最愛のご主人様に媚び媚びの恋猫」なのだ。  欲しくて欲しくてたまらないご主人様の寵愛、肉体、快感、…すなわち積極的に彼に甘え、彼を求め、一生懸命彼をよろこばせようとし、その上で悦んで言いなりになり、助けられた恩義にくわえてマゾの性質もあってはどのような奉仕も責め苦も決してやぶさかではなく、…まあ簡単にいうとミルクは、恋は盲目状態のメロメロ♡ ぐるぐる♡ な発情したマゾ猫、といったところである。  しかしといって冷静に、かつ客観的に見ると、単純にSM的恥辱を強いられるより、その「メロぐる発情にゃんこ♡」のほうが、僕にとってはある種尊厳を傷つけられるようだというか、そのほうがよっぽど気恥ずかしいというか抵抗感がすごいというか、…  こんな三十路男がそんな可愛らしい猫を演じてよいものかどうか、とも考えてしまうのだが――ましてや僕がそんなぶりっ子スレスレの迫り方をして、ハルヒさんに不愉快な思いをさせないかだとか、引かれないかだとか、嫌われないか、鬱陶しがられないか、そうした不安も正直深いところに居残ったままなのだが――、…まあそれというのも、性的に興奮している男というのは悪くいうと「バカ」なので、ある種嫌悪感をもよおすような内容のコンテンツでも興奮はするため(で、抜いたあとに『なんでこんなもんで抜いちゃったんだろう…』なんて自己嫌悪に陥るケースもままあり、)…すると僕がこれからしようとしている「恋猫しぐさ」に何かしらミスマッチや気色悪さがあったとしても、今のハルヒさんならば多少は看過してくれることだろう。  まあのちのち彼が冷静になったときが怖いが……とはいえ、もうこんな猫ランジェリー姿では、何かと今さらといったら今さらである。  と、いうことで僕は思いのほかキッチンのシンク前に立ったまま、なかなか戻ってこないハルヒさんのその背中――身につけている衣服は黒いスラックスのみの、その半裸のたくましいあめ色の背中――を見、ベッドから下りて、早足でその背中に歩みよる。  ゆっくりと歩みよるだけの度胸はなかった。こうした勇気の要ることには、迷い立ちすくまないための、迅速な勢いというものが必要なのである。  そして、…後ろから彼の背中にぎゅっと抱きついた。 「……っ? …は、ハヅキ…?」 「……、…、…」  ……僕が着ているこのワイシャツは今前が完全に開かれているため、ハルヒさんのごつごつとした――そして僕の肌に吸いつくようなしっとりときめ細やかな――背中の肌が、僕の丸見えの乳首やその周辺、お腹に密着し、緊張に加わったときめきで僕の脈拍が急調子となる。…それこそ手首の血管の鼓動までたしかに感じられるほどに、だ。 「……、…」  そして僕はハルヒさんの背中に抱きついたまま、黙っていた。黙っていたくて黙っているわけではなく、実はさっきまで漫画的な――もっというとミルク的な――誘い文句をあれこれ考えていたのだが、いざとなると途端に何を言ったらいいのかわからなくなったのである。 「……、ごめんね、あの、」と先に口を切ったのはハルヒさんだった。 「お水遅かったよね…? あは、せっかくだからまったりしよっかなぁって思って、ホットミルクいれてたの……」  そうしてハルヒさんは動揺しているようだったが、やはりあくまでも「終わり」を決め込んでいるような口ぶりである。――僕は目前にそびえるあめ色の、その背すじのくぼみにちゅ…と唇を押しあてる。  当然だが、ハルヒさんの匂いがワイシャツのそれよりも濃かった。 「……、…」  頭がぽうっとしてくる……。  そのままぺろぺろと舌先で舐め、頬を熱くしながら、彼の腹筋の凹凸(おうとつ)が雄々しいお腹を撫でまわす。…ほんのりと甘い彼の肌がざわ…と粟立った。――感じてくれているのか…単なる生理現象なのか…。 「……、…ね、ねぇハヅキ、俺、…実はめっちゃ我慢してるの、…だから、」 「……、…」  僕は「ハルヒさん」と呼ぼうとしたが、一瞬のためらいを覚え、 「……ご…ご主人様、…えっち…したいです…」  あえて彼を「ご主人様」と呼んだ。  僕のその決断に含まれた意味には、「プレイを続けましょうよ」とハルヒさんに伝えたいのもあったし、あくまでも僕は今それとなくでもミルクを演じているんだ、という自分を鼓舞する目的もあったが――何よりそれによってハルヒさんの脳裏に「プレイ」を彷彿とさせることで、彼も気兼ねなく自分の欲求に素直になれるのではないか、という気づかいの意味合いも多く含まれていた。 「……えっ…で、でもっその、そ……ぁ…?」  しかしハルヒさんはまだ逡巡(しゅんじゅん)しているようだったが、僕に後ろからバイブのリモコンを握らされると、『何これ…?』と自分の手のひらにのったそれを見下ろしたらしい。 「も、もっと僕と、遊んでください…にゃぁ…♡」  ……うーーー恥ずかし、…でも、…  もっとぐいぐい攻めなければ、…なぜなら僕がここで引いてしまえば、今ためらっているハルヒさんは、きっと「する」という選択に踏みきれないからである、――ということで僕は後ろから彼の乳首の先をくにくにと指先でもてあそびつつ、もう片手は彼のスラックスの上からするする…さわさわ…もみもみ…、やや硬さを帯びているそこをやさしく愛撫する。  そして僕は先ほど考えていた誘い文句を、できる限り甘ったれた調子で口にする。 「……僕、ミルクはミルクでも…飲むなら、ご主人様のおちんちんから出るミルクが飲みたいんです…♡ 貴方が欲しくてたまらない…、おもちゃ遊びも楽しかったけど…僕、ご主人様のおちんちんが欲しい…。貴方が喜んでくれるなら僕、犬にでも猫にでも…何にでもなるから…――だから、僕とえっち…してください……♡」 「……ぅ…、はぁ……でも、ハヅキ…?」  ハルヒさんのその低い吐息をはらんだ声は、なまめかしい震えと湿り気を帯びている。 「俺…我慢できないよ…。いいの…、君のこと…めちゃくちゃにしちゃうかも、しれない…――酷いこと、もっとしちゃうかも……」 「…して、ください…、……ふふ…」  僕の手のなかで、硬さと脈動という「手ごたえ」が増してゆくのが嬉しく、僕はハルヒさんの背中に片頬を押しつける。 「め、めちゃくちゃにして…、貴方に、無理やり、いっぱい……いっぱい、…激しく、されたいんです…。今日は僕、ぉ、犯されたい…――大好きな貴方になら…酷いこと、たくさんされたい…。…今日は貴方に、服従したい気分なんです…、身も、心も……」  そう言いながら、僕はハルヒさんのスラックスのホックをはずし、ジーーッとそれのファスナーを下げた。――そしてそっとボクサーパンツのやわらかい布越しに、彼のしっとりとした熱の塊を撫でまわす。が、そこでヴーー…と、 「…んっ…!♡」  僕のなかにあるバイブが振動をはじめ、ガクッと腰が跳ねる。  ……ハルヒさんが体を返し、僕のことを少し叱るような眼差しで見下ろす。 「ねぇハヅキ、だからね、だから、…だから俺今、正直すごく自分勝手になっちゃいそうなの…。でも絶対君に嫌われたくな……」  僕はハルヒさんの唇を唇でふさいだ。  チリンッと首輪の鈴が鳴った。ややつま先立ちになって、彼のうなじを両腕で抱きよせて、恥ずかしいランジェリーを身につけた体を彼に押しつけて…――目をつむり、その唇をあむあむと食んで、…なぜか自然とぐるぐるぐる…と猫のように喉を鳴らして。 「……ん…♡ ん…♡」  ぺろぺろと彼の唇を甘える猫のように舐める。  こんなことをしながら、小刻みに震えるバイブを――それもその操作を完全にハルヒさんにゆだねているバイブを――なかに入れていると、だんだん甘イきしそうなくらい気持ちよくなってくる。ましてつま先立ちをするとそこが自然にきゅっと締まって、余計快感が増す。  僕は今恋猫――春の季節に発情したいやらしい猫――なのだ。 「……は…、……」  しかし期待して待っていても返ってこない彼の唇や舌に、僕は寂しくなりながらもじーーっと、ハルヒさんの困惑したような切ない伏し目を見上げる。 「何をされても、僕、絶対に貴方のことを嫌いになんかなりません…――だから我慢しないで……、僕のこと、今夜は貴方の恣にして…、たくさん、たくさんいじめてください……」  何より僕自身がそれを望んでいるのだから――。  するとハルヒさんはその黒い前髪の下の凛々しい眉をひそめ、 「……っ、…も、もう知らないからねハヅキ、あとで文句言われても俺、…俺は、悪くないから、…たぶん…、…――っ」  そして僕の両頬をその強引な手のひらではさみ込みながら上向かせると、僕の唇にななめから唇で噛みついてきた。

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