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「ん…、う、あぁ、っハヅキ、…」  とハルヒさんが色っぽく眉をひそめ、ぴくんっと鼠径部や下腹部を跳ねさせる。  ソファに座っているハルヒさんの開かれた脚のあいだ、その床にひざまずいている僕は今、彼の勃起した陰茎の根本をやさしくつかみ、それの口内に入るかぎりの範囲をじゅぽっじゅぽっとしゃぶっていた。 「んっ…♡ んっ…♡ んっ…♡」  早く挿れたいなぁ…――♡  とそれも僕は、興奮のあまり勃起している自分の陰茎をよそに、自分の膣口をくちゅくちゅと撫でまわしている。――  先ほど僕のなかにハルヒさんが射精した、そのあと…――。  ハルヒさんは射精後も、ソファの上でほとんど四つんばいの体勢だった僕のなかから陰茎を抜きとることはせず――それはそのままの状態で行われるという「神氣補給」のためだろうが――、またあのバックの体位での、そもそも唇同士をあわせた状態でのフィニッシュであったのもあっては、僕たちはあのまま自然と唇をはみ合うキスをしはじめた。  そして、彼の目元に垂れ下がっているその黒いつややかな長い前髪は、まるで黒曜(こくよう)(せき)でできた鍾乳(しょうにゅう)(どう)のつらら石のように、ときどきなまあたたかい艶の雫を僕の肩に落とした。  しかしそのキスのさなか、目をつむっていた僕がそっと薄目を開けると……いつの間にかハルヒさんは銀髪に、またその尖端(せんたん)がそり返った長いまつ毛の色もその色に戻っていた。――つまり彼としてはもういよいよ「終わり」のつもりなのだろうと、そのことによって察した僕ではあったが、――ただ僕の衣装(黒猫の耳としっぽ、それから赤い首輪にチェーンリード、そして花嫁風のベビードールとランジェリー)や、このワンルームにいたってはなんら変化がなかった。  そうして僕の見慣れた銀髪にもどったハルヒさんは、僕とのんびりとしたキスをしながら僕を慈しむような微笑を絶えずうかべていて、またお互いのとろめいた両目が出会うたび、ふっと愛おしそうな笑みをこぼして…――『気持ちよかった、ありがと…』なんてセクシーなかすれ声で言って、『無理させちゃった…? 体、だいじょうぶ…?』なんて心配そうに眉尻を下げて、それなのに僕の恍惚とした顔を、体を眺めては『射精()したあとに見ても、やっぱりめっちゃかわいいね…』なんて満足そうに頬を赤らめたままほほ笑んで……、  それもあまつさえ彼は、僕のベビードールの薄い布のうえから、僕の下腹部――そのとき彼の精液をちゅうちゅうと吸い取って、それをなかにため込もうとドクンドクン脈打っている、こと敏感になっていた子宮――をやさしく…愛おしそうに撫でまわし、…『ぁ…♡』とそれに感じてしまった僕がぴくんっと腰を跳ねさせると、『あ、ごめんね…』なんてしゅんとした微笑を浮かべた。  それからは、ぎゅうっと後ろから僕を抱きしめるだけ…――あぁ…と僕はむっとしながらうつむき、心のなかで思わず(なげ)いた。  ハルヒさんのそのすべてが、僕の「もっとえっちしたかったのに」という惜春(せきしゅん)をより増大させたのである。  ……いや、そもそもこの「神域」が解除されない限り、たとえああして絶頂できないだの、絶頂してもどんどん渇望状態に陥ってしまうだの、という「呪い」が解かれたとて、僕は「恋猫」――春の季節、発情期をむかえた猫――状態のままなのだ。  となれば今の僕が「まだしたい」と、「もっとハルヒさんが欲しい」などと思ってしまうのは、その実致し方ないことではないか…――それなのにこれで終わりだなんて…――と、自己正当化まじりに彼をちょっと憎らしく思っていた僕は、そこでふとあることに気がついた。  いや、諦めるにはまだ早いかもしれない…――そうして僕は、自分の肩の上に顎をおいているハルヒさんへふと顔を向け、そのひとの優しい紅い瞳を半目開きで見つめながら、 『ハルヒさんは…もう満足出来たんですか……?』  と切なげに――しかし思惑ありきに探りを入れた。  すると彼は『え…?』と少しのあいだきょとんとしたが、すぐににっこりと笑い、 『…あは、…えっと……まあ、満足…した、っちゃあ…した…、…けど……』  ……だなんて、どうも煮え切らない返答をしたのだが。――しかし僕はもう少し踏み込んでみる。  彼の頬を白手袋の片手でそっとおさえると、自分からそのひとの唇をちゅぷ…ちゅう…と何度か食んで、吸ってから…また半目開きで、そのひとの潤んだ暗い紅い瞳をじっと見つめる。 『…じゃあ僕が…まだ貴方が足りない…、もっと貴方が欲しいって言ったら…ご迷惑でしょうか…?』 『……ぇ、…ぁ、…』  するとハルヒさんは目を伏せ、その長い銀のまつ毛の下で紅い瞳を泳がせながら、ごにょごにょとこう言ったのだ。 『め、迷惑なんかじゃ、ないけど、ぜんぜん、…ただその、でも俺、それこそわかんないから、…このままじゃ、…朝まで、とか…――あの、ハヅキこそ迷惑かな、…どうかな、って……』 『……、…』  先ほどの「気づき」にいよいよ確信を得た僕はニヤリとした。  そもそもこのワンルームは、ハルヒさんが神の力をもって展開した「神域」なのである。――なお僕の服飾が変わっていないのは、およそ「まだしたい」僕の意思ゆえに違いないだろうが、――彼が自分本来の銀髪に戻っていながらにこの神域を解除しないのは、僕への気づかいから大っぴらに意思表示はできないものの、その実彼も密かに「期待」しているからなのではないか。  つまりハルヒさんも本当は「まだしたい」のだろう。――そもそもハルヒさんがそれを期待するだけの材料は十分だったはずである。…なぜなら先ほどのフィニッシュの折、僕は「イッちゃだめ、まだえっちしたい」と彼に訴えかけていたからだ。  ……それさえわかれば、今の僕には十分だった。  それこそもうその気ではないハルヒさんに無理強いする、というまでの豪胆な勇気など小心者の僕にはないが、彼のその消極的な態度の原因がおよそ僕への気づかいゆえの遠慮なら、僕はあるいはこのときに大胆に、積極的になっても許される――彼に嫌がられない、嫌われない――のではないか。  それで僕はなぜとは言わずに『ソファに座って…』とハルヒさんに指示した。  するとハルヒさんはちょっと驚いた風に目を大きくしたものの、『う、うん』とまんざらでもなさそうにニヤッとしながら目を伏せ、素直にソファに腰かけてくれた――なおそのときにわかったのだが、彼は髪型やその髪の色こそ元に戻っていても、前を開け放した白いワイシャツは着たままだった――ので、…僕は彼の両膝をひらきつつ、その足のあいだ、床に膝をついて……、  ただその際にちょっとだけハルヒさんのサド心をくすぐってやろうかと、流れるようなさり気ない手つきで、自分の赤い首輪から垂れ下がっていたチェーンリードの取っ手を、そのひとの片手に握らせた。  それから――ぼーっとした顔で僕を見下ろすハルヒさんのことをうっとりと見上げながら、勃起のこわばりがゆるまりこうべを垂れている、しかしそれでも大きなそのひとの陰茎を口にふくんだ。 『またお口でお掃除してあげますね…』と自分の横髪と頭にかぶっているベールを片耳にかけつつ、ハルヒさんにほほ笑みかけてから……まずは口に含められるかぎりの範囲を口内へ迎え、それにまとわりついたままの僕の薔薇のにおいの愛液や、彼の白檀が香る精液をていねいに、くちゅくちゅ、れろれろと舐めとり、またそれらや尿道に残った精液をちゅぷ…ちゅぷ…と唇で上へ上へとかき寄せて…――そしてちゅぷん、と先端までしごき取ったそれらを、ハルヒさんと見つめ合ったままこくんと飲み込む。 『…っはぁ……♡ ……ん…♡』  それからそのひとのまだやや柔らかい陰茎をつかみ、横へかたむけた顔をそれの根本に寄せてぺろ、ぺろ…彼の陰嚢もやさしくぺろ…ぺろ――ぺろー…と陰嚢から裏筋を舐めあげ、そうして「お掃除」を終えたあとはもちろん、彼の朱色の亀頭をまたぱくりとくわえ、それからはこうして……。 「……んっ…♡ …んっ…♡ …んっ…♡」  こうして色っぽい苦悶顔のハルヒさんを見上げながら、じゅぽっじゅぽっじゅぽっとフェラチオをしている、この今にいたる…――というわけだ。  ……それも結婚指輪をつけたままの、白いシルクの手袋をはめた左手で根本をぐっ…ぐっとしごきながら、そうしてみだらにじゅるじゅると音を立ててしゃぶってあげると、ハルヒさんはチラとしばしば僕の薬指に光るその指輪を見て、また僕の上下する顔を見て、…と、彼、僕のその結婚指輪になにか満たされるもの、あるいは興奮するものがあるらしかった。  ましてや、 「ぁ、…手袋、なんかヤバ……っ」  と眉をひそめながら、そうなまめかしい低い声で言うハルヒさんは、どうもこのシルクの手袋――このつるつる、すべすべとした感触で陰茎をしごかれることに、言いしれぬ快感を覚えているらしい。 「…んん…♡ ……っふ…♡ んっ…♡ んっ…♡」  ただ僕も僕で、このセクシーな花嫁風の衣装を身に着けていながら赤い首輪をし、それにつながる冷たい銀のチェーンリードを夫に握られて、更にはそのひとの足下にひざまずいて――そしてその夫との結婚指輪をはめた手で、そのひとの陰茎をしごきながら――口淫している、それもそのひとの顔を見上げながら、そのひとの欲情した鋭い両目に見下ろされながら、というこの状態に、何か背徳的な、(実情は違えど)夫に奉仕させられているというような、表現しつくせないちょっと危険な興奮をおぼえていた。  ……そのせいもあり、僕はどんどん愛液があふれ出てくる自分の膣口をくちゅくちゅとなで回すのをやめられないのだ。――なお、この手袋のシルクの生地、素手とはまた違ったすべすべ、にゅるにゅるとした何ともいえない感触がして、たしかにとても気持ちがいい。 「…ふぁ…♡ …()ごい…♡ もうおっきく()った…♡ ――ふふ…♡ …はぁ…♡」  ……僕が口から取り出したハルヒさんの陰茎は、もう十分硬質を取り戻している。手放せば自然と彼のひらたいあめ色の下腹部に張り付いてしまうほどである。――が、僕はわざと左手でくちゅくちゅくちゅとそれをしごきながら膝立ちになり、ハルヒさんを見上げてうっとりとほほ笑む。そして、 「……ん…♡ はは、恥ずかしいにゃあ…♡ ハルヒさんのおちんちん舐めているだけで興奮して…僕、乳首が勃っちゃって……♡」  なんて誘惑するために、自分の勃起し赤らんだ乳頭にくにくにと、そのひとの亀頭をこすりつけながら――わざとそこに着けたニップルクリップのリボンのカサカサもこすりつけながら――ピンクのリボンから垂れたチェーンの先、その小さな鈴をチリチリとわざと鳴らしながら……ふと目を伏せ、微笑んだままそのみだらな光景を見下ろす。 「はぁ…♡ ハルヒさんのおちんちん、すごく熱い…♡ んん…♡ ぬるぬるで、きもちいいです……♡」 「……、…、…」  ゴキュッとハルヒさんの喉が甲高い音を立てた。  はっきりと聞こえたその音に、僕は上目遣いで彼を見上げる。――彼は顔を赤らめ、切ない顔をして僕を見下ろしているが、…何かまだ逡巡しているようで、僕と目があってもなにも言わない。 「……、…、…」 「……ふふ…♡ ……」  僕はおもむろに立ち上がりざま、ソファに膝をつき――片手ではハルヒさんの白いワイシャツをまとった肩をつかみ、さらにもう片手で真上に立てた彼の長大な勃起にまたがって、それの先端をくちゅくちゅと自分の膣口にこすりつける。  すると、 「……、ねぇハヅキ、俺、…でも、その……」  とハルヒさんは苦々しい笑みをうかべ、しかし熱くなった両手で僕の頬を包みこむと、自分の顔のほうへやさしく引き寄せる――僕は彼のその所作に、理性で我慢しようにもしきれていないのを感じ、内心ときめきながら――顔を近寄せつつ目を伏せ、彼の唇にちゅ…とキスをした。 「……ハヅキ、いいの…?」――しかし、至近距離で僕の唇にそうたしかめるハルヒさんのその薄目は、男の欲情をあらわす鋭利なものを帯びている。 「えっちするのはもちろん嬉しいよ…、でも俺、君に求めてもらえてるの今、正直めっちゃうれしくて…――ただ逆にうれしすぎて、その…我慢しきれないかもしんなくて……」 「…挿れて、いいですか…?」  ……僕はあえて返答はせず、ただそうハルヒさんに聞いたが、 「ぁ゛、…っはは、もう挿れてるじゃん、…」  なんてハルヒさんがちょっと呆れたように笑った通り、聞きながらちゅぷ…と彼の亀頭を膣口に押し込んでしまっていた。  ただ、ほとんど無意識で…――僕も我慢しようにも、体のほうではもうそれができなかったのだ。  …もうここまできては……にゅぷぷぷ…とお尻を沈めてゆく。 「は、♡ ぁ…っ♡ ――〜〜っあぁ、♡♡」  きもち、いい…♡ と眉目がこわばる。  熱い、硬い、太い、…やがて奥に突き当たったそのひとの亀頭に、僕は薄目のままハルヒさんに微笑みかけた。 「……はぁ…♡ 本当に…朝まで…なんて、…そんなに僕のこと、求めてくれるんですか…? …というか、求め…られます…? そんなに……僕の、こと……」  しかし僕は言っている最中に弱気になって、眉尻が下がってしまった。…僕の中にはどうしたっていまだ根強い「僕なんて」があるのだった。我ながら面倒くさいよな、と、申し訳なくなる。 「…当たり前じゃん、…」――ハルヒさんは怒ったような顔をした。 「君はこんなに綺麗なんだし、…てかそれはそうだけど、だからこそ、…そういうこと言われると俺、ほんとにハヅキを抱きつぶしちゃうかもしんないんだってば…。…あのね、ハヅキ、俺ね…――」  ハルヒさんの切なく細まった両目が、不安げにじっと僕の目を見つめる。 「君とウワハルは、もちろん同じ存在だけど…、でも、ハヅキはハヅキだって考えてんの…。だから…――ウエの場合は、何千年も一緒にいて、これくらいなら許されるだろうなとか、むしろ喜ぶだろうなっていうのがわかってるけど…――でもハヅキはさ、その…な、なんていうの、…」  そしてハルヒさんはしどもどと、こう一生懸命につづける。 「まだわかんないっていうか、なんだろう、あの、…やり過ぎちゃったりしたら怖いし、俺、君のことはちゃんと大切にしたいっていうか、君をちゃんと気遣いたいっていうか、…なんて、いうか、…わ、わかる、? わかって、くれる、? 俺が何言いたいか、…」 「……、…」  ちょっと意外だったので、一拍ばかりきょとんとしてしまったのだが――。 「ふふ、――あの…はい、わかるような気がします…。――もしかして、ハルヒさん……」  なんとなくハルヒさんの言いたいことが伝わってきた僕は、思わず笑ってしまった。

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