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 はじめはあのまま正常位での挿入だった。  ……僕はベッドの上であお向けになって、膝を立てた両脚を大きく開き、あたかもハルヒさんを迎え入れようというその体勢で…――しかし、自分の膣口に挿入されかけた彼のしめった熱い亀頭を、「だめ…」と一旦手のひらでやさしく防いだ。 「待って…」 「…え…?」  ハルヒさんは当然きょとんとして僕を見た。  なおそのとき彼は挿入のため、僕の脚のあいだに腰の位置をひくく留める膝立ち――正座に近い膝立ち――でいた。  ……僕は彼を見下げ、しかし自分も「欲しい」あまり腰をくねらせながらも、こう小声で彼に頼んだ。 「もし誰かに見られたら…恥ずかしい…から…、カーテン…閉めてください……」  そう…()()()()()()()()()()人目を気にするだけの頭はあったのである。  ……するとハルヒさんは「かわい…」とニヤニヤしながら、「うんうん、わかったぁ」と快くベッドの天蓋についた、シルクのクリーム色のカーテンを閉め切ってくれた。するとこの華美なロココ調のクイーンサイズのベッドは、そのカーテンにすっぽりと包み込まれるようになり、ある種の密室状態となった。  そうなれば多少の安心感を得られた僕は、あらためて――斜め下へ顎をひき、唇にはゆるくつくった拳の、その人差し指の角ばった第二関節を押し当てて、またぎゅっと眉を寄せ、目をつむって……。 「ん…っ♡ ……ンぅうっ…♡ …〜〜〜っ♡♡」  僕のなかをゆっくりと押し広げてゆきながら、ぐぷぷぷぷぷ……と奥へ向けて進み入ってくるハルヒさんの勃起した太い、硬い陰茎に――その挿入とともに、背すじから後頭部まで駆けぬけるぞくぞくぞく…としたさざめく快感に――思わずびくっと跳ねてしまいそうな腰をこわらばらせ、それでなんとかその反応をこらえた。  しかし、やがてくぅ…と僕の子宮口を優しく押し上げた彼の亀頭に、結局は「はん、♡」と、ぴくっと腰が軽く丸まってしまったが。 「……っは、♡ …はぁ、♡ …はぁ……♡」  そして僕は目をつむったまま、――すご…ぃ、♡  そう思わず心の中でひとりごちた。――おっき…熱い…、すごく太い…硬い…♡ ハルヒさんのおちんちん、僕のいちばん奥まで、…きてる……♡  ……といって、もちろんたかだか一週間のこととはいえ、いや、しかしされど一週間…僕は毎日ハルヒさんに抱かれている(それに日に三度も)。――したがって、何も今回も彼のその勃起した陰茎の感触に新鮮味を感じていたわけではないのだが、それにしても僕は毎回彼のそれにそう感動してしまうのだった。  彼の勃起した陰茎の太さ、硬さ、熱さ、長さ、いやそれのみならず、そのややカリの張った亀頭の形や太い血管のこりこりとした感じなどまで、どうしてか毎度つぶさに伝わってくるようなのだ。  すると(彼のが大きいほうとはいえ)無論もうちっとも痛くはないのだが、ただとにかくいつも自分のなかが限界まで「いっぱい」になっている感、そこの容量目いっぱい詰め込まれている感というか、…それが少しだけ苦しいようで、息もしにくくはなるものの――それ以上に……、 「……はぁ…♡ …んん……♡」  僕は下腹部をする…すると撫でる。  いつも、いつも……愛おしいといった感じの充足感、幸福感がなかに満ちあふれ、ましてや何か、彼のその感触はある好意的ないやらしさがあって僕の興奮をさそうし――また彼が奥まで入ってきただけで生まれるそのぞくぞくとする重たい快感は、僕の全身をじわりと火照らせて汗で濡らし、それでいて手足の指先まで脱力をさせ…――更には僕の頭を即座にぽーっとした恍惚状態にまで鈍らせ、そして僕の呼吸を上ずらせながら短くさせるのだ。  要するに毎回僕がうっとりとしながらちょっと感動してしまうくらい、ハルヒさんの陰茎は挿れられただけでもおそろしく気持ちがよかった。  何ならこれまで、僕は挿れられただけで軽微な絶頂をむかえてしまうことさえしばしばあったのだが、――今回はそこまではいかないにせよ、それにしたってそれだけで、危ういところまでは持ち上げられてしまった。 「はぁーー…」と根本まで挿れたのち、ハルヒさんが感じ入ったようなため息をついた。 「……ハヅキんなかいつ挿れても最高にきもちいぃ〜…――熱くてぬるぬるで…全部包み込んでくれるかんじなのに、いつ挿れてもずっとキツキツ……あとまだ挿れただけなのに、俺のに勝手ににゅるにゅる絡みついてくるし……」 「……、…、…」  なお、ハルヒさんもはじめの一回は特によくこうしたことを言ってくれる。すなわち彼も僕の膣内にいつも感動してくれているらしかった。が、…なんとなく…僕はいつもそれを伝えられると、いささか恥ずかしい気分にさせられるのだ。――いい加減それにも慣れそうなものだが、しかし、僕の耳や顔やは毎度彼のそれにカーっと熱くなってしまう。 「…ぁ、♡」――僕はふいに奥をとん…と突かれて腰をびくっとさせながら、思わず上ずった声をあげた。  ハルヒさんは僕の立てられた太ももを両方抱きよせ、そのままとんとんとん…と弱い力加減ながら、すばやく奥を突いてくる。  僕は斜め下へ顎を引き、目をつむったまま眉を寄せ、 「ん…♡ ん…♡ ん…♡ …っは…♡ っおねが…ゆ、ゆっくり、して、♡ …は…ぁん…♡ はじめは、…ぁ…♡ ゆっくり、…は、ハルヒさ…っの、すごくおっきい、♡ ふと、太いから、♡」  閉ざした上まぶたの裏にじわ…と熱情の涙さえにじんでくる。――先ほどにも思ったことだが、事実彼のは太いので、そうずちゅずちゅと速く動かれると、結果僕のなか全体をその太さで圧迫するそれに、そのままずりずりと強い力で素早くこすられるようなのだ。…それもこと、そうされるとつらくなるくらい、なかにある僕の陰茎の根本あたりに、ツーンとした鋭い快感が次々と押し迫ってくる。またもとより、奥をとんとんとされる重く子宮に響きわたるようなその快感は言うまでもない。 「ふふ…かわいぃハヅキ…♡ 俺の、そんなに気持ちいい……?」 「…〜〜〜っ♡♡」  僕は強く眉をひそめながらコクコクコクと頷いた。――それから、唇を開けば否応なく「ぁ…♡ ぁ…♡」とあがってしまう声をこらえようと努力はしつつ(話すためだ)、自分の前ももを掴んでいる彼の手の指の背にちょんと指先で触れ、こうつづける。 「は…っ♡ いきなり…速くされ、たら…♡ は、♡ ん、♡ す、すぐ…♡ イッちゃぅ……♡ ゆっくり…ゆっくりして…お願い、…ハルヒさん、僕、また…おかしくなっ…んっ…♡」 「…んー…? ゆっくり……?」  とハルヒさんはいじわるな含みのある調子で言いながら前のめり、自分の手に触れた僕の片手と、そして僕の唇に押し当てられている拳を取ってベッドに押し付けると、唇をはむ…と一度食むようなキスをしてきて、そうして僕の気を引いてくる。――僕は薄目を開けて彼のやや鋭い、しかし僕を愛おしそうに眺めおろして微笑している、そのひとのタレ目を見上げる。 「…ぁ…♡ ぁ…♡ ハルヒ、さん…?♡ ゆっ…くり…♡」 「でもハヅキ…」――ハルヒさんの両目がす…とすねたように鋭く細められる。 「俺その前に言いたいことがあるんだけどぉー…、…君、このまえ俺と約束してくれたでしょ…? せめてえっちの最中だけでも、俺のこと〝ハルヒ〟って呼び捨てにしてくれるって……」 「んっ…ぁ…♡ ご…ごめんなさ、ぁんっ♡ んっ♡ んっ♡ んっ♡」  僕はまたぎゅっと目をつむり、斜へ顔を伏せた。ハルヒさんの腰がまるで「お仕置き」とでもいうかのように、ぱちゅぱちゅぱちゅと余計速く動き、となれば当然僕の奥が猛攻の羽目にあっているせいだ。  ……そうなのだった。――僕は彼に、もう夫となった自分のことは「ハルヒ」と呼び捨てにして、とあれから何度言われてもなお、結局は彼を「ハルヒさん」と敬称付きで呼んでしまう。し、その上どうしてもいまだ敬語が抜けない。  だが、それはもちろん夫である彼とのあいだに他人行儀な壁を作りたいだとか、決してそうではない。もちろんそうではないのだが…、やはりどうしてもはじめからそうだとそれが癖のようになってしまっているのと、どうしても彼に対しては――長年リスペクトしてきた「推し」という――敬愛の感覚が抜けないので、するとタメ口の呼び捨ては、僕にはまだ無礼なほど軽々しいように思われて、努めてそうしようにもできないくらいの心理的はばかりがある。  ――それで数日前、それでもやはりそのことを寂しがったハルヒさんが『じゃあはじめはえっちの間だけでもいいから、えっち中(挿入中)くらい俺のこと呼び捨てにして?(それで少しずつ慣らしていこう)』と、…僕はそれを二つ返事で(だく)し、そうしてその約束をするにいたった。  ……のだが、それでも気を抜くとああして最中でさえ僕は彼を「ハルヒさん」と呼んでしまうこともしばしば…、するとこういうちょっとした「(えっちな)お仕置き」をされてしまうのだ…――。 「ぁ♡ ぁ♡ ぁ♡ はっ…♡ ハルヒ…っ♡」  僕は慌てて喘ぎながらもそう呼び名を訂正する。 「ハルヒ、おねがいっ…ゆっくり、…して…っ♡」 「…えーー…? ふふ…じゃあハヅキが俺の目を見ながら、〝ハルヒのおっきいおちんちん、すごく気持ちよくって大好き〟って言ってくれたら、ゆっくり動いてあげてもいいよ……?」 「……ぅ、…、…、…」  また僕にそういうちょっと恥ずかしいことを言わせたいらしい…――ハルヒさんはほとんど毎回こういうことを言って、と僕に強いてくる。…ただ僕はドMなところがあるので、正直それを言わされるとなると、体中が羞恥で熱くなる一方感じてしまって、陰茎もなかもキュンっとしてしまうのだが(つまり何だかんだ言って、僕もそのちょっとした羞恥プレイを楽しんでいる)。 「ほら、どうするの…?」――それもハルヒさんは僕の唇に唇をつけたまま、優しくそう急かしてくる。…ぱちゅぱちゅとやさしくも速い動きをやめないまま。 「…ぁ…♡ ぁ…♡ ぁ…♡ 〜〜っは、ハルヒの…♡」  と僕はひそめた眉のその両端を羞恥に下げ、しかし薄くとも目は開けて指定通り、間近にある彼のその銀の長いまつげに縁どられた紅い瞳を見つめる。 「ハルヒの…っおっきなおちんちん、♡ すごく…あ、♡ 奥、♡ おっ奥まで、…僕のいちばんおくまで、♡ はぁ、あ…っ♡ 届いて…んう、♡ ぁぅ…♡ っ僕のなか、ぜんぶきもちぃい…っ♡ ハルヒのおちんちんきもちいい、♡ だいすき…っ♡」  僕は次々と迫ってくる快感のあまり、もはや今思うとおりのことをつたなく口にする他なかった。…なぜって気持ち良すぎて、ハルヒさんに指定されたセリフのほとんどが頭からすっぽぬけてしまったからである。  すると嬉しそうに優しく両目を細めたハルヒさんは、 「あは…かわいーなぁハヅキったら…、恥ずかしそうな顔してるくせに、そうやって俺が頼んだのよりももーっとかわいーこと言っちゃうんだ…? もう〜〜…俺もっ…えへ…♡ 君のなか、すごくきもちよくって大好き…――じゃあほら、〝ハルヒ大好きのぎゅーっ〟は…?」  と言いながら一旦とまり、ベッドに押さえつけていた僕の両手首を解放した。  そして僕はというと、その言葉をもって彼にいま何を求められたのかをわかっている――これはこの一週間のうちに定まった、いわば「お決まりのセリフ」のひとつである――ので、おもむろに彼のわきの下から両腕をまわし、「ぎゅーっ」と彼のたくましい背中を強く抱き寄せ、また両脚もすねをクロスさせるよう彼の腰の裏に巻きつけて、そうして全身でしがみつく。 「ぎゅ、ぎゅぅ…♡ は…ハルヒ…だ、大好き……♡」  さらにそうハルヒさんの耳に照れながら囁く。  ……非常に、ひじょ〜〜にこっ恥ずかしい…が、「ハルヒ大好きのぎゅーっ」はここまでがセットなのである。  しかし…――。 「俺も大好きだよ…♡ ところでねえ――ゆっくりってこう…? ねえハヅキ…っ」  と僕の耳もと、いたずらっ子のような調子で笑うハルヒさんは、ずぷっずぷっずぷっと――そのセリフに反して、今度は浅くも力強く、速く、僕の奥をばかりぐんっぐんっぐんっと強く猛烈に押し上げてくる。  ハルヒさんのこういういたずらなところ、もっというと、こういうときの彼の少し粗野な低い声を聞くと、やっぱり普段ゆるふわぁ…とおっとり柔和な彼も男なんだなぁなんて、ついときめいてしまう僕だ。が、  約束とちが、 「…うアっ…?♡ あ…っ♡ あぅ…っ♡ ぁあ…っ♡ ひ、♡ ち、ちが、あぁっ…♡ ひぅ、♡ っやくそくとちが…っァ、♡ あぁ、♡ っこ、こんらのゆっくりじゃらぃい、♡」 「…えへ、♡ だってぎゅーってしてくるハヅキ可愛いすぎたんだも〜ん、ふふふっ…――でも、別に痛いわけじゃないんだからいーでしょ…? 君、ただ俺のが気持ちよすぎるだけなんだから、…」 「……ぅ、♡ んうぅ…っ♡ ……、…」  そう言って僕の首筋にむしゃぶりついてくるハルヒさんに誘われ、僕は彼のほうへ顔を動かす。と、すぐに彼の唇に唇を捉えられ、ちゅうっと吸いつかれる。 「…んん…♡ ん、♡」  ……彼は最中キスをしたいとき、こうして(かまってかまって、と甘えてじゃれつくわんこのように)僕の首筋や耳をベロベロ舐めてくることが多いので、だんだん僕も彼のそれが「キスしようよの合図(おねだり)」なのだとわかってきたのだ。 「んっ♡ んっ♡ んっ♡」  もう……♡ 僕はハルヒさんに唇をむさぼられながら、彼の背中に回した両腕を彼のうなじにかけ直す。  まあ…ハルヒさんの言うことはごもっともではあった。  実際こうされても痛みなどまったく生じていないのだ。そして実際、全くおっしゃるとおり、これはただ「気持ちよすぎるだけ」なのだ。――だがもはやこうされるだけで、ほとんど「快感責め」にあっているような危機感、そして全身に脂汗がにじむようなある種のつらさが込み上げてくるのだ。 「…ン…ッ!♡ …ンん…――っ!♡♡♡」  で……僕のお尻が腰からまくれ上がるように軽く浮き、僕は脚から腕からでハルヒさんにしがみつきながら――それも、キスをされながらイッてしまった…って、かえって僕は彼にキスをされながら動かれると、余計イきやすくなってしまうのだが……。  いや、それでも今回は、我ながらまだ持ったほうである…――

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