6 / 8

第6話

6.Bye〈 さよなら〉 葉ちゃんをそっとうかがうと、 薄い笑みを浮かべ、一気にビールを飲み干した。 俺には願ってもつかない、程よい筋肉のついた胸、引き締まった上半身に海水をまとわりつかせ、 濡れて張り付いた前髪を片手で後ろに撫でつかせる。 意外と広い額に、 朝の光が眩しいのか、細めたまなざしでこちらを見ている。 ( 波に浮かびながら、かわした言葉は続いている、 そんな言葉を伝えてくるまなざしに安心した俺 ) 突然、横から腕を引かれて 志奈子のイラっとした顔が目に入った。 「何?」 「ハルト…どうしたの?」 「何?」 もう一回返した俺と、離れた所に立っている葉ちゃんを代わる代わる見た志奈子。 何かを吹っ切る様に 思いっきり抱きついてきた。 「ちょっ、」 驚いた俺が慌てて身体を離すと、 「お暑いな〜」 とからかうよう声。 「ラブラブダネ〜」とか おっさんくさい掛け声聴きながら、 志奈子の目を覗き込むと、 整えた眉を顰めて一瞬視線を避ける。 「そうなの、ラブラブよ 結婚するんだから」 と、俺もびっくりするような発言 「え?!」 俺が目を白黒させたのと、周囲に宣言したことで気分を変えたのか、 「うーん、そのつもり、将来ハルトが金持ちになったらね」 と冗談に流した。 みんなが口々に、大変だとか頑張れとか言ってる間に、 知り合い達の荷物は岸壁に降ろされ そこで、短い旅は終わり。 この後まだクルージングを続けて半島をまわる俺たちクルーとは別れて、 彼らは陸路でそれぞれの目的に向かうらしい。 志奈子がそれぞれに声をかけて行く先を聞く中、 俺は葉ちゃんの行く先が気になった。 だけど、志奈子はわざと葉ちゃんには尋ねずに、 結局彼の行く先は分からずじまい。

ともだちにシェアしよう!