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第5話 お人形遊び【R-18】
酔い覚ましの水を飲んだあと、アランはシャワーを浴びると、いつもより三十分も早くベッドに入ってしまった。寝室の空調を調節し、カーテンを隙間なく閉める。ドアの隙間から、当然のような顔をしてイリスが入ってくる。彼女は自分のクッションに丸くなり、前足の上にあごをのせて、満足げに目を閉じた。
「あなたはいいですね……」
今夜ばかりは、ユウリも彼女が羨ましいと感じてしまった。このまま朝まで平穏な静寂の中で過ごせたら、どんなにいいだろう。いつもは宵っぱりで、ユウリが引っ張っていかないとなかなか寝ないアランなのに、よりによって今日に限って……とユウリは思わずにはいられなかった。
廊下を歩く間、ユウリはこっそりと下半身への神経回路の接続を下げた。バレたら酷い仕置きを受けるかもしれないが、これから始まること思うと何かせずにはいられなかった。重い足取りで客室の前へ向かい、どうしても手が上がらず扉の前で立ち尽くしていると、内側から扉が音もなく開いた。
「ユウリ、なにしてる。早く入りなさい」
「はい、レナード様」
中に入ると背後でドアが閉まる。レナードが内鍵をかける音を聞きユウリの肩が跳ねた。いつもであれば、ここからはレナードのお楽しみの時間となるが、今日は様子が違うようだった。
「そこに座りなさい、見せたいものがある」
「わかりました」
革張りのソファに腰を下ろすと、レナードは一枚の写真を差し出した。ユウリによく似ているが、決定的に違うところがある。首元にインジケーターがない。彼はユウリのモデルになった人物だ。
画面の端に向けられる屈託のない笑顔。その視線はカメラではなく別の方向を向いている。レナードはさらに何枚か、同じアングルの写真を無言で並べていく。ユウリは一枚一枚を確認したのち、意図を問うようにレナードを見上げた。
「この写真と同じ顔をしてみろ」
「え……?」
「聞こえなかったのか。これと同じ顔で笑って見せろ」
レナードの指が、神経質に机の縁を叩く。ユウリはもう一度写真の青年を見つめ、口角の角度や目元の緊張を微調整した。
「どう、でしょうか」
「…………」
鏡のない部屋では細かい表情の確認はできない。上手く再現できているのか自信がなく、不安が胸の奥で微かに揺れる。レナードは黙ったままユウリを見据えていたが、やがてゆっくりと口を開いた。
「ユウリ、俺に『愛してる』と言ってみろ」
「……? 愛してます……レナード様」
「本当か?」
「は、はい……」
どう返すべきか分からず、ユウリは言葉に詰まった。レナードの言葉には逆らえない。だが、ここで求められている“正解”が何なのかも分からなかった。レナードの手がユウリの手を握りしめる。その目は、感情を抑えきれずに血走っていた。
「世界の誰よりもか?」
「……はい、レナード様」
「アイツよりもか?あの男よりも俺が好きか?」
「えっと……」
あの男とは誰のことだろう。わずかに逡巡した瞬間、レナードは握る力をさらに強めた。ユウリの細い指の関節が、みしりと軋む嫌な音を立てる。
「答えろ、ユウリ」
「あの人よりも、レナード様が好きです」
言った途端、レナードに腕を引かれ寝室へと連れ込まれる。噛み付くようなキスを受けながらシャツを脱がされ、シーツの上に押し倒される。
「ん、んん゛っ、ふ、ぅ」
「ユウリ、舌を出せ」
「はい……」
舌を差し出し、レナードのそれと絡ませる。粘膜同士を擦り付ける。くちゅくちゅ、と互いの粘膜を擦りあう下品な音とレナード荒い息が途切れることなく続く。下着は自分で下ろすように命令され、素肌になったユウリを見下ろし、レナードは残酷な笑みを浮かべた。
「足を開いて、準備して見せろ」
「わかりました……」
言われたとおり、両足を広げて中指をアナルに入れる。ローションで濡れる後孔はなんの抵抗もなく受け入れたが、レナードは満足しなかった。
「動かして、ナカを広げてみせなさい」
「は、はい……っ、ん、んぅっ」
「もっと指を入れろ、奥まで入れて抜き差しするんだ。そうだ……もっと下品にやれ、指を広げてナカも見えるように」
「ぁ、あ、あん、んう……っ」
ローションが泡立つほど指を激しくしてもレナードは許さなかった。深く入れた指を開き赤く潤んだ胎内を見せる。片手で乳首をいじるよう言われてユウリは乳輪を摘んでみせた。
「はは、いいぞユウリ。指を動かしながら、乳首の先もこねてみせろ」
「ぁ、ぁっ、れなーどさま、あっ、あんっ」
「みっともないなユウリ、なんていやらしいんだ」
続いて耳打ちされた言葉にユウリの思考が止まった。
「れ、レナード様、それは……っ」
「言うんだ、ユウリ。朝までケツを弄らせてもいいんだぞ」
「そんな、レナードさま、」
ユウリは下唇を噛んだが、レナードは狂気じみた笑みを深めるだけだった。
「『い、淫乱な僕のお尻にレナード様のペニスを挿れて、』」
「それで?最後まで言いなさい」
「っ、『たくさんセックスして下さい。僕はレナード様のオナホール人形です』……っ」
悔しかった。ユウリはただの人形ではない。学び、自分で考えて行動するアンドロイドだ。しかし、ここではそんなプライドも全て踏みにじられる。レナードが自身のペニスを取り出し、ユウリの顔の前に差し出した。ユウリは言われる前に舌をのばし、亀頭部の凹みを舐める。ピクピクと跳ねるそれは、いつもより硬く熱を持っていた。
「んっ、んっ、んぅっ、んんっ」
「舐めながらケツを弄るのも続けろ」
「ん゛、は、い……」
喉奥を突かれながら、アナルを弄っているとレナードに乳首をつねられる。快感が閾値に達しユウリはエクスタシーを迎えたが、アナル性交では射精できない設定なので、感じるのはドライオーガズムだ。背中を振るわせるユウリに気が付いたのかレナードは口の端をあげた。
「イッたのか?イくときはちゃんと言いなさい」
「は、い……イキました……っ」
「そうか、膝の上に乗って自分で挿入しろ。俺が射精するまで動き続けるように」
「わかりました、レナードさま……」
熟れきったアナルにレナードのペニスの先端を押し当てる。敏感な粘膜で熱をもったペニスを感じてしまい、腰が引けてしまう。でも従わなければもっと酷いことになる。ユウリはゆっくりと腰を落とし、太くて硬いペニスを飲み込んだ。
「あ、あああっ、ん、ああぁっぁ イク、イキます、レナードさま……っ!」
「……っ、いいぞ、ユウリ、続けるんだ……!」
「ああっ、あんっ、ぅ、あああっ 、ひ、んぐ、イくぅっ」
絶頂し敏感になったナカを擦り続けなければならない。ユウリは半泣きでレナードの首に縋りつきながら、腰を動かし続けた。パンパン、と肉同士がぶつかる音が規則正しく続く。ようやくレナードが精を放ったとき、ユウリは安堵のため息を吐いた。
「れな、レナードさま、ぼく、あの……」
「俺を『愛してる』か?」
「ひっ、レナードさま、待って、あっ、だめです、う、ううう゛〜〜……っ!!」
背中をシーツの上に倒され、大きく足を広げられる。何もかも丸見えの姿勢にされて、両足が顔の横につくほど折り曲げられる。俗にゆう『ちんぐり返し』というものだ。目の前には力なく揺れるユウリのペニスがある。いまだ挿入されたままのペニスは硬度を取り戻し、ナカでピクピク動いている。
「ユウリ、ナカを緩めて奥まで受け入れなさい」
「そ、れは、レナードさま、ゆるして下さい……!」
「駄目だ、はやくしろ」
”奥“とは結腸のことだ。ユウリが電気刺激でショートするほど激しく懊悩してしまうよう設定されている場所。そんな所にレナードのものを受け入れれば、ユウリは自分がどうなるか分からなかった。
「ぼく、こわいです、レナード様、レナード様……っ」
「ユウリ、10秒以内に受け入れないともっと酷い目に遭うぞ」
「ぁ、う、わか、わかりました、お待ち、ください」
息を吸って吐いて、ナカを緩める。上から突き刺すように挿入されたペニスがジリジリと胎内を進み、コリコリとした行き止まりにあたる。ユウリが息を止め、力を入れると締まっていた輪がゆるみ最奥への道がひらく。
「ひ、ひうっ、ん゛、ぐ、う゛ぁ、れ、にゃどさま……っ」
「……っ、うごくぞ」
「ひっ……ま、てくださ、れなーどさま、ぐるし、しょーと、しちゃいま、す……っ!」
「この前みたいに再起動しろ、きちんとナカを締めて、突かれるたびにどう感じるのか教えろ、命令だ」
「……っ!?そん、なできませ、あああぁっ、きもち、きもちいい、きもちいいっ、や、もうむり、ん゛、きもち、いいです……っれなーどさまゆるして、ゆるし、あああっ、イっちゃいます、ずっとイってる……っ!!」
「は、はは……っ!ユウリ、最高だ。お前の顔、下品で淫らで、最高にかわいいよ」
「あ、あああぁっ、れなーどさま……っ、こわれう、イク、ぁ……ッ!」
「お前は俺のものだ、一生、誰にも渡さない……!わかったか!?」
「は、はい……っ、んぅ゛、僕は、レナードさまのものです、ユウリはレナードさまの……っ!」
自分はレナードの所有物だと繰り返せば、奥を押しつぶすような動きは止めてくれてユウリは息を吸うことができた。最後はキスをしながらゆっくりとねちねちした動きで、恋人同士のように指を絡めて見つめ合うよう命令された。「好きです」「愛しています」と何度も告げて足を絡ませる。「いちばん奥にかけて」とお願いしてようやくユウリは解放された。
ようやく静かになった部屋の明かりが落とされる。充電ポッドに戻ろうとするも許可がおりず、ユウリは挿入されたままレナードと横になった。朝になったらまた愛し合おうと言われ、うなずく。ユウリに拒否権などなかった。
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