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第2話 外車の行き先
関東には複数の暴力団が存在している。
そして今現在一番の勢力を所持している北白川 組だった。
御年八十九歳の会長の孫、組長の息子が北白川美月 だ。
スーパーモデルのような容姿に体型、目にかかりそうなくらいの長さの髪は、後ろに流すようにセットしてある。
今は目立たぬよう地味なスーツの装いだが、スタイルが良すぎて一般人のようには到底見えなかった。
まぁ、一般人ではないのだが……。
「田中、俺がいつも一般人に危害を加えるのは辞めろって言ってんだろうが。ケンカしたいならよそのシマで売ってこいよ」
「二度としません、若!!」
田中は美月の運転手兼用心棒だった。
美月がやれと言えばやるし、やめろと言えば腹が立っていても辞める、そういうお目付け役だった。
「ったく、田中の美徳は素直さだけだよな……」
「エエー、オレは喧嘩も強いっすよー!!」
黒塗り高級外車の行き先は、都心外れの小さなビル。
そこでは今美月が支援している画家の個展が開催されていた。
「北白川様、ようこそおいでくださいました」
主催をしている小さな会社の社長と関係者は深々とお辞儀をして出迎えた。
「赤神 先生は来てないのか」
「先生は先程おかえりになりました」
どうやら入れ違いだったようだ。
美月は画家赤神志乃舞 が書く絵画に惚れ込んで、モデルもしたほどだった。
だが売れる絵画は美月がモデルをするものばかりで、画家として赤神志乃舞が評価されることは殆ど無かった。
「ビルの中一周してくる。田中は車で待ってろ」
主催会社の社長と美月はそのビルの中へと消えていった。
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