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第4話 掛け水

満月は美月と話しながら、内心はビビっていた。 彼が暴力団組員と知ったわけでもないのに、何故ビビっているのか、その原因は美月の容姿の良さに引いていたのだ。 何故こんなに綺麗な人は俺に話しかけてくるんだろう、そればかり気になっていた。 「さっき道着きて歩いてただろ、満月君。俺も学生時代は弓道やってたから、声掛けて話し相手になってもらおうと思ってさ。フラレたの初めてだったからビックリしたぜ」 容姿は極上の美青年美月は、誘えば誰でもついてくる。 そして暴力団組員だと知り、恐る恐る人は逃げていくのがいつものパターンだった。 しかし美月の姿が完璧に見えなかったから満月は話し相手を断ったわけではなかった。 あんな黒塗りの高級外車(運転手付き)の後部座席に座る人間と自分が一体何の話をするのだと疑問だったのだ。 けれど満月が弓道をやっていたのだと声をかけてきたという理由が知れれば、少し話すくらいはしただろう。 「しっかし、一月の寒空で道着だけで移動って寒くないのか。最近の学生はつえーな」 「試合後でしたし、それに自分代謝がいいので寒さに強いんです」 「代謝がいいからそんな背ェがデカイのか?身長何センチだよ?」 「189cmです」 「計ったのいつだ?今もっとありそうだ。俺も満月君と同じくらいタッパ欲しかったよ」 綺麗すぎる顔が自分の目の前で他愛のない話を楽しそうに話すことは今後ないのだろうと、満月は微笑ましい気分になっていた。 「筋肉のつき方も中々じゃん!うちの組の奴ら以上に無駄がない身体ってそうそうないって」 風呂に入るために服を脱いでも、イチイチ楽しそうに反応する美月に苦笑いになりながらも、服を脱ぐ美月のほうを見る。 満月も何か言おうとしたが、言えなかった。 程よく薄い筋肉のつく白い身体付きに陶器のような肌、そんな裸体に言葉が出ないほどの色気を感じたからだった。 やましい気持ちはこれっぽっちも無いはずなのに、湯船に浸かる前だが熱く火照り反応し始めた身体は、美月の身体を見ないようにする方法しなかった。 こんなところで醜態を晒したくない満月は、湯船にに入る前の掛け水を、脳頭から浴びた。 「満月君、どうした?!それ、水だぞ」 美月は驚いた様子で見ていたが、その凶行の原因に気付いて笑った。

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