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第5話 いい湯だな
「満月君は真面目で偉いな。……周りの奴等全員お前みたいだったらめんどくさくなくていいのに。なんでそんな邪な目で俺を見るんだよって時々嫌になるぜ」
身体を洗い再度浴槽に浸かる満月の隣に落ち着いた美月は、小さな声でそう漏らした。
「北白川さん、今は俺に近付かないでください」
「反応しそうになったら、また掛け水すりゃいいだろうが」
「俺をからかっていますか?」
「うん、悪いな〜。お前の反応が面白いから」
美月は自分の容姿を利用して色んなことをしてきた。
自分を意識している相手にどのくらい視線を送れば手を出してくるか、どのくらい優しくしてやれば自分に依存するようになるか等、計算して行動する。
元々の自分を意識して行動していなかった満月が、まさか美月の裸を見てかは反応するようになったのが面白かった。
弓道の何気ない話が出来たらいいと思って声を掛けたのだが、正直可愛い奴だとからかう対象に変化しつつあった。
「満月君の身体も良かったし。男同士の付き合いに興味がないわけじゃないんだろ?」
「興味ないです」
「嘘つけ」
満月はスッと立ち上がり、湯船から上がり脱衣所に去っていった。
その真面目そうな性格は、周りには居ないタイプの人間だと思った美月は、話し相手ではなく側近として欲しくなってしまった。
この数時間でここまで好感を持った相手は満月が初めてだった。
「アイツ大学やめねぇかな」
通う大学がなくなれば、俺が拾ってやれるのになと美月は湯に浸かりながら思い始めていた。
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