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第6話 俺の満月君
早々に着替え身支度を整えた満月は、帰宅すればいいものの律儀に美月が風呂から出てくるのを待っていた。
真面目というよりも真っ直ぐな性格だったため、適当に行動するのも、適当に物事を考えることも苦手だった。
そのせいでやりたくもない弓道部部長という役柄にも抜擢されていた。
しかも断ることも苦手で、なあなあで女子とも付き合ったことがあった。
『夜霧君は私のこと好き?』
嫌いではないが、好きだとも言えなかった満月はその日にフラれた。
それでも性に興味がなかったわけではないが、自慰行為におかずとして想像できるものもなく、自然に手を動かすことで生理現象を抑えてきた。
しかし先程見た美月の肉体美にやられたことにより、生まれて初めて自慰行為のおかずが手に入れてしまい悶々とし始めていた。
「……」
身体に触れてみたいと思う相手が出来てしまったことに戸惑いながらも、自分も年相応の思春期なのを自覚し始めた。
「満月君、待っててくれたのか。お前律儀すぎじゃねぇか?」
優しそうなテノール調の声が聞こえただけで、胸が高鳴りはじめ、満月自身が恋愛対象として美月を好きになっていた。
「あ、そうだ。俺車だから満月の家まで送ってやるよ」
美月はそう言うと、満月の腕を取りスーパー銭湯の受付まできたとき、あのときの運転手がそこに来ていた。
「若っ、心配してたッスよ!!ホントに何してんですかっ?!」
「うるせぇな……、何って風呂に決まってんだろう。しかしよく俺がここにいるって分かったなぁ」
「死ぬ気で探したんですっ。若に何かあったらオレが殺されますから~」
「満月君、これ俺の目付役の田中。田中、俺の満月君、呼び捨てにすんなよ?」
『俺の満月君』というワードに田中含め満月本人すら驚きを隠せなかった。
「田中は呼び捨てさせないけど、俺は満月君呼び捨ててもいいよな、ハイ決まり。さ、飯でも行こう満月」
流れ作業のように勝手に決める美月は満月に逃げられないよう行動しているのが見ている第三者にも理解できた。
だが夜更けに出歩けない満月は、珍しく断りを入れた。
「自宅に母がいますし帰ります」
「なんでだ、満月。帰さねぇよ」
すごんだ美月は、さすが北白川組の若頭だという鋭さがあったが、満月には効かなかった。
「いえ、自分未成年ですから」
「は?嘘つくなよ、二年ならハタチだろ」
「いえ。二年でも、高二の17です」
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