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第7話 ファーストキス

「いやいや、ホント悪かったな満月。てっきり大学の二年だと思ってたわ」 美月は苦笑いで夜霧宅のアパート前まで送った。 「自分も制服着てなかったですし」 練習試合の後道着で帰宅していた満月は、どう見ても高校生には見えないほど落ち着いていた。 やはり自分は老けて見えるのだろうか、と満月は内心ショックでもあったが、こればかりは仕方がないとも思うことにした。 美月も今考えれば服を脱いだとき、身体が反応しそうになった満月の初心さは高校生の思春期だからだったのかと、納得していた。 免疫のない彼を誂ってしまったことに、無いはずの良心が痛んだ。 それでも美月は満月を気に入ってしまったので、手放すことができそうもなかった。 だから逃げられないように満月の腕を強引に引き、バランスを崩した瞬間唇を重ねた。 満月は美月にキスされた現実に驚きを隠せず、ただ呆然と立ち尽くした。 「んでも、『俺の満月君』は撤回しねぇからさ、また遊ぼうな」 間近で微笑する美月は、風呂に入るまでの彼には感じなかった色香を感じるようになってしまった満月は、カッと顔を紅くした。 その反応に満足した美月はそのまま離れていった。 「っ……北白川さん」 ようやく言葉が発せられた満月は、唇を隠しながら名を呼んだ。 「じゃあな、満月」 「あのっ、……お気を付けて!!」 「あぁ、あんがとな」 手を振る美月はの笑顔が綺麗だと感じた満月は、柄にもなく深い溜め息を吐いた。

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