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第9話 北白川組若頭北白川美月

北白川組の北白川美月は恐れられていた。 一見綺麗で美しくスタイルもいいため、老若男女関係なくモテる。 だが性格は勝ち気そして気紛れで気難しい。 彼の運転手兼用心棒の田中は、そんな美月の世話を甲斐甲斐しく尽くしているが、機嫌取りの上手い田中ですら始末に置けないでいた。 要領がよく計算高いため大体のことはうまくいっていたが、気に入ったものが世間一般では評価されることには恵まれていなかった。 幼い頃好きだった特撮ヒーロー物語は視聴が低かったので放送打ち切りに、小学生の頃に好きだった少年誌は人気がないため廃刊、学生の頃好きだったバンドは知名度がなさ過ぎて解散、そして大人になってから絵柄が好みで応援したくなるほどの腕前を持つ画家のパトロンをしているが、その画家は野心家ではなく細々と活動しているため二年に一度の個展を開かせることがやっとだった。 『俺が好きになるものは万人に受けない』 躍起になっていた今出会うことが出来た気になる人物は高校生、好きになったものは全て世間一般の評価が得られず先が見えないことが多かっただけに、大人になった今どうしても大事にしたかった。 そして手に入れたい。 容姿がよく、性格は気難しく、ケンカの強い北白川組の若頭の内面は、割と繊細だ。 きっと暴力団北白川組の御曹司として生まれてきていなかったら、これ以上に良くないことが起こっていただろう。 「それにしても、あんなに良い身体してる高校生初めて見たな」 男として女を抱いたことよりも、男に抱かれた経験がある美月は、あの少年がどんなふうに性欲に乱れるのか気になり始めていた。

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