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第11話 満月の母、月夜
太陽が沈み暗くなる時間は早くなったが、弓道部強豪校である満月の部活は早く上がれるわけではない。
そして部長という役柄なため他の部員よりも時間は長くなってしまっても仕方のないことだ。
そんな満月のスマホにショートメールの通知が来ていたことに気が付いた。
『今日は夜遅くなるから、先に夕飯食べて寝なさいね』
その相手は満月の母月夜 からのものだった。
普段なら仕事から帰ってきた月夜と満月が作った夕飯を摂るのだが、月に一度月夜の仕事が遅くなる日があるのだ。
それは蒸発した父親が残した借金を返す日だと聞いている。
借金取りが店にやってくる日は必ずと言っていいほど母の帰りが朝になることに少し前まで満月は不思議に思った。
借金を返すだけならもっと早く帰れるのではないか。
そう思ったとき、何故ダメ親父は母と結婚し自分が生まれたのか考えた。
月夜は飛び切りの美人ではないのだが、男ウケる可憐な女としての華があった。
きっとそういうことなのだろう。
『計ったのいつだ?今もっとありそうだ。俺も満月君と同じくらいタッパ欲しかったよ』
身体が大きいだけの自分を大学だと勘違いしていた美月が言った、その言葉を何故か思い出した。
今の自分なら月夜を守れるんじゃないだろうか、そんな考えが頭をよぎった。
弓を強く引くために部活で体力づくりをしている自分は並の男よりも身体は大きい。
例え負けたとしても、自身の母 の身体だけは護れるのでは?
そう思った満月は自宅で私服に着替えてから母が経営している『スナック月夜』に向かった。
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