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第13話 店で一番高い酒
店のドアが少し乱暴に開いた瞬間、月夜は緊張した面持ちに変わった。
「いらっしゃいませ」
「おう!月夜、今月も来てやったぜ」
月夜は奥の戸棚引き出しを開けて、銀行の封筒を差し出した。
「大山の旦那さん、いつもお疲れ様です〜。……他のお客様もいてくれてますし、今日はこれで勘弁してください」
満月は深くフードを被って表情を隠しているが、母月夜に手を出すのではないかと気が気ではなかった。
美月は微笑を浮かべながらロックのブランデーを楽しんでいる。
「客なんて俺には関係ねぇよ。月夜、この店で一番高い酒出せ」
カウンター中央をその男大山はドスンと座り、月夜の腕を掴みながら偉そうに言う。
見るからに極道という見た目の人物だ、果たして自分は母親を守れるのだろうか、満月が立ち上がった瞬間美月は横やりを入れた。
「あーごめんね。この店で一番高い酒は、さっき俺がボトルキープしたんだ」
老若男女誑し込める甘い笑みを浮かべそう言うと、借金取りは何かを考え付いたのかニヤリと笑ってから、美月のグラスを横取り口を付けた。
「おキレイなニィちゃんがオレの相手してくれるんてんなら、今日は手出さねぇよ〜?」
「本当?良かった。俺の大事な友達が月夜ママを守ってほしいって頼まれてるんだ。出来たら今後も手出ししないでくれると助かるかな」
「月夜の変わりに下の世話してくれんのか?そのキレイな顔拝みながらイケたら、……そりゃ最高だろぉ」
借金取りは含み笑いを浮かべながら美月の肩を抱き寄せると、瞬間満月の手が弾いた。
「イテェなっ?!テメェ何しやがるっ!!」
だが美月はその弾いた手を、そのまま自分の肩に置き直した。
「立ち上がったついでに満月、外に田中いるから呼んできてくれる?」
満月の心はもう美月に向かっていた為、この二人の前を素通りするなんて出来なかった。
振り上げた守るための拳が、その守りたい美月によって止められてしまった。
「いいから田中呼んでこい」
今までの優しく響くテノールの声色が、殺気の混じった落ち着いた声色に変わり、満月も冷静さを取り戻し、田中を呼びに外へ出た。
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