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第15話 人身取引
月夜と満月は美月に土下座する気持ちで感謝を述べた。
「お金は必ず返済します」
「あー、気にしないでいいよ。……って言いたいけど、下心があったからしたことなんだ。仕事内容は世に出たら不味い裏稼業だし」
美月の莫大な収入は受け継いだ地代と裏事業の経営で表の世界では誇れないことをしている。
綺麗な仕事で得た金ではないし、それに美月にとってははした金だった。
そして正義のヒーローになりたいわけじゃない、本当に下心で動いたことなのだ。
「月夜さん、俺は金より満月がほしいんだけど」
美月がほしいのは満月で、手に入るのなら今の全財産を失ってもいいほどに。
指名された満月は驚き絶句した。
「大変失礼を承知で言います……、満月は私の大切な息子です。北白川さんに預けて極道の道を歩ませるなんて」
月夜は正直に胸のうちを話した。
「と言っても俺の下で働かせようとかじゃなくてさ。気に入っちゃったから、一緒に遊んでほしいんだよね」
美月は月夜の言葉を予測していた。
極道者 の遊びなんて、危ないこともするのだろう、下で働かせるよりも心配になりそうな予感もするため月夜は頷くことが出来なかった。
「俺は美月さんのもとに行きます」
承知したのは満月本人だった。
初めて心を奪われた人が自分を欲してくれている。
それが一般の母子家庭が一生かかっても払えないような借金を軽く肩代わりするくらいの下心だと言うのだ、行かない理由 がない。
美月は笑顔を浮かべながら満足そうに言った。
「ヤクザ相手に直ぐ返事が出せるなんて、随分肝が据わってるな。いいね、増々気に入った」
心配そうに満月の手を取り月夜は涙を流した。
美月は満月に危ないことはしないさせないと言ってはいないのだ、これはある意味で人身取引のようなもの。
それで母親に納得するなど到底無料な話だ。
「今生の別れじゃないから涙しないでほしいかな。満月を連れてここに遊びに来るよ」
美月のこの言葉は嘘ではないだろう、それくらい真剣な面持ちでそう言われて、月夜は多少は落ち着いたように涙をぬぐった。
「じゃあ満月、そろそろ行くよ」
こうしてスナック月夜を後にした。
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