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第28話 田中の仕事
美月の部屋に帰ると、玄関に満月への衣服や身の回りの物などが放り込まれていた。
「あー、もう田中のヤツ……。少しは丁寧に置けよなぁ」
満月と美月は放り込まれた衣服を拾いながら部屋に入る。
そういえば田中は仕事でしばらくいないと美月は言っていた。
時間がなかったのか、余程慌てて仕事に出向いたのだろうと満月は思った。
乱暴に物は置かれてありはしたものの、それでも食器類などの割れ物の破損は見当たらない。
確認しながら満月はそのまま流しに持って行く。
「制服クリーニング出しに行くから、適当に着替えろ」
「俺が持って行きます。美月さんは部屋にいてください」
先程の行為で受け身側の美月はかなりの負担を感じているだろう、そう思い満月は気を使った。
「そ?……店わかるのか」
「スマホで調べます」
「じゃ、頼むわ」
美月はそのまま下着姿になると、スーツを満月に渡した。
情を交わした相手とはいえ、こんなにも無防備である彼に少々心配を感じながらも、田中が用意してくれた部屋着に着替えた満月はクリーニング店に向かった。
部屋に残された美月は大画面のテレビを付けて、ニュースを見た。
『……えー、臨時ニュースです。先程暴力団組員同士のトラブルで、北白川組員田中 良二 を殺人の容疑者として逮捕したと警視庁記者クラブからの速報でした』
「俺がオジキに犯さ れることなんて、いつものことだろ。……本当に田中はバカだよ」
田中は組長の義弟が美月にした行為に我慢ならず、そいつを刃物で刺し殺人を犯したため警察に逮捕されたのだ。
だから田中は美月の側から離れて罪を償わなくてはならない。
深い溜め息を吐いてから美月は知り合いの弁護士に電話をかけた。
「もしもし、美月です。……先生に仕事を依頼したいんだけど、いいかな?」
普段通りのテノール調の声色だったが、頬には涙が伝っていた。
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