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第40話 守りたい人

貨物の軽自動車荷台で大の大人が二人忍んで乗っている。 互いに命をかけて守りたいと思う相手だ。 一人はただの弓道部強豪校生で部長、真面目で口数が少ないが思いやりのある、まあまあイケメンの部類に入るガタイがいい、ただの少年。 もう一人は容姿だけならスーパーモデル顔負けの整った顔の美人でスタイルの持ち主、たが職業は極道(ヤクザ)の若頭で機嫌屋の跳ねっ返り、受難で可哀想な青年。 接点のない二人がこの短期間で絆を深めることになるなんて本人達すら思いもしなかった。 「さっきも言ったけど、お前の保護者になれたのに守ってやれもしない、ろくでもない大人で悪い」 美月は苦笑いでそう言うと、満月は真面目に答えた。 「いえ、俺は美月さんに守られてばかりです。だから俺もきちんと貴方を守りたい」 満月が初めて人を好きになった相手が美月だっただけで、この人以外には興味が持てないと思った。 満月と月夜を借金取りから助けたのは、美月の我儘と下心以外の何物でもないが、それがなかったらこんな関係になってはいなかった。 「美剣さん(オジイサン)の前で言ったのは俺の誓いです。美月さんと同じ瞬間を俺は生きていきたいと思ってます」 「じゃあなんだ?もし俺が死んだら、お前あの世まで追いかけてくる気かよ」 美月は冗談でそんな言葉を口にしたはずだった。 けれど満月は冗談にはしなかった。 「美月さんは死んだりしませんよ。俺が死なせませんから」 茶化さず真面目に答えた満月に満足した美月は口付けをした。 あの高級外車で情を交わした時のような、身体の芯に火種を灯すような重たいディープな口付けだった。 「この件が片付いたら、続きしような」 そう言って嬉しそうに笑う美月は、やはり綺麗な人だと満月は思った。

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