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第43話 めっちゃ面白い奴
満月は軽自動車の荷台から飛び出したあと、襲いかかってくる組員を殴り倒し伸していた。
このとき初めて人を殴ったのだが、喧嘩はこんなにも簡単なことに気付いた。
後から追いかけてきた田町は満月のその姿に『猛戦士 』とあだ名を付けたくらいだ。
「満月だっけ?お前その弓は使わないのかよ」
田町は満月が背負っている弓道具を指さして言った。
「あ、はい。母が買ってくれた大事なものなので、使いません」
「じゃあなんで持ってきたんだよ」
「大事なものなので」
軽自動車から飛び出したのは、満月の行動で相手側の注目を引けるかもしれないと思ったからだったが、弓道具を持って出たのは本当にそんな理由だった。
満月の見た目と中身のギャップに、田町は笑った。
「初めて人を殴りました。喧嘩って案外簡単に勝てるものなんですね」
「あははっ満月、……お前めっちゃ面白い奴だなぁっ!!」
ビル街に田町の笑い声が響き渡り、端にそれていた通行人達からの注目を浴びた。
だがその笑い声は一瞬にして止まった。
『若頭を確保した。組に戻れ』
満月が倒した組員が持っているトランシーバーからの無線に満月と田町は蒼白になった。
町屋が一緒にも関わらず、こんな簡単に美月が捕まるはずがないと思った田町は、倒れている組員の内ポケットからトランシーバーを盗り、もと来た道を走り始めた。
「田町さんっ」
「車に戻れ満月。美月サン達を追いかける」
軽自動車に戻ると、先程美月が足技で伸した組員が頭を抱えながらフラフラと立ち上がっていた。
立ち上がる組員に田町は殴りかかる。
「テメェら、美月サン達に何しやがった?!」
その剣幕に恐れ斧のきながらも上から目線で組員は笑いながら言った。
「まっ町屋を殺し たんだ。若頭を守る奴はもう側にいねぇ……、ざっざざ、ざまあみろ!!」
田町は打ん殴り放おった後、軽自動車に二人乗り込み勢いよく走り出した。
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