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第45話 防弾ガラス
大樹の手が露出した美月の腹部を撫ではじめた。
先程蹴られ、今は痛みがあり赤く腫れていた。
「俺に歯向かわなきゃ痛い目には合わねぇんだ。美月は頭がいいはずだが、まだ青臭い子供 だったんだなぁ」
腹部から脇や胸に手を這わせられ、嫌悪で身体が震えた。
それでも嫌悪とは別に性感帯に触れられ快感をも拾えてしまい、身体の芯に火が灯るのを感じ、そんな自分に嫌気がさした。
「……ん」
こんな相手に声など漏らしたくない、淫れた声など聞かれたくない、喘ぎどころか乱れた息すら押し殺す。
それに気付いた大樹はニヤリと笑いながら美月の着ているスーツを乱し、この部屋にいる組員 達に見せ付けるように反応しているシンボルに触れる。
「我慢しなくていいぞ、美月。イイ声で鳴けよ」
「っ……」
反論したいところなのだが、口を開いたらきっとその『イイ声』というものが出てしまう。
美月は睨みつけることしかできなかった。
「まだ反抗する気かもしれねぇが、ここにはお前の味方は一人もない。まだ望みはあると思ってんなら笑いが止まらないぜ」
そうだ、ここには味方は誰もいない。
こんな奴に抱かれるくらいなら死んだほうがマシだ。
『美月さんは死んだりしません。俺が死なせませんから』
満月が言われたことを思い出して、美月は笑みを浮かべる。
人にキザなことを言われたことは数あれど、年下の高校生に言われた言葉に打ちひしがれるなんて、自分はどうかしている。
それでも自分を落ち着かせるために言ってくれた言葉に嬉しくなった。
だけれど助けに来てくれるとは思わない。
思わないが、どうか満月だけは無事であってほしいと思った。
その時だった。
ガシャーンとガラスが割れる音が部屋中こだまする。
この部屋の防弾ガラスが割れたのだ。
防弾ガラスが割れたことで、部屋の中にいた組員達は慌てふためき始め、部屋を飛び出すものもいた。
どこからの発射かと大樹は拳銃を構えたが、その瞬間彼の方に一本の矢が刺さった。
「ぐわっ!!」
大樹が倒れ込んだ隙間から美月は見た。
割れた防弾ガラスのその先に弓矢を構えた満月が高い塀の上にいた。
「……満月」
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