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第47話 若頭義弟夜霧満月
大樹は大声で美月を脅し始めた。
「お前の義弟分だと言っていたが、……恋人だろ美月」
流石に組長 の目にはバレるかと美月は溜め息を吐いた。
「一般人を巻き込むとは、相当な女狐だ。なぁ、若頭?」
満月にとって負傷している大樹の力はそう強くない。
だが満月にとって拳銃は今日初めて見た武器だった。
そんな未知の武器が自分に向けられている、怖くないわけがない。
けれど拳銃を向けられている自分よりも美月の顔色が悪いことに気付いた満月は、一瞬にして覇気を取り戻した。
「俺は北白川組若頭北白川美月の義弟、夜霧満月だ!!」
羽交い締めにされている満月の片手が抜けて、大樹に刺さった矢を更に深く押しつけた。
「ぎゃぁぁっ」
満月から直接反撃を予想していなかった大樹は、その場に崩れのた打ち回る。
拳銃は満月の近くに落下し、それを拾い構える満月は一般人には到底見えない鋭い目付きをしている。
美月はその満月の姿を見て、呆然とする。
「その引き金を引きたまえ、夜霧」
聞き覚えのある落ち着いた老人の声が響く。
部屋に入ってきたのは用心棒 を引き連れた北白川組会長の北白川美剣だった。
「大樹、儂は野心家のお前を気に入っていたよ。最強と言われた儂の息子を殺し たとき、真の極道 はお前にこそ相応しいと思い、組長としての地位を与えた」
美剣はのた打ち回る大樹の頭を踏みつけた。
「なら何故アンタの後継者はオレじゃない?!」
「お前は会長 の命令すらきかなくなったからだ」
そのまま弱った大樹を蹴飛ばし転がす。
「行き過ぎた野心は自らの身を滅ぼすことを、あの世で悔いるんだな」
美剣は満月に目配せをして、引き金を引くように命令した。
「辞めろ満月っ、引き金を引くな!!」
撃たれると観念し死を見た恐怖で大樹は失神したように泡を吹き力尽きた。
すると美剣は面白そうに笑い声を上げた。
「ハッハッハ……、儂が未成年に極道 者を殺させるほど鬼畜な性格をしてはおらんよ」
面白そうに高らかに笑う美剣を見て、美月は胸を撫で下ろした。
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