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第48話 ダイジョウブ
美剣は大樹の処分をここでは言わなかった。
だが美月は北白川美剣 が真の極道 で、容赦なく残忍なことを知っている。
きっと生きたまま身を細かく切られ、時間をかけて命を削ぎ落とすくらいのことは平気でするだろう。
それを思うと自分のしていること は可愛いもんだと感じた。
それにしても、この短期間で満月がよくもまあ一般人 から極道 に進化したなと思った。
目付きといい覇気といい、どうみても元の満月に戻らない気がして不安を感じていた。
どうやって月夜に謝ろうかと考えていた美月だった。
「美月さん、大丈夫ですか」
不意に声をかけられた美月は満月を見た。
覇気のありすぎな先程の声色とはまるで別人のような、優しい普段の満月の声色に戻っていた。
面差しも先程までの鋭利な刃物のような目付きから、穏やかなものにと変わっていた。
その満月のオンとオフのギャップを間の当たりにした美月の鼓動が跳ね上がる。
だがそれを顔に出さず平然を装い返すことが最善だと思った。
「ああ、……ダイジョウブ」
古株の組員にはかなりキツいことを返したが、まさか満月に同じ態度で返せるわけがない。
そのやり取りを見ていた美剣は眉を寄せ考えていた。
「ううむ。ギリギリで美月は大樹をのしたとはいえ、まだまだ未熟過ぎるな」
二十九とはいえ、この規模を束ねる組長にしてはまだまだ青いと感じた美剣は、美月に思い直していた。
「とはいえ、儂の後継者はお前 しか考えてはおらん。今は代役の組長を探すしかないな」
「だから何度も言うけど、俺はじいちゃんの後は継ぐ気はないって……」
美月は今日こそ後継者の件を諦めてもらおうと反論するが、美剣は話すら聞く気はなかった。
「いやはや、人の恋路を邪魔すると馬に蹴られるというしな、夜霧との関係は見逃してやる。その変わり儂の言うことも少しは聞け、美月」
義親父 にはなんとか勝てはしたものの、やはりまだ孫 は祖父 に勝てないということだ。
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