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第49話 改めた決心

満月は美月の姿を見て思ったことがある。 大丈夫だと美月は言っているが、大丈夫とは言えないのではないかと。 まさしく性的暴行をされましたと言わんばかりの乱れボタンが飛んだワイシャツを着ているし、スーツは血だらけなのだ。 けれど美月は凛とした涼しい表情で辺りを見回し観察しているようだ。 きっと落ち着かないのかもしれない、大丈夫なんかじゃない。 どう声を掛けたらこの人が落ち着くんだろう、そんなことを考えていた。 「銃で撃たれた町屋さん、直ぐに止血されたので助かったみたいです」 「ふーん、そうか」 側にいた(マチヤ)が助かったことを知れば少し安堵するかと考え言ったが、美月は少しも表情を変えることはなかった。 「俺から離れた後、お前は何してた」 急に離れたことを怒っているのかと思った満月は、弁明することなく正直に話しはじめた。 「俺、初めて人を殴りました。いままで他人と殴り合いの喧嘩したことなくて、最初は怖かったです」 最初は人を殴ることに抵抗があった満月は、この十七年の人生理不尽なこともあったが暴力を振るうことはしてこなかった。 「でもやらなかったら自分が殴られる。そんなのは嫌ですし、俺がその人を倒し勝つことで、その人はもう殴ってこないことに気付いたんです」 自分には敵わない相手だと気付けば、相当の馬鹿ではない限りそれ以上の抵抗しないと満月は言っているのだろう。 初めて人を殴ったと言う満月だが、どれだけの強さを兼ね備えているのだと美月は思った。 美月は満月の裸を何度か見ているし、どれだけの筋肉がついているのかを知っている。 「自分もこの世界は俺には向いてないって思ってました。でも俺は改めて決めたんです、美月さんがいるこの世界で生きていくって」 確かに満月は優しい人間だ、理性も強い。 美月以上に心を痛めそうな性格をしている、きっと向いていないに違いない。 「この極道(ヤクザ)の世界はろくなことないぞ。非道で残虐だしな」 人を平気で殴り飛ばし、喧嘩ごときで刃物や銃が使われ、このせいで簡単に人が消えていく世界が極道(ヤクザ)の世界だ、確かにそうかもしれないと満月は思った。

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