54 / 59
第54話 罪
満月と美月が二人きりになれたのは例の高級外車の車内で、美月は満月を後部座席に座らせていた。
助手席だと距離的に近く感じてしまい、落ち着いて運転ができないと感じたからだ。
本当なら今直ぐにでも満月に触れたくて、触れて欲しくてたまらなかった。
「あー、こんなに禁欲生活したの初めてだ。……密室に満月と二人きりとか、俺どうにかなりそうだな」
車を走らせている最中に美月は楽しそうに言った。
車の速度が速くなっているのが分かると、満月まで意識し始め顔を赤くし身を硬くした。
「そういえば満月とセックスしたの、この車の中だったな。またカーセックスするか?」
車内でしたくない満月は、誘惑に負けないよう自分にも美月にも言い聞かせるように言う。
「乗るたびに思い出してしまうので、やめてください」
「でも忘れられない初体験になっただろ?」
確かにこんな童貞喪失体験はそう聞かなそうだ。
それにしても、田中さんへの寂しさを自分で補っているのかなと思うと満月は複雑な思いを感じていた。
「美月さん、寂しいですね」
「寂しくないと言ったら嘘だけど、やっぱり自分がやった落とし前はつけなきゃだよな。俺も相当ヤバいことやってるから責任取らなきゃだよなー」
はははと清々しいほどの笑顔を浮かべる美月。
仕事で法に触れるようなどんなことをしているのか、満月は少し考えた。
「……結婚詐欺とかですか?」
「俺が結婚詐欺とかウケる~。んでも俺にとって詐欺は日常茶飯だな。俺のやってることはもっとヤバいんじゃない?」
満月は考えたが、暴力団でよく捕まる事件を思いつくのは覚醒剤くらいだった。
でも違ったら申し訳ないので言えないでいると。
「俺は使ったことないけど、組の奴らは覚醒剤とか大麻やってるかな。俺は公然わいせつ罪、あと未成年淫行罪とか?……あーでも確か淫行罪は十六歳以下か。あー、満月が十七歳でよかった」
またもや誂われた満月は、照れくさがりながらも美月を弁明した。
「例え十六歳以下であっても美月さんは罪には問われません。……俺嫌がってないですし、寧ろ貴方を抱きたいです」
こんなに照れたらまた何か言われそうだ、そう思っていた。
だが言われた側の美月も微かに照れているようだった。
「抱かせてやるから、大人しく待ってろ!!」
美月はアクセルを踏みしめ、信号から急発進した。
ともだちにシェアしよう!

