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吸込み厳禁!魔花の花粉
最近の冒険者ギルドの依頼は、もっぱら「モンスター退治」か「迷子のペット捕獲」ばかりだ。
今日の依頼内容は、洞窟に巣くう魔虫の駆除。
報酬は銅貨三百枚と、ギルド支給の保存食。
勇者アルノと神官ナディルは、淡々と任務をこなしていく。
「よっし、終わり! 蛾みたいでキモかったな、この魔虫」
アルノが大剣を振り払い、鱗粉を払う。
光を反射する長いブロンドの髪が、薄暗い洞窟の陰で煌めいた。
色白の肌に翡翠の瞳、笑えば誰もが見とれる色男。
魅力と軽口でこのパーティをまとめる勇者である。
「巣の奥まで行くぞ。根絶やしにする」
気難し気に眉を顰める神官ナディルが、低い声で言った。
浅い褐色の肌に禁欲的な法衣をまとい、紅の瞳が鋭く周囲を見回す。
短く刈り上げられた白髪は、彼の真面目さを表している。
動作に無駄がなく所作が美しい。
だが、どこか頑なで息苦しい。
(むくれた顔以外も見たいんだけどなー)
アルノは、その肩の力を抜かせたいと常々思っていた。
「ジルとセス、ちゃんと見張りしてんのかなぁ」
先刻、洞窟の入り口に置いてきた仲間の二人を思い出す。
「怠けていたら殴る」
間髪入れずに厳しい口調で返すナディルに、アルノは苦笑で答える。
「神官にあるまじき気の短さ」
「なんだ、文句あるのか」
「ないない。そうかっかすんなよ」
ナディルは憮然として向き直り、二人は洞窟の奥へ足を踏み入れた。
人に好かれやすいアルノにとって、気難しいナディルは“新人類”だ。
彼は、海を渡った大陸から宣教師の父親とともにこの国にやってきたらしい。
暴力的なまでの高潔さは、祖国の文化なのか、教義的なものなのか、そもそも彼自身の性格なのか。
気になり始めたら止まらなくなり、半年ほど前にアルノがナディルをパーティに誘った。
洞窟をしばらく進むと、ピンク色の淡い光を放つ花が地面一面に咲いている場所に出る。
花弁がゆらりと揺れ、舞い上がった花粉が空気の中で光った。
「……おお、絶景だな」
アルノは誘われるように花に手を伸ばす。
ナディルの眉がぴくりと動く。
「触るな!花粉に魔力がある!」
弾かれるように鼻を抑えるが、甘い香りが鼻腔に入り込む。
(くそ、遅かったか……!)
ナディルが小声で詠唱を始め、二人を包むように結界を張る。
薄い膜が白い光を帯び、花粉を弾く。
「容易に近づくな!毒性があったらどうする!」
狭い空間で叱責され、耳の奥が痺れた。
「いやぁ、うっかり。やっぱり真面目なやつがいると助かるな」
「お前はもう少し慎重になれ」
「はは、耳が痛い」
軽口を叩きながらも、ほのかに体温が上昇する。
局部に熱が集まるのを感じ、なるほどと呟く。
「興奮作用があるみたいだな。いくつか摘んで道具屋に売れば、いい額になる……ナディル?」
低俗な言葉には必ず噛みつくナディルが、黙って俯いている。
(ナディルも花粉を吸っちまったか?)
清廉な神官にはこの刺激はキツいだろう。
好奇心のままに、目の前の肩を引き寄せる。
アルノより頭一つ分小さな体が、わずかにふらついた。
顎をすくい上げ目線を合わせると、彼は目を瞬かせて赤面した。
「おい、大丈夫か?」
予想通りの反応に、口角が吊り上がる。
「締まりのない顔をするな……っ、お前が油断したせいだ」
「顔真っ赤じゃん、大丈夫かよ」
「問題ない、気安く触るな」
そう言いながらも、ナディルの耳は熱を帯び、呼吸が早い。
結界の内側がきゅっと狭まり、二人の距離がぐっと近くなる。
「なぁ、結界、狭くなってねぇか?」
「……制御が……」
「え、制御が?」
「……乱れている。喋るな」
「おいおい、弱っちいな」
結界がするすると縮む。
肩が触れ、腕がぶつかる。
ナディルの法衣がアルノの鎧に押し退けられ、わずかに褐色の肌を晒す。
「ナディル、息荒いぞ」
「黙れ!」
普段なら絶対に取り乱さない神官の顔が、今は真っ赤だ。
見下ろした先にはボリュームのある胸筋の谷間が見える。
(ラッキースケベってやつか……あー、ムラムラしてきた)
勇者アルノは夜も勇敢だった。
来る人拒まず、去る者追わず。
股間に携えた大剣で何人もの男女を鳴かせてきた色男にとって、この状況は間違いなく据え膳だった。
「俺も花粉効いてきたかも。ナディルの顔、ちょっと……可愛い」
「何を言っている……っ!」
「いや、可愛いって。ほら、耳まで赤い」
朱に染まった耳にシルバーのピアスが光っている。
アルノは顔を寄せて熱っぽく囁いた。
「~~……っ黙れ黙れ黙れ!」
力の抜けた拳がアルノの胸を叩く。
(パーティメンバーに手を出すのは初めてだけど、これはしょうがない)
アルノは胸の中で自分に言い聞かせる。
これは不可抗力。手を出さないほうが失礼だ。
「アルノ……っ顔が近い、どけろ!」
「結界が狭いせいだろ」
「ちが……くち、つきそうだから……っ」
「あは、キスって言うの恥ずかしいんだ」
身動きが取れないナディルの唇に、官能的な口づけをする。
固く引き締めた口元にふんわりと唇を重ね、舌先でちろちろと割れ目を舐める。
いちいち跳ねる体が面白くて、一方的な愛撫を施し続ける。
遂には息が持たなくなったのかナディルが口を微かに開けたため、舌を滑りこませて呼吸を奪う。
わざとらしくぐちゅぐちゅと水音を立てて舌を絡めると、触れ合う下肢が震えて脱力した。
「……弱っちくて、可愛いなぁ♡」
素早くナディルの脚の合間に膝を差し出し、大腿で湿った股座を支えてやる。
口づけだけで吐精するとは、雑魚にもほどがある。
どんな顔をしているのかと覗き込むと、ナディルはショックを隠し切れない様子で口をぱくぱくさせていた。
「どうした?何か言いたいことある?」
「……戒律で、禁止されてるのに」
「禁止?何が」
「…………せい……」
「は?」
「……っ射精、禁止なんだよ……!」
後頭部をハンマーで殴られたような衝撃がアルノを襲う。
射精禁止?なんだその戒律は。
自他ともに認める遊び人であるアルノにとって、それは到底理解できなかった。
エラ呼吸で生きろと言っているようなものだ。無茶すぎる。
「……くそ、最低だ……っ!」
涙ぐんで悪態を吐くナディルに、アルノは目線が釘付けになる。
予想外の処女性がアルノの欲望を焚き付ける。
股間の大剣がぐんぐんと上を向いていく。
(むちむちの体してオナニー禁止だぁ?エロすぎるだろ、この聖職者……)
乱れた法衣の下に両手を滑りこませ、肉付きのいい尻を勢いよく揉む。
密度の高いしっとりとした筋肉が程よい弾力でアルノの指を跳ね返す。
(……ぜってぇ喰ってやる。今この場で非処女童貞にしてやる)
アルノは鼻息を荒くしてナディルの局部を弄る。
吐き出された精液を指に絡め、純潔の蕾をマッサージするように捏ねる。
「~~ッ汚い!なにしてる!」
ナディルが半狂乱になるのを屈強な腕で抑え込む。
神官のわりに戦闘向きな体躯のナディルだったが、前線で切り込むアルノとは比べる間でもなく非力だ。
結界の維持のため、他の魔術を使うこともできない。
「……戒律を守る偉い子に、素敵な知恵を授けようと思ってさ」
「いらない、触るな、イカれ野郎!」
「まぁ聞けって。射精がダメなら、ここ、使えるようになるといいよ」
ふにふにと蕾の固さを楽しんでいたアルノの指先が、ゆっくりと孔の奥に沈んでいく。
「はぁ!?そんなところ、入れるな……っ!本当に気が狂ったのか!」
激しく暴れるナディルを抱き留め、再び唇を塞ぐ。
息注ぐ間もなく舌を潜り込ませ、腔内を容赦なく犯す。
一瞬でキャパオーバーになったナディルは一切の抵抗を止め、全身を硬直させてしまう。
アルノの指が、ぬち、ぬち、と紳士的に後孔を押し広げていく。
新雪を踏みしめるが如く丁寧に、そして愛情深く。
初心なナディルの初体験を奪う高揚感が、アルノの指の動きを大胆にさせていく。
「んは……っ♡どう?キス好きになってきた?」
キスの途中、息を吸わせるためにほんの少し唇を離す。
すっかり息の上がったナディルは、赤い瞳を蕩けさせ、舌を差し出したまま口をぽかりと開けている。
愛撫の中断にも気づかず、宙に浮いた舌先が温もりを求めて震えている。
「はっ……♡っ……?♡」
「おー、ごめんごめん、いま舐めてやるからなー♡」
健気な反応を示すナディルの体に、アルノはすっかり夢中になっていた。
舌を絡め取って擦り合わせながら、一方で処女孔の準備にも余念はない。
骨ばった中指の第二関節まで埋め込んでから、腹側の肉壁にぴったりと指の腹をつけ、様子を伺いながら指先に力を込める。
前立腺に狙いを定めて刺激を繰り返すうち、キスに夢中になっていたナディルがわずかに声を漏らした。
「ふっ……♡んーー……っ!♡」
もじもじと腰をくねらせて、違和感を訴えている。
(体は快感に飢えてんだな……超敏感でエロい♡)
時折撫でたりつついたりを織り交ぜるながら、徹底して前立腺の刺激を体に覚えさせていく。
強張りがほぐれて来た頃に薬指を挿入し、2本の指で性感帯を叩き起こす。
「ナディル〜、お尻まんこになってきたぞ♡よかったなぁ」
「んちゅ、はぁ……っ!う、ふぅ"……っ♡まん……??♡♡」
「まんこ分かんない?ふは、そっか、はは♡」
あまりの興奮に怒りのような激情が湧いてくる。
アルノは攻撃的な笑みを浮かべ、挿入した指を激しく動かす。
くちゅくちゅと高い水音が狭い結界の中で響く。
ナディルは血管を浮かせた苦悶の表情で背筋を反り返らせた。
「ンぐぅ〜〜ッ!♡♡いぎっ!ひ、ひぃ♡ふぐぉ……ッ!♡♡」
「あー、また勃ってるよ、ナディル。これじゃあまた戒律破っちゃうね……握っててやろうか♡」
アルノのマメだらけの手のひらが、陰茎の根本をぎゅうと握り込む。
誰にも触れられたことのないナディルのものには、強すぎる刺激だった。
「あ"あ"ぐぅッ!?い"だ、いたい"ぃ"……はなせ、とれる、とれるゥ"……っ!」
「ちんぽとれないよー♡ほら、射精なしでイけ、ケツでイけ♡」
指で前立腺を容赦なく突き上げ、無垢な体を快楽に突き落とす。
収縮する結界はもうほぼ肌に触れている。
ガクガクと震えるナディルの体がアルノの体に密着する。
ぷっくりと存在感を主張するまで育った利口な前立腺を、最後に思い切り押し潰す。
「あ"ガ……ッ?!♡♡ほ、お"………っ♡」
ナディルの全身がぎゅうっと縮こまるのを感じると、結界がぱん、と弾けて消えた。
ピンク色に光る花粉が2人の鼻腔に吸い込まれる。
「〜〜〜〜……ッ??♡♡♡」
初めて迎えたドライオーガズムの絶頂を倍増させる媚薬花粉。
蕩けた赤い瞳は瞼の裏へ隠れ、無様なイキ顔をアルノへ晒した。
「ナディル、上手にイけたなぁ……♡これからはちんぽなしでオナニーしろよー……てか、俺とセックスすればいっか♡」
アルノはビキビキと音が聞こえそうなほど血管の浮いた逸物を取り出すと、慎ましく口をすぼめた処女孔に押し込んだ。
長大なアルノの熱は、ナディルの初物の器には収まりきらず、ゴツンゴツンと狭まった奥にぶつかる。
「さすがに全部は入らねぇか……っ、あぁ……キツキツでたまんね……ッ♡次はもっと奥まで入れっから、お家で復習してこいよー♡」
無遠慮な腰振りになす術なく揺さぶられるナディルは、ほとんど意識を飛ばしている。
そしてアルノもまた、魔花の花粉で正気を失っていた。
暴走するアルノに加減なく握られたナディルの陰茎はすっかり力を失い、与えられ続ける後孔からの快楽が清純な体を作り替えていく。
「んお♡お"♡おん♡ほぉ"……っ♡♡♡」
「……っ〜〜ぐぅ!♡」
アルノの腰がぶるりと震えると、狭い胎内に熱い飛沫がぶち撒けられた。
アルノの大きさ、太さ、温度。
ナディルの清らかな体が、熱に溺れた記憶を深く刻み込む。
「あー……この花粉、ヤバすぎる……ッ♡腰止まらねぇわ……あはは」
どちっ!どちっ!と重たいピストンの音が洞窟内を木霊する。
精巣の中がぐつぐつ煮えるような性衝動を、褐色の尻肉にぶつけ続ける。
気がつけば、後背位の体勢で獣のように腰を振っていた。
ナディルは失神したままアルノの逸物を受け止めている。
泡立った精液が赤く腫れた蕾の縁から溢れていた。
ーーこれ、まずいな。
体力が尽きるまで交わり、そのまま魔花の肥料になる。
最悪の未来図が脳裏を過ぎり、なけなしの金で買った万能薬〈エリクサー〉を装備品から手繰り寄せる。
「はー……仕方ねぇ、あとは頼んだ」
小瓶の中身を口に含むと、意識のないナディルへ口移しで飲ませる。
喉仏が小さく上下するのを見て、アルノは全身を脱力させた。
「ーーわああああ!!!!!」
入れ替わるようにナディルが体を跳ね起こす。
エリクサーの効果によって、怪我が回復、状態異常が無効化されたのだ。
全身からほのかに白光を放つ姿は、まさしく清らかな聖職者らしかった。
「アルノ!!!貴様、なんてことをしてくれたんだ!!!!!」
烈火のごとく喚き立てる様子がすでに懐かしい。
「……文句は後で聞くから……」
「知らん!!勝手にのたれ死ね!!!」
ナディルは地面に落ちた衣服を集めて足早に立ち去ろうとする。
「俺が飲んでも良かったんだけどな、エリクサー」
遠ざかる足が一瞬止まる。
ナディルは自分自身に癒しの術をかけることができない。
もしアルノがエリクサーを飲んでいたら、ナディルの身体は元に戻らなかっただろう。
(最後の方は俺の全部入ってたよなー……せっかく仕込んだのに処女に戻っちまった……)
一片の情けをかけてやったのだから、助けてくれてもいいだろう。
だんだんと暗くなる視界に、法衣の刺繍が映る。
これが最期だったとしても、いいセックスができたからいいか……。
「…………戒律、だからな」
忌々しげに呟かれた言葉の意味を理解する前に、景色が暗転した。
再び瞼が開いたとき、洞窟の入り口が遠くに見えた。
顔を上げると鬼の形相のナディル。
「お、ありがとう!回復かけてくれるって信じてたぜ!やっぱり真面目なやつがいると助かるーー」
言い終えるより早く、アルノの端正な顔に正拳が打ち込まれた。
今度は治してもらえなかった。
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