3 / 4

覗き注意!秘密の鍛錬

 任務を終えたいつもの夕暮れ、勇者パーティは拠点の街へ戻ってきた。  アルノとナディルは宿屋へ。  セスは「弟たちが待ってるから」と笑い、手を振って走り去っていく。    フードを目深に被ったジルは、今日もその背中を見送った。  (家族のために走って帰る……家庭的なタイプだ)  ジルの頭の中に、エプロンを着けたセスが自身を出迎えるイメージが浮かぶ。    ――おかえり、ジル!今日はお前の好きなシチューだぞ。  ――熱いから気をつけろよ?    世話焼きなセスのことだ、一日中あれこれと家中を動き回ってるんだろう。  思わずふへっと声が漏れる。  すれ違う人たちが訝し気に見てくるが構わない。  セス以外のことなど、どうでもいいのだ。  月が昇る頃、黒魔術師はひっそりと動き出す。  外套を纏い、気配を消して通い慣れた街外れへ。  指先で描いた魔術陣が小さく光り、視界に淡い映像が浮かぶ。  セスの家――木造の小屋の窓の中。  弟たちと食卓を囲む姿が見えた。  (……そんな顔、俺には見せたことがない)  皿を奪い合う弟たち、笑いながら叱るセス。  その光景があまりに柔らかくて、まなじりが熱くなる。  (……片付け手伝ってとか、言われたい……!)  一方的な恋心は拗れに拗れ、叶わない妄想だけが膨らんでいく。  ジルは遠視の魔法を解き、静かに森へと向かった。  夕飯の後は鍛錬の時間だ。  ほどなくして、魔力式のランプを携えたセスが姿を現す。  上着を脱ぎ、肌に張り付いたタンクトップ姿になる。  革のベストを腰に結びつけ、軽く伸びをした。  ランプの光に照らされた若草色の髪が、夜露を弾いて光る。  (……最近少し暑いからな、上着は脱いだほうがいい。そう、脇が見えて……うん)  日頃見慣れているはずの服装でも、盗み見ているとなると、どうも色っぽく感じる。  セスは鼻歌を歌いながら、簡素な防御結界を張り、鍛錬を始めた。  剣を振るう風音が夜気に響く。  刃が描く軌跡は月光を映して、きらきらと揺らめいた。  額から伝う汗が首筋を濡らす。  常よりも真剣な眼差しに、ジルの心音が大きく鳴った。  (綺麗だ……)  ジルは木の陰に隠れ、息を殺して剣舞を眺める。  (腕の筋肉……背中の動き……脇の下を流れる汗まで、全部が綺麗だ)  やがて鍛錬を終えたセスが、剣を鞘に収めて大きく伸びをした。  「ふぅ……夜風が気持ちいいなぁ」  息を吐いて、額の汗を腕で拭う。  (……今日も頑張ったな。毎日続けてえらすぎる。抱きしめたい)  セスはそのまま、腰のベルトを外し、木の影に歩いていく。  ジルは首を傾げた。  (ん?なにして……?)  遠視魔法を発動させ、セスの後を追う。  映し出された映像にジルの膝が震えた。  セスはズボンを膝まで下ろし局部を露出させて、木の幹に体を預けている。  ジルのストーキングは何年も続いていたが、こんなことは初めてだった。  (ちょっ、待て、どうしたんだ急に……セス、まさか!)  汗で湿ったセスの手がまだ芯のない陰茎を握って小さく動き始める。  「……ぅ、……」  風音に紛れるほどの小さな息遣いが、ジルの心を揺さぶる。  (あれはオナニーだよな?セスが、鍛錬の後で、外で!オナニーしてる……!)  家族とともに暮らすセスの自慰頻度はかなり低かった。  したとしてもトイレで手早く済ませているのをジルは知っていたし(さすがにトイレまでは窃視していないが)、ましてや野外でなど、予想外のことだった。  図らずしも想い人の秘めた行為を目にしてしまい、ジルの股間にも熱が集まる。  「……っ、ぁ……きもちぃ……」  公然と行われる自慰は、次第に大胆さが増していく。  脚はどんどん大股に開き、腰を揺らして手のひらに熱を擦り付ける。  先走りのぬめった音が葉音に混ざって響く。  淫猥な姿と爽やかな夜風のギャップに、ジルの鼻息は荒くなる。  ジルは外套の中に冷たい指を差し込み、すでに固く上向く自身を擦った。  (セス、セス……っ!こんな姿まで見せてくれるなんて)  観察したセスの動きを真似て、陰茎を愛撫する。  ぬちぬちと熱を擦る自身の手のひらを、セスの温度だと思い込む。  (ああ……♡先っぽばっかり触るな……!♡)  慣れない刺激に腰が痺れる。  強くしごいて射精したいという欲と、セスの愛撫でイきたいという願望が交錯する。  「んあ……出したい、出したい……っ!」  セスの甘い声のボリュームが上がり、射精に向かって腰が前後に揺れる。  血管の浮いた陰茎をゴシゴシと擦る様子に、ジルは生唾を飲む。  (おいおい、そんなにされたら出ちゃうだろ……っ!)  目線をセスに固定し、タイミングを合わせて腰を振る。  「あ……っはぁ……あっん……ッ♡」  セスは恥ずかしげもなく嬌声を上げて快楽に耽る。  激しい手淫で導かれ、ジルは手のひらに濃い精液をぶちまけた。  (ぐう~~……っ♡セスの手コキでイった……!♡)  歓喜と倒錯がジルの脳を深い快感に飲み込む。  しばらく腰をゆるゆる揺すって、最後の一滴まで絞り出す。  息を整えて、白んだ視界を振り払う。  セスの射精する姿を見逃したくない。  (…………あれ……?)  目を凝らすと、セスは陰茎をいきり立たせたまま、涙を流していた。  しゃくりあげながらも腰はまだ緩慢に揺れ、手の動きだけが急いている。  「――なんで、イけないんだよぉっ……なんで、あぁ、きもちぃ、のに……っ」   どうやらセスは射精ができないという悩みに苛まれているらしい。  イきたいイきたいと泣く姿が、ジルの股間に再び衝撃を与える。  (へー……、今度はそう来るんだ……?)  もはや怒りのような興奮がジルの腹の奥で煮えたぎる。  すぐに再起した逸物を乱雑にしごき、雄の快感を味わう。  セスはこの刺激を忘れてしまったんだろうか。  それはきっと、間違いなく、先日の触手型モンスターのせいだろう。  後孔を激しく犯されたセスの体は、前の刺激で射精する仕組みを上書きされてしまったに違いない。  正体をなくして喘いでいた頃には、確かにセスのペニスは力なく垂れていた。  あの日の強烈な記憶がジルの脳を焼く。  (セスのためだ……手伝ってあげてもいいよな……♡)  自身の先走りで濡れた指先を顔の前に掲げ、親指と人差し指で小さな輪を作る。  その中へ息をフウッと吹き込む。  ジルの魔力が籠められた息吹は、主の思うがままに動く。  小さな空気の塊は夜風の中を掻き分けて、セスの元に辿り着く。  情けないガニ股の合間を潜り、ひっそりと息づく蕾の間近まで来た。  遠視魔法でクローズアップしたそこは、セスの震えに呼応して小さく引き攣れている。    (お尻はこんなに欲しがってるのに、セスは強情だなぁ……♡)  ジルは魔力の籠った息吹をそのヒクつく蕾へそよがせた。  ピクンと反応を返すのがいじらしい。  「――んうッ♡や……そっちじゃない、ちがうぅ……っ!♡」  セスが愚図るように声を上げる。  軽く意識を向けさせるだけで十分だ。  腰の振りを合わせて何度か繰り返すと、観念したようにセスの指先が恐々と後ろに伸びた。  ジルは指先で魔法陣を描く。  今度は少し高度な黒魔術――幻聴の魔術だ。  セスの耳の奥に、粘った水音を流し込む。  それは、あの日の記憶を呼び起こさせる音。  ぬめぬめと這い回る触手の蹂躙の音だ。  ぬちゅ、ぬぢゅ♡ぐぽっぐちょっ♡  少しずつセスの眼差しが曖昧になる。  伸ばされた指先は、誘われるように奥に息づく後孔に触れた。  そこは、射精の寸前で溢れ続けるセスの先走りでぐっしょり濡れている。  その触覚もまた、セスの理性を遠ざけていく。  「……ハッ♡……ハッ♡」  幻聴の水音を追いかけて、指先は濡れた秘所を浅く探る。  陰茎を突き上げるようなセスの腰振りは、後孔を馴染ませる悩ましげな腰つきに変わっていた。  指はあの日の快感を辿っていく。  「……ィき、たいっ……もう、イかせて…!♡」  限界まで張り詰めたセスの陰茎からは、とろとろと先走りが漏れ続けている。  滑りを借りて更に奥へと指を挿し込んだ瞬間、その先が前立腺をきつく擦り上げた。  「――ひア!?♡あ、へっ……だめ、なのにぃ♡」  セスは、期待に膨らんだ前立腺を夢中になって責める。  頭の中では、触手に犯された記憶がリフレインしていた。  強烈な快感がセスの体に蘇る。  男らしく射精したいというちっぽけなプライドは脆くも崩れ去り、雌の悦びを取り戻した体が絶頂へと登っていく。  「……っきもちぃ……♡おしり、イイよぉっ……♡イきそ……ああイグ♡おしりでイ"グッ……!♡♡」  内臓を擦られる快感が背筋を伝って脳を犯す。  全身の細胞が甘い痙攣に酔う。  張り詰めていた陰茎からは、勢いのない精液が押し出されるように漏れた。    (セスはもう、お尻でしかイけないんだ……っ可愛い、可愛い……!♡)  セスの堕落を一部始終観察していたジルは、2度目の射精に向かって手淫を早める。  ――もっと深く堕としたい。  ジルは幻聴の魔術を止めなかった。  後孔の快楽に浸るセスは、鳴り止まない水音に操られるまま、“性器”を弄り続けた。  「ア"ひっ♡止まらない……っきもちぃ、おしり♡……もっとぉ……っ♡」  触手で犯されたセスの脳に、もう一つの音を吹き込んでやる。  『そんなにイイんだ……変態さん♡』  「ーーあアッ!ジル……っ♡ひぐ……っだめ、おれのかっこわるいとこ、みないで♡お"、お"♡かっこわるいイキかた、みる、なぁ"……〜〜っ♡♡」  濡れた体は大きく震え、膝が折れて落ちていく。  しゃがみ込んだ状態でも、セスは指を秘所に沈めたまま、続く絶頂を味わっていた。  「ーーセス、ちんぽでイけなくなっちゃったの……?♡」  ジルはついに声に出してセスを詰る。  魔術の籠った空気が、セスの鼓膜を震わせた。  熱っぽく囁かれるその音に、セスは自慰の末に見た自身の妄想なのだと錯覚する。  「ひァ……♡ジルぅ、かっこわるくて、ごめんなぁ♡ごめ、んぅ"〜〜っ♡ジル、ジルぅ♡♡」  「謝るのかイクのか、どっちかにしろよ変態♡」  甘い声で名前を呼ばれ、ジルの逸物は限界までいきり勃つ。  「セス……っ、俺もイきそ……♡セスのエロいとこもっと見せて♡」  「やだ、やだぁ♡みるな"ぁ、ひぐっ……おねが、いぃ……へあ"〜〜……ッ!!!!♡♡♡」    丸まっていたセスの背中が勢いよく反り返り、腰が前に突き出る。  萎えた陰茎からは尿が噴き出し、ビクビクと震える腰に合わせて緩やかな曲線を描き、地面に落ちる。  わずかに湯気が立ちのぼり、じんわりと土へと染み込んだ。  引き締められた尻肉には、指が根元まで三本埋まっており、引き伸ばされた後孔は赤く色づいている。  ジルはセスの痴態を目に焼き付けて、逸物を力強くしごき上げる。  いつかセスのケツにぶちこんでやると、歯を食いしばって精巣から濃厚な精液を絞り出した。  「……っからだ、お"かしくなっちゃったァ……♡♡」  悲しみにも悦びにも見える弱々しい笑みを浮かべて、セスはふらりと体を後ろへ倒す。  吐き出される息はまだ甘い。  木の根元に座り込んで甘美な余韻に浸るセスに、ジルは目が離せないでいた。  何年も恋焦がれていた彼が、自分をオカズに自慰をした。  暗い悦びがジルの胸を満たす。  しばらくするとセスはよろけながら立ち上がり、小屋の方向へと戻って行った。  明日、どんな顔をして会えばいい。  小さくなるセスの後ろ姿を茫然と見送る。  気がつけば、東の空は白んでいた。

ともだちにシェアしよう!