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第10話

僕は悔しくて部屋の鍵を掛けてから、そのまま座り込んだ。 「冬馬」 ドアの向こうから椿の声が聞こえた。 椿は部屋の前まで追ってきたんだ。 僕は興奮しすぎて気が付けなかった。 「冬馬はどうして俺には話をしてくれるのに、父さんや母さんには話さないの?」 「それはっ、……僕の話なんて聞いてくれないから!!」 「言ったこともないのに決めつけるなんて、俺は冬馬にはしてほしくない。東京に行きたくないなら自分自身の口から言うんだ」 「勝手なこと言わないでよっ!!僕のこと、……何も知らないくせにっ」 「知ってる。本当の冬馬は『東京に行きたくない』って伝えるのを諦めてるんだ」 椿は僕のことを見抜いてた。 だから……僕は辛かったし悔しかった。 「冬馬が父さんと母さんに本当の気持ちを言ってくれるなら、俺が今回どうしてイレギュラーになったのかを説明するよ」 椿の声はとても消え入りそうな声だった。 苦しそうな声だった。 だから僕はドアの鍵を開けて椿と向かい合った。 「今年はなんで『椿が僕のお兄ちゃん』になれなかったのには理由があるって言うの?」 「そうだよ」 椿は凄く真剣な顔をしていたから、重要なことだとやっと気が付いた。 「俺は、椿の木は、来年で枯れるからだ」

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