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第2章_謎の香り_第14話_能力を統べる男
◇
「お疲れ様です」
事務所のドアを開けると、先に戻っていた鉄平と翔平 に加えて、事務仕事をしていた田崎・相原・江里さんが迎えてくれた。俺たちの表情を見て、皆が必死に労わろうとしてくれている。
「大変だったな、ほらあっちに横になれる場所を用意させたから。報告だけしてくれたらいいから、そのままそこで休め」
田崎と咲人が俺たちの方を向き、特に弱っている蒼へと声をかける。俺とのボンドを超えてまで助けようとした人物が、目の前で亡くなっていくのはかなり堪えたようだ。蒼はぐったりと疲れ切っている。
俺は蒼の手をずっと握っているけれど、ガイディングが出来るわけじゃない。当たり前だが、回復は遅い。それがどうにも悲しいのだ。
そう思って俯いていると、その背中に田崎の手が触れる。そこから身体中へと温もりが広がり、少しだけ楽になることが出来た。
「ほら、お前まで落ち込むなよ。というか、お前は落ち込むなよ。今はガイドが弱ってるんだ。休ませてやるためにも、お前はしっかりしてろ。いいな?」
そう言って、俺の背中を派手な音を立てて叩く。センチネルのために加減されたものではあるけれど、その刺激のおかげでしっかりと気を引き締めることができた。
「……あー、助かった。悪い、田崎。そうだな、今は俺がしっかりしないと」
そう答えると、田崎がニヤリと口の端を持ち上げる。それでいいと言われたようで、俺も少し心がほぐれた。
「そうだぞ。いくら優秀なセンチネルでも失敗はするんだ。そして、それはガイドも同じだ。しかもお前たちのミスは影響が大きい。周いへの影響をちゃんと考えろ。反省はしても落ち込むな。反省は後でも出来るからな」
田崎の言う通りだと思った。
ドライでデリカシーの無い田崎ではあるが、なぜかこういう時は一番欲しい言葉をくれる。そう、今は落ち込んでいる場合じゃない。それよりも、立て込んでいる事件を少しでも早く解決しなければならないのだ。
「分かってる。お前がいるのに、初心を忘れるわけにはいかないからな。とにかく、やれることをやろう」
「おう。じゃあ、まずは座れ。全員分の飲み物を咲人が準備してくれてるから、飲みながら話そうぜ」
田崎はそう言うと、いつものデスクではなくソファにローテーブルという組み合わせの空間を指さした。そこは、ケアルームの一室だ。軽微なケアをするために、リラックスして過ごせるような空間が作ってある。そのドアの奥のほうから、香ばしい香りが漂っていた。
「翠、蒼。ゴロゴロしようぜ。澪斗 兄さんに頼んで、うちのゲストルームにあるクッションを持って来てもらったんだ。お前らあれ好きだっただろ?」
そう言いながら、咲人が子供のような顔をして俺たちの手を引く。まるで小学生の頃に戻ったような無邪気な誘いを受け、俺も蒼も、ふっと笑みを溢した。
「ほら、どーん!」
本当に小学生のような声をあげて、咲人が俺と蒼をソファー目掛けて突き飛ばす。急なことに、俺は本当に驚いた。
「うわっ、危ねえ! 何するんだよ、咲人。今完全に能力オフってるんだから、急に突き飛ばすな!」
「えー? だって、そうでもしねえとお前ら絶対ゴロゴロしないだろ? 今は回復が最優先事項だ。絶対ゴロゴロしてろ! いいな?」
咲人は、なぜかいつものように不遜な表情で俺たちを見下ろし、いいことをしてやったという謎の自信に満ちた表情を浮かべていた。
何がしたいのかはよく分からない。でも、咲人がこういう意味のわからない行動を取るのはあまりにも日常の光景だ。そのおかげか、俺も蒼も自分のアイデンティティが覆されそうなほどに傷ついていた心が、その傷の部分にじわりと温もりが広がっていくのを感じた。まるで、咲人の無邪気さが俺たちの傷を修復していくようだ。
「はいはい。よく分かんねえけど、永心様の言う通りにしますよ」
そう言って俺たちがローソファーに横になると、それぞれの取りやすい位置に、飲みなれたコーヒーの入ったタンブラーを置いてくれる。
「いつもの様に、蒼はブラックでお前はラテだ。はい、どうぞ」
「ありがとう」
俺が咲人に礼をすると、
「どういたしまして!」
と嬉しそうに笑いながら、他のスタッフを手招きする。
「よし、みんなおいで。二人は絶対に起こすなよ! 疲れてるだろうから、ペアはなるべくくっついておいてくれ。少しでも回復するんだ」
咲人の声に、鉄平と翔平を先頭にスタッフがわらわらと入ってくる。いつも事務所の仕事を任せている、優秀なミュートスタッフの江里さんもいた。
「すみません、私までいいんでしょうか?」
「いいに決まってるだろう? この会社で一番働いてるミュートは間違いなく君だ。たまには執行部の人間とお茶を飲むくらいの交流があってもいいよ」
田崎が江里さんにそう言って奥の方へと促す。その後ろを、相原がついていった。
「あ、そうだ。相原、お前って野本兄弟と同じ敷地で育ってるんだよな。祈里と一緒に暮らしてるのって、そうしろって言われたからなんだろう? でも、お前はなんで実家を追い出されたんだ? 別に野本に言われたからって、そんなの嫌だって言えば良かったんじゃねえの?」
咲人は江里さんの後をついて回る相原を見ながらそう言うと、唸りながら首を傾げた。田舎の大農家の当主の幼馴染であるという自身の親から、突然出て行けと言われた人物に対しての気遣いは無いらしい。
咲人自身も似たような状況で家を出てはいるものの、それは自分から進んでしたことだ。追い出された人間とは、あまりに立場が違う。相変わらずデリカシーに欠けるところはそのままだなと思うと、相原に対して申し訳ない思いがした。
「お前なあ、もう少し聞き方を考えろよ」
呆れる俺に、相原は慌てて被りをふった。心配しないでくださいと言いながら、困ったような笑顔を見せている。
「翠さん、大丈夫です。お気遣いありがとうございます。まあ、そう言われても仕方がないと思いますので……」
そう言うと、カップを両手でぎゅっと握りしめた。じっと見つめるその先には、一体何が見えているのだろう。何か込み上げるものを堪えているように、ゆらゆらと瞳が揺れている。辛い思いを堪えているのは明らかなのに、それをお首にも出さないようにしていた。
「俺は野本兄弟とは幼馴染で、祈里くんとも漱ともずっと仲良くしてきました。野本のおじさんが祈里くんを外に出すと言い始めた時、俺たちは反対したんです。いずれは祈里くんが家を継ぐのに、どうして追い出すようなことをするんだと言いました。特にうちの父さんが強く反対してました。祈里くんが反抗的だったとしても、ミュートの漱を残してガイドの祈里くんを追い出す意味が分からないと言って。ミュートなんて、なんの役にも立たないじゃないかって言ってるのを、はっきりと聞きました」
「……なんだかそれだと、欲しいのは能力だけって言ってるみたいだね。ちょっと悲しいな」
相原の話に、蒼が眉根を寄せる。すると、驚いたことに、相原はそれを肯定した。
「はい、その通りなんですよ。あの周辺に住む人間は、人なんてどうでもいいんです。必要なのは、直系の後継者と受け継ぐための土地、それを維持できるための能力だけなんです。それ以外はどうでもいいんです。だから、ミュートの漱はずっと酷い扱いを受けてました。正直、僕は彼は家出したんじゃないかと思ってるくらいです。あの家にずっといたいと思うはずがありませんから……」
相原はそういうと、持っている紙製のタンブラーをさらにグッと力を入れて握りしめた。めこっと音を立てて、カップが歪に凹む。それを眺めてはいるものの、その目には何も写っておらず、過去の記憶を手繰り寄せようとして視線を漂わせていた。
「祈里くんがいる時は、漱も同じような人間らしい扱いを受けていました。でも、学校の行事等で彼がいなくなると、漱はお手伝いさんのような生活をさせられるんです。その上、家業の手伝いも人一倍過酷でした。祈里にはさせないのに、本家の持つ田畑の手入れは、漱がほぼ一人でさせられていました。祈里や僕が手伝うと、翌日の仕事量が増やされて、食事を抜かれるし、眠ることも許されなくなってしまうんです。そうなると辛いので手伝わないでくれと言われてしまって、そのうち彼には何もしてあげられなくなりました」
祈里は相原の言葉を聞きながら、ずっと俯いている。漱は隠そうとしていたようだが、おそらく祈里はそのことを知っていたのだろう。彼は俺に『野本では、ミュートは酷い扱いを受ける』とはっきり言っていた。それは、彼がその事を知っていたから言えた事に違いない。
「でもお前、それなら弟のことは見つけないほうがいいんじゃないか? 連れ帰っても、また酷い扱いを受けるだけなんだろう?」
田崎がそう尋ねると、相原は、首が折れるんじゃないかと言うくらいに激しく頷いて見せた。
「ええ、そうなんです。だから、俺は正直驚いてます。どうして英子おばさまは漱を探そうとしてるんだろうって思いました。だって、おばさまだって漱がどんな扱いを受けていたかは知ってるんですよ。だったら、あの家から逃げたと考えるのが普通だと思うんです。それに、もう二十歳です。苦労はするだろうけれど、なんとか生きて行ける年齢ですよ。それなら、放っておいてあげた方がいいと思うんです。それなのに、慎弥さんを呼んでまで漱を探そうとするなんて……」
そう言って、相原は項垂れた。
確かに、それはおかしな話だ。英子さんの性格を考えると、家から出してあげたいのは祈里ではなく漱だったんじゃないだろうか。それなのに、逃げた漱を連れ戻そうとしているように感じる。何か彼女なりの考えがあってのことなのだろうか。
「で、お前は漱を探すことについてはどう思ってる? 大切な幼馴染だから、探すのは探したほうがいいか?」
俺は相原にそう尋ねた。
心配で居場所を知りたいだけなら、そうしてもいいだろう。野本に戻すことに不安があるのなら、英子さんに報告しないという手もある。
今回の彼女の言動には、不審な点がいくつかある。あまり全てを彼女に伝えない方がいいのかもしれない。悲しいことに、俺でさえそう思い始めていた。
そう思っていると、相原が俺の顔をじっと見つめたまま、何かを躊躇うような仕草を見せた。何かを話そうかどうかと迷っているようだ。頭の周りに、薄いグレーのもやが立ち込めている。
「何か言いたいことがあるのか?」
俺がそう問いかけると、その目がはっと見開かれた。
おそらく、相原にとってはこれは初めての経験なのだろう。俺には、何かを隠しても、感情の揺れは視覚刺激となって見えてしまう。意志を固めるかどうかを迷っているにしても、匂いで分かってしまう。だから、俺に隠し事をしようとしても無駄なのだ。
それこそ、昔は俺のこの能力を野本が怖がっていて、俺とは話そうともしなかった。何も知らずに俺の能力の強さを目の当たりにすると、そうやって怯まれてしまうのが常だ。
相原の周りにも、そこまで能力の強いセンチネルはいなかったと記録されている。だから今、迷いを読み解いてしまいそうな俺という存在に、恐れをなしているのかもしれない。
「はい、あの……。あの、実は俺、漱のことがずっと好きでした。でも、漱は家を継ぐので、思春期以降は彼に近づくことも許されなくなったんです。ちょうどそのすぐ後でした。祈里と一緒にここを出ていけと言われたのは……」
「え? でも、お前は祈里が好きだったんだろう? 俺と祈里が出会った日に、確かそう言ってたはずだ。断られてたみたいだけれど、お前から祈里にボンドのお願いまでしてたんだろう?」
相原の言葉に、肇が動揺している。どうやら、相原が漱を好きだったという事を初めて知ったようだ。驚きと怒りが入り混じっているのだろうか、ほんの少しだけだが感情の揺れが虹色のモヤとなって見えている。
「えっと……ごめん、実は祈里くんに漱を重ねて見てたんだ。どうして好き合っているのに引き離されないといけないんだって思って……。ほとんど同じ姿だし、漱とは絶対に一緒になれないのならと思って、身代わりにしてたというか……」
「好き合っていた? 漱もお前を好きだったのか?」
咲人が驚いて話に割って入る。相原の話の腰を思い切りへし折るような形だ。普通ならやめておけと言うのだが、今は俺も彼を止めようとは思わない。
——漱が相原を好いていたのなら、どうして相原のところへ来ないんだ。
それが引っかかっていた。
「……はい」
そう言うと、罰が悪そうにして祈りを見た。
「祈里くん、ごめんね。この事は祈里くんにも言ってなかったよね。俺、漱と中学の三年間ずっと付き合ってたんだ。追い出された頃は、ちょうど父さんにその話をした時期だった。父さんは喜んでくれてたんだ。それなのに……」
その時、俺の頭の中にある言葉が浮かんだ。肇と祈里というレアタイプが見つかったという記事の中にあった、参照文献のサイトへ飛ぶためのリンク。その中には、特殊能力について記されている文献へのリンクもあり、数百年に一人の確率で現れるという、特殊な能力を持った人物の話が載っていた。
「相原、お前、漱を抱いたか?」
「……えっ?」
突然の俺の不躾な質問に、相原だけでなく皆が驚いている。普段なら、俺からそんな話を振る事は無い。ただ、もし漱が俺の思う通りの能力を持っていて彼を抱いたのであれば、確認しなくてはならないことがあるのだ。
「どうなんだ?」
詰め寄る俺に、相原は目を丸くする。そして、言いにくそうに口を開いた。
「……はい。一度だけですけれど」
その答えに、また記憶の扉が開いていく。その文章には、自分には何も変化が起きないが、人にある二つの変化を起こすというミュートの存在を記した箇所があった。
「もう一つ聞きたい。漱は抱くと甘い香りがするんじゃないか? あの、野本のスーツについていたような、ミチがいう都会の女の香りだ。それともう一つ……」
これが、重要な確認事項だ。
もしこれが当たっていれば、いくつかの事件がつながる可能性が出てくる。
「漱を抱いた後、お前の能力は消えなかったか?」
「えっ、それ、どういう……」
驚いて立ちあがろうとする蒼を、田崎が制する。気持ちは分かる。俺だって他の人から聞かされたらそうするだろう。俺が今から口にすることは、今を生きている者たちにとってはファンタジーのような話になるからだ。
「お前が漱を抱いた後に、センチネルの能力を短期間でも失っていたとしたら……。漱が持つ能力が特定出来る。それも、確定だ。推測じゃない。どうだ、相原。お前は漱を抱いて、センチネルの能力を失った日がなかったか?」
——その能力を持つ者を抱けばガイドとなり、その能力を持つ者に抱かれれば、センチネルとなる。
「……はい。一日だけ、全ての五感が鈍くなった日がありました。俺は風邪でも引いたのかなと思ったんですけれど、それを父に話した日に、急に出て行けと言われたんです。……それがどうかしたんですか? 漱がいなくなったことと、何か関係があるんですか?」
——しかし、与えられた力は一時的なものであり、一日が終わればそれは消失する。
「ああ、関係ある。おそらく、お前のセンチネルとしての能力が消失したことで、野本崇が漱の能力に気がついたんだろう。数千年続く歴史の中で、数名しかいない存在だ。その特徴を持った人物が息子にいたなら……。あの男は、商売に利用するだろう。おそらく、漱は父親に監禁されている。目的は、身売りだ。レアタイプが載っていた記事の中に、漱のような能力を持つ者に身売りをさせて金を稼いで大きくなった家があったという記載があったんだ。野本家はおそらくそれを真似ているんだろう」
——ただし、また力を欲するならば、何度でもそれを繰り返せばいい。それだけで、生来の能力者と同じように暮らすことが出来る。
「漱が愛する相手と契約を結ばない限りは、な」
——これを、モジュラーと呼ぶ。
「抱けばガイドになり、抱かれればセンチネルになる。全ての能力を一つの体に詰め込んだ存在、それをモジュラーと呼ぶんだ。漱ぐはモジュラーなんだろう。モジュレーションの香りは、クラリセージに似ているとされている。これで謎が解けた。モジュレーションはあの場所で行われていたんだろう。だから、あの場所はクラリセージの香りがするんだ。そして、それを誤魔化すためにあの異常な量のセージを植えてるんだろう。俺のように、モジュラーの存在を知っている外野から、商売を守るために」
「それじゃあ、漱は敷地にいるのに義母は探しているというんですか?」
驚く野本が俺に問いかける。気持ちは分かる。俺も最初はそう思ったからだ。
「いや、多分違う。今はあの場所にはいないだろう。いくらなんでも、あの敷地内にいれば俺には分かる。匂いを知らなくて判別出来なくても、生体反応を見る事は出来るからな。でも、あの場所には誰もいなかった。そして、野本崇は外出して行っただろう? あいつが向かう先に漱がいる可能性が高い。それと……」
俺は蒼白なままの蒼の頬を手の甲で擦った。彼を安心させてやれるかもしれない事実を見つけた事を、誇りに思う。やはり、研鑽を積む事は身を立てるんだ。多くのことを学んで来たからこそ、この謎が解けるのキーを見つけられた。
「不審死のミュートが、もし漱に抱かれていたとしたら……。突如センチネルになれば、その扱いに苦労してすぐにゾーンアウトして死ぬことは有り得る。つまり、ここ最近のミュートの不審死には、漱が……そのモジュレーションが関わっている可能性が高いと考えられるんだ。一般的な能力者としては扱えないから、これまでの常識は通用しない。それなら、蒼がさっきの出来事を気にする必要は無いってことだよ。やっぱり、お前に非はないんだ」
俺がそう告げると、蒼は目に涙を浮かべた。そして、俺を見つめると「ありがとう」と呟く。対照的に、祈里と相原が表情を引き締めた。漱が進んで誰かを傷つけるとは思えないのだろう。それなら、やはり父に強引に巻き込まれている可能性が高い。もしそうであるのなら、彼らには助けるという選択肢しか存在しないだろう。
「その能力を持っていたとしても、漱なら誰かを助けようとしてるはずです。それが結果的に誰かの命を奪っているなら、多分彼はそれを知らないはずです。なんとかしてやめさせないと……」
相原の言葉に、その場にいる全員が頷く。それは会社の理念に一致する。
俺たちは、弱者として利用される能力者を救うのが仕事だ。そのために、常に全力で立ち向かう。
俺は、能力者と有能なミュートを前に立ち上がると、彼らにむかって高らかに宣言した。
「いいか、お前ら。ミュートの野本漱ではなく、モジュラーの野本漱を探すぞ。あいつを救って、相原の元へ返す。権力を持って能力者を利用する人物を許すな。弱者を利用して甘い蜜を啜る悪人は、必ず法の下で裁きを受けさせるんだ」
「はい!」
VDSの事務所に、男たちの叫び声が響く。俺たちは、迷える能力者を救うことを生業としている。それが、数百年に一人という特殊な能力者であっても変わらない。やることは、一つだ。
「待ってろよ、漱」
指標を見失っている能力者を救う。それが、俺たちベクトル・デザイン・サポーターズの仕事だ。
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