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第3話 ホントウの自分

 若の身体を心配するのは、マスターとして当然のことで……。  その為に、僕が行為を求めても、何らおかしいことはない。  そう……若の“エネルギー補充”  それは、“エッチしたい”  その言葉の、言い訳に過ぎない。  第3話  ホントウの自分 「んー………」  ……サラサラ。 「ンー………」  スラスラ…………。 「駄目だぁ、解んなーい」  ため息をつく僕を、若はにっこり笑って見る。 「休憩なさいますか、結惟様」 「うん……と言うより、今夜はもう無理。同じ考えしか浮かばないから」  書き出した文章を何度も書き直して、薄汚れた用紙。僕は諦めてシャープペンを置く。 「お疲れさまで御座いました」  若がホットミルクを作ってくれる。  宿題が終わるといつもそう。気持ちが落ち着くように、よく眠れるようにって、若は言う。 「僕この問題苦手だな……」 「誰にでも、得意不得意は御座いますよ」 「ん~……若は頭いいから羨ましいよ」  何気なく言うと、若は少し困った笑みを浮かべた。 「私は人工頭脳ですから……」 「あっ、そうか……ごめん」  そうだった。若はアンドロイドだったんだ。見た目人間と全然変わらないから忘れてた。 「……ん?」  僕は思い出したようにカレンダーを見る。 「どうなさいました、結惟様?」 「……若、そろそろエネルギー補充しなくて大丈夫?」  確かこの前したのが3日前だから、そろそろ……。 「……そうですね、明日は学校も休みですし、夜までは大丈夫だと思いますが……」  若は考えながら言う。 「でも、何が起きるかわからないでしょ? ギリギリでいいの?」  僕は少し身を乗り出して聞く。 「そうですねぇ……」 「途中で止まったら大変だよ? だから補充しとこうよ、若」  若は暫く考えて、ふと僕を見る。 「……それは、結惟様が誘って下さっていると受け止めてよろしいですか?」 「……へっ?」  誘ってる……?  僕が?  …………誘ってる!? 「えっ、や、違っ、そうじゃなくて……」  僕は顔を赤くして慌てた。若は慌てる僕を見てクスクス笑う。 「嬉しゅう御座いますよ、結惟様」  目を細めて笑う、僕のだいすきな若の笑顔……。心拍数が異様に上昇してる。 「結惟様のお誘いを断る訳にはいきませんね」  若は僕の側に来ると、僕をヒョイと抱き上げる。お姫様抱っこだ。  僕は若がするまま、優しくベッドに降ろされた。  この前エッチした時は、撮影があったから緊張した。けど、今日は大丈夫。  生まれたままの姿で向きあう。若の肌は白くて、引き締まった身体はとても綺麗だ。  思わず見とれていると、温かな唇が重なる。  チュッと触れて、すぐ離れる。  もの足りなさそうに若を見ると、今度は深く重なってきた。 「ふっ……ん……」 「結惟様はキスをするのがお好きですね」  腰にくるような甘い声……。  若とするなら、何だって好きだよ……? だって、気持ちいいし……。  若の体温に触れてると、何となく落ち着く……。若は……どうなのかな……? 「……っあ――!」  刺激を与えられたペニスは、さっそく若の口内に欲を吐く。  そっと目を開くと、濡れた口元を手の甲で拭う若の姿。色っぽくて、男らしくて……ドキッとした。  でも、僕の視線に気づいて、若はすぐ笑顔を向ける。 「前回より、濃くて美味しいですよ?」 「……えっ?」 「不安そうな顔をなされてましたので、味が気になるのかと……」  そう言われて、顔から火が出そうなほど恥ずかしい。 「ちちち、違っ! ……味がどうとかじゃなくて……」  ていうか、普通気にしないよそんなの!  若ってストレートにエッチなこと言ってくるから驚いちゃう……。見た目はそんなこと、言いそうにないくらい素敵なのになぁ……。  気が抜けている僕を、若はベッドに倒してくる。 「……ご不満ですか?」 「えっ?」 「私ばかりがいい思いをしてしまって」 「へっ?」  私ばかりが……って、いい思いしてるのは僕なんじゃないの? 「ご不満の残らぬよう、しっかり奉仕させていただきます」  言うと若は僕のお尻を撫でて、穴に指を埋めた。いきなりで、息の逃がし方を忘れる。 「……ふっ、ん……若、痛い……」 「すぐによくなりますよ」  若の言う通り、少しするとクチュクチュとエッチな音が聞こえ出す。  ローションを使っているように、僕の中はぐっしょりと濡れてる……。 「もう大丈夫でしょう?」  確認するように若が聞く。僕は小さな喘ぎ声で返事をした。 「あっ、あんっ……やぁ……」 「嫌ですか?なら止めましょうか?」 「やっ……めちゃやだぁ」 「……クスクス……結惟様は素直でいらっしゃいますね」  チュッと唇が重なる。そんな事すら、身体中に響く。 「あっ、あっ、だめっ……イクぅ………!」  イく瞬間、僕のペニスは若の口内におさまる。温かい中にドクドクと欲が流れ出る。チゥと最後まで吸われると、狂ってしまいそうだった。  ぼーっとしていたのも束の間、足が高く持ち上がる。 「……っえ…?」  すぐにズンとした重み。若のペニスが入ってきた。 「……っちょ、待って若っ!」 「待ちません。興奮している間に次の快楽を与えるのがいいんですよ?」  平然と言う。 「だって……ふ、あぁんっ……」  ダメだよ……。だって、さっきイッたばかりなんだよ?  こんなに連続でされたら、本当に壊れちゃう……! 「あっ、若っ、若ぁ」 「結惟様……いかがですか?」 「あんっ……いいよぉ、気持ちいい――!」 「本当にお可愛いらしい……。あぁ、イッてしまわれたのですね」  荒い息を繰り返す僕の唇に触れ、繋がったまま、次の体勢へと変える。  後ろから抱かれ、下から突き上げられる。  そのたび、僕のペニスからはピュッと精液が飛び出す。  こんな恥ずかしい姿……本当に若にしか見せられない……。  ううん――。若しか見れない……。 「ああっ! 気持ちいいっ! 若、もっと! 若っ!」  狂ったように泣き叫ぶ。もう、どこをどうされても気持ちよさしか感じない。 「私は何もしておりませんよ? 結惟様がご自分でされているのです」  ……そう、若は何もしていない。僕が狂って、一人腰を振っているだけ……。  自分で、自分の好きな箇所に、若のペニスを擦りつけてる。まるで自慰しているかのように、淫らで変態な僕の姿……。  若が与えてくれたのは“切っ掛け”とペニスという“玩具”。  ……これが僕の本性……? 「若ぁっ、イクっ、イクよぉっ!……っあ――……」  何度目かの射精を終えて、やっと僕は意識を手放した。 「……だるい……」  今日の僕はこれしか言ってない。  昨日のエッチのせいで、本当節々が痛いんだ。まるで年寄りみたい……。 「昨夜の結惟様は、今まで以上に淫らでいらっしゃいましたから」  若はにっこり笑ってストレートにモノを言う。  うぅ……。そんなの自分が一番よく分かってるよっ……。 「でも、あんな姿見せるの二人きりの時だけだからね!?」 「おや、惟織様がご覧になられたら、さぞお喜びになることですのに……」 「絶対にヤ・ダっ!」  本当に……、本当にあんな姿、若にしか見せないんだからね?  って言うか、若にしか、あそこまで狂わせること出来ないと思うから……。 「ところで結惟様、実はお願いが……」  改まって若が切り出す。 「ん~?」 「今朝、結惟様のお休みになられている間に――(中略)――というわけで、大量にエネルギーを使ってしまいまして……」  ……え? 「つまりその……エネルギー、もう少なくなっちゃったの?」 「はい。もし結惟様がお辛くなければ、今夜また頂けますか?」  お辛く……ないわけないけど……。 「ん、いいよ」  若の為だし。しょうがないなら……ね? 「でも、今夜は昨日ほど変にしないで!」  一応、念の為に……。

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